燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
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LGBT礼賛映画には些か食傷気味です。
全く予備知識を持たずにこの映画を鑑賞しました。ロビーにあった、フライヤーにグザヴィエ・ドランの賛辞が載っていたのが気になり、ちょっと嫌な気になりました。私にとってはLGBT映画に対してはもう、あんまり、拘るのはいい加減にしろ、と怒りたくなる気分で、一杯です。なぜ世の中の人々一人ひとりの性的指向を全て詳らかにしなくてはいけないのでしょうか。ゲイでもレズでもいいのですが、そんなことは、どこかもっと、離れたところで騒いでくれ、と声を大にして言いたいです。この映画のようなレズビアン万歳の映画にはもう、うんざりです。普通の肖像画家の映画を撮ることはできなかったのでしょうか。はっきり言います。なんだか、今の世の中、どこか狂っています。
赤と緑のドレスの戯れ
ある肖像画家と絵のモデルとの出会いから別れまでを静謐な創り方で描いた人間ドラマ。観客は絵の創作過程のみならず、その間二人が共有した秘密を見ることとなる。 映画の描写は、ロウソクの仄かな光や自然光による撮影、火の爆ぜる音や衣擦れの音を拾う音声、荒涼とした島の風景、対象物を画面の中心で捉えるフォトジェニックな画作り、無駄な会話を配した進行が重なり作品の格式を高めている。そして筋立ての面白さが群を抜く。 主人公である画家の人物造形は、冒頭すぐの海と次の島のシ−ンで観客に提示される。性格や顔の造りが男性的な画家。絵の創作過程では、ある無理難題が画家を縛る。それが画家とモデルが秘密を共有してから縛りから解き放される。 その他の印象的のことは、夜に女性たちが集まり低く地鳴りのように唸りながら手拍子を打つ場面、何度も出てくるキャンバスでのデッサン、堕胎の実践と傍らの赤ん坊、画家とモデルが着ていた赤と緑のドレスの重厚さ、そして画家の凛々しいおでこと眉毛。
モデルと芸術家の関係には
普遍的なものがあるのだろうな、って思った。
異性間でも同性間でも。
芸術家は、モデルのその輪郭を、その衣服を、その肌を自分の手で、目でなぞり、うつしとっていく。
カンバスに、紙に、石に、木に、金属に、フィルムに。
モデルも、見えない手で自分の体をなぞられているかのように感じるだろう。
すごいスリリングだと思う。
踏み出すか否かは、紙一重だろう
いや
踏み出さずとも
見えない手は結ばれているんだ
モチーフになっているギリシャ神話のオルフェウス
マリアンヌは振り返り
エロイーズは振り返らなかった
しかし、愛していることに違いはない
よかった
女性同士の恋愛は、オレには現実感がなくて絵空事のようにも感じる。もし絵描きが男でそういう関係になったら脂っこくて見てられないかもしれない。絵を隠しながら制作していくのはハラハラした。最初の絵もいきなりボツにするんじゃなくて、一回はお母さんに見せればいいのにと思う。メイドが妊娠したのに中絶していて、悲しい気持ちになる。
久しぶりにクソ映画に巡り合いました。
18世紀のフランスが舞台。 とある女流画家が、ブルターニュの島に住む母親から、娘の結婚相手に渡す肖像画を描いて欲しいと依頼されます。気難しい娘に、最初は画家だと明かさず1枚目の肖像画を仕上げますが、娘には気にいらず、画家もそれを受け入れ、母親に描き直しを約束します。しかし、母親の出かけている5日間、肖像画の作成と並行し、娘とただならぬ関係になってしまい…。 というあらすじですが、これ自体、何のひねりもないストーリーに加え、つまらないエピソードの数々。何より登場人物に全く魅力がない。演技もヘタだし、美人でもない。加えて、横井和子さんの翻訳が「グーグル先生か!!」っていうくらい棒訳。 途中挿入される音楽も、民族性など全然感じられず、映画の雰囲気をぶち壊していました。 題名の「燃える女の肖像」なんて、いかにも思わせぶりなタイトルですが、最初にそのタイトルを現すへたくそな絵が出たっきりで、それ自身は映画全体を貫くテーマとも何とも感じられません。そのエピソードにあたる、娘のドレスに、焚火の火がつくシーンの演技も棒。暗闇に浮かび上がるドレス姿の娘も、なんら感銘を与えない。肝心の女流画家の絵も大したことがない。(むしろ、途中で出てきた、娘を描いた絵のほうが、よっぽど上手でした。) 「映画史を塗り替える傑作!」とか「世界の映画賞席巻!!」とか、前評判ばかり高い作品でしたが、こんなクソ映画に受賞させるなんて、評論家の目が腐っているとしか思えません。 これだけはっきりと、わかりやすいクソ映画なのに、評価が高いなんて、不思議です。
切なく美しい恋の物語
望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く画家のラブストーリー。女性二人の燃え上がる恋が切なく美しい物語。絵画を見ているかのような素晴らしい映像が印象的な作品ですが個人的には絶賛するほどの傑作とは思えない。 2021-8
ラストシーンに鳥肌
すごく評判が良かったので鑑賞。途中までは「たしかに綺麗だけど、個人的にはそんなにハマらないかな…」という感じ。でもラストシーンかっこよかったなあ…!
言葉もなく、視線を交わすこともなく、でも溢れ出てくる感情が伝わってきて。彼女の人生の中に、心の片隅に、常に画家の存在があったことがわかる。切なくて美しいラストだった。
絵画のような
スローな展開の序盤は正直昼下がりに観たこともあり少し眠気を催してしまったが、その後の展開はなかなかに見応えがあった。 18世紀のフランスが舞台で現代日本に生きる我々と感覚が異なるとはいえ、人を想う心というのは変わらないもの。 安易な終わり方ではなく考えさせられる深いラストシーンになっていて心地よく映画館を後にすることが出来た。
なんという美しい映画…「見ること」⇒「愛すること」と「”映画“を観る幸せ」が等しいことを久々に教えてくれて感動…
①ほぼ冒頭にチラッとだけ見える“絵”が凄く良さげ…生徒が問う『先生、あれは何という絵ですか?』『「燃ゆる女の肖像」というの…』あの絵を映画の中でもっとじっくり見れるのか…見たい…ここで映画に鷲掴みにされる…掴みはバッチリ。②マリアンヌが最初に完成した肖像画をワヤにするくだりが秀逸。本来であれば依頼主の母親に見せて「良くできてるわ」「どうも」「はい、お代金」「さようなら」で終わるところを、「お願いがあります。真実を告げて彼女に最初に見てもらいたいんです」と言ったマリアンヌの真意はどこにあったのか?もうこの時点でアリアンヌはエロイーズに惹かれていたと思うのだが…そして、真実を告げられ肖像画を見せられたエロイーズの台詞が意味深。「この絵は私ではないわ」そのつぎの台詞が良い…「あなたでもないわ」…これはエロイーズからマリアンヌへの如何なるメッセージか…アリアンヌは『心外です』と涙ぐむ。画家としてのプライドを傷つけられたせいか、それとも『貴女は私の中身をちゃんと見てくれていない』というエロイーズの愛のメッセージと気付いたからか…或いは期待していた通りのことを言ってくれたからか…ここまでのお互いの気持ちの探りあいから目が離せない。③肖像画を描かれるのをあんなに嫌っていたエロイーズが自分からモデルを買ってでる。マリアンヌと離れたくない、という宣言である。ここから二人の愛は第二幕を迎える。④年上(と思いますが)であり職業婦人でもあり男性との恋愛経験もあれば堕胎の経験もあるマリアンヌだが、なぜかこの恋愛においては新たな段階に進むのをリードするのはエロイーズの方だ。マリアンヌがエロイーズの表情の癖を列挙し(愛の告白にもなっている)エロイーズに『良く見ているのね』と問われ『観察者ですものと』答えたマリアンヌに対して放つエロイーズの一言『貴女は私を見ている。では私は(誰を見ていると思う)?』。この一言で「見られる者」は同時に「見ている者」となるという当たり前と言われればそれまでだが、映画を観ているものとしてはコペルニクス的な発想の転換。二人の関係は拮抗する。⑤母親が帰ってくるまでを二人きりにせずに(堕胎を控える?)ソフィーをクッションに入れる脚本が上手い。二人だけなら、愛し合いながらも、それ以外の感情もぶつけ合って結構キツイものになっだろう。ソフィーが貴婦人の様に刺繍をし、エロイーズが召し使いに扮する三人のシーンは微笑ましい。そしてここで新しいモチーフ=オルフェが出てくる。我が国のイナザキノミコト・イザナミノミコトほどエグくはないが、せっかく黄泉の国から戻れるはずが男が戒めを破ったため永遠に離ればなれになるところは同じ。普通男の方が責められる解釈が多いこのお話、ここでもエロイーズが思いもせぬことを言う、『女の方から(振り返るように)声をかけたのかも…』。この台詞は二人の別れのシーンを印象的なものとする…エロイーズは別れのシーンを想定してあのようなことを言ったのだろうか…⑥冒頭の絵は結局映画の中では二度と出てこない。だがマリアンヌがあの絵の元としたシーンが鮮烈。女たちだけの祭りの中、焚き火の向こうに立つエロイーズが歩みだしたとき、ドレスの裾に火が…この時を界に二人の情念に火が着く象徴的なシーン…⑦女性版「Call Me By Your Name」と言えないことはない。ラスト、暖炉の炎を見つめながら結ばれない恋に涙するエリオのclose up、結ばれなかった恋に涙するエロイーズの横顔のclose shot。よく似ている。ただ、エリオの場合、オリヴァーは電話の向こう、別の大陸にいる(同じ体験をしたのでエリオの気持ちはよくわかるのだ)のに比べ、エロイーズは顔を横に向ければマリアンヌの顔が見れる、視線も合わせられるかも知れないところにいる。それでいながら涙を流しまた微笑みながらも一度もマリアンヌを見なかった姿に愛の強さを感じた。私には出来そうもない…⑧初めはブー垂れ娘だったのが恋を知ってみるみる魅力的な女性になったエロイーズの姿も特筆もの。⑨この映画の全体に配されているシンボリズム・サイン・モットーについてはいくらでも語れそう。ただ、美しい映像や愛の物語だけではないこの映画のスピリットを、♯Me too movement が根付かない日本でどれだけ理解されるだろうか…
全ての要素がある時点に凝集する語り口がみごと。
『僕の名前はズッキーニ』(2016)の脚本を担当するなど、脚本家と映画監督として活躍している女性作家、セリーヌ・シアマの最新作。 作中で言及される詩とその解釈、見つめる側と見つめられる側の関係性、当時の女性の立場などなど、作中でさりげなく提示された様々な要素がある時点でぎゅっと繋がっていくという物語の大きなうねり、それを映像でしか表現し得ない方法で提示したシアマ監督の演出は非常に素晴らしいです。シアマ監督と主演のアデル・エネルはかつてパートナーだったということで、そうした関係性が物語を豊かにしているのでしょう。 確かに物語としてはフランスの歴史ものであることは確かですが(さらに場所の設定や衣裳などに、イギリスの要素も多少取り入れているとのこと)、本作のテーマは非常に現代的な要素を多く含んでいるため、ジャンル映画として二の足を踏む人がいるとしたら、とてももったいない作品です。当時の衣裳に詳しい人であれば、当時は一般的ではなかったポケット付き衣裳をあえて採用するといった、映画ならではの現代的な味付けについても楽しめるのでは、と思います。 なお、シアマ監督は日本でも様々な媒体のインタビューに応じていて、それらはどれも非常に読み応えがあるのですが(「女性作家」と自ら名乗ることへの強い意志についての語りが、とりわけ印象に残りました)、結構結末に触れちゃっているので、作品を新鮮に楽しみたい方は鑑賞後に読みましょう!
観る人を選ぶ映画
久々に出会ってしまった、私には共感も感動もできない映画。
私に理解できたのは、
エロイーズの肖像画を描くために雇われた画家のマリアンヌと、愛し合うことを知らずに修道院で生きてきたのに突然望まない結婚をさせられることになったエロイーズが、肖像画が完成するまでの間と分かっていながらもお互いを求めあう。
別れた後も忘れられずにことあるごとに求めてしまうマリアンヌに対し、一見、過去は振り返らないのかと思わせておいて2人にしか分からない28ページを匂わせ、やはり過去を忘れられない(マリアンヌ以上に過去に囚われている)エロイーズ。
といったところ。
観る人(普段から美術や芸術に慣れ親しんだ方)が観たら、絵画のように美しい場面の連続で感動するのかもしれないが、そうではない私には少し退屈に思えた。
逆に、幼い子どもと赤ちゃんがすぐそばで遊んでいるところで堕胎処理をしたり、空を飛ぶ薬を脇毛に塗ったり(間違ってたらすみません。。。)と、逆に興ざめするシーンもあり。。。
ただ、(エンディングにも流れる)焚火シーンの劇中歌は鳥肌が立つほどきれいなハーモニーで、(この映画を思い出すと必ずこの曲が頭の中で流れる、という意味で)ある意味エクソシストのテーマ曲くらいのインパクトがあった。
まあ、とにもかくにも観る人を選ぶ映画だと思う。
(私のようなタイプの方だと睡眠不足では寝落ちする危険が高いので要注意です。。。)
期待値高すぎたかな?
絶対観るべきとのレビューをみて観に行きました。決して外れ、とは思いません。美しい風景はどこをきっても一枚の絵のようでした。でも、ストーリーは男尊女卑の変わらない世の中を突きつけられ、あなたは何をしているのと問われても、答えることもできず呆然と外に出ました。
わき毛で空を飛ぶ
女流画家のマリアンヌが貴族の娘エロイーズの肖像画を描くために小島の屋敷に呼ばれたが、ミラノに嫁ぐエロイーズのために画家であることを隠し、散歩に付き添って観察するうちに恋に落ちるという展開。
絵画的な映像に女性同士の恋愛というだけで美しい作品になるのですが、さらに感じられるのが身分違いの恋であるということ、修道女だったお嬢様がキリスト教では禁じられている自殺や堕胎に寛容になっていく様子、親の命令には逆らえない封建的社会といったことまで描いていたように思います。
特に辛辣だったのがメイドのソフィが受ける堕胎術のシーン。ベッドに横たわる彼女の横には幼子が二人無邪気に遊んでいるという不思議な光景を目にすることになる。これはエロイーズのイメージなのか?それとも実際に?と、マリアンヌ自身の心象風景ともとらえることができるのでは・・・と、見終わってからアレコレ考えさせられる。
一方、カードゲーム(大富豪か?)をするなど仲良くなった3人の女性たち。階級、宗教を超えて自由に青春を駆け抜ける様子が眩しすぎるのです。いつから好きになったの?などと、こっぱずかしい台詞もぽんぽん飛び出てくるマリアンヌとエロイーズ。ちょっとイタリア映画風だったりもするのですが、18世紀という設定からフランス革命以前なのかもわからなくなる。まぁ、後半はおフランスでしたが。
画家とモデルという関係において、スカーレット・ヨハンソンの出世作でもある『真珠の耳飾りの少女(2003)』も思い出してしまいましたが、心まで描くための意思疎通には恋愛を避けて通れないのかもしれません。二人はそれぞれ違ったシーンから好きになったと言っているけど、暖炉に絵をくべるところで心を解き放ったのでしょうね。う~ん、素敵。
もう一つ重要な伏線である「オルフェとユリディス」。振り返ると一生会えないのに、ついつい振り向いてしまうことを3人3様で解釈したり、別れのシーンにも見せてくれる白装束のエロイーズや、“最初の再会”での絵や28ページを示す肖像画(子どももいる)に双方の永遠の想いが秘められていた。全体的にはBGMがないのにマリアンヌの好きな曲(ヴィヴァルディ・夏)をラストにオペラハウスでここに持ってくるか!と、“最後の再会”でのマリアンヌの慟哭にはもらい泣き・・・
繊細で、美しい何度も見返したくなる傑作
自分はどちらかというと、アメリカ映画の文法に親しんで映画を見てきたのだけども、ヨーロッパ映画の必要最小限の絵だけで語るべき物語が巧みに構成されているような「粋」な作品を見ると、「いやー、これには勝てない。巧い。」と参ってしまう事がある。ベルトルッチの「シャンドライの恋」、ダルデンヌ兄弟の「ロゼッタ」や「自転車と少年」、そしてヨーロッパ映画ではないがその文法上にあるイラン映画「別離」。そういった作品に出会える事は映画ファンとしてこの上ない喜びなのだけど、見つけようとして見つけられるようなものではないし、いつ出会えるのかはわからない。そして、ついにまた、新たな名作に出会う事が出来た。 「燃ゆる女の肖像」は、静かに淡々とただただ美しい画面が次から次に映し出され物語が紡ぎ出される。二人の女優の凛とした存在感と美しさに見とれてしまう。画家である主人公の「絵を描くために相手を観察する」という行為が観客がカメラを通して人物をじっと見つめるという行為と重なり、映画的快楽となる。そして女性同士の恋愛が受け入れられなかった時代の社会的抑圧がもたらす緊張感が、二人の関係のエロティシズム、愛の輝きをより浮かび上がらせる。その愛のあり方は、最近マルセルカルネの古典的名作「天井桟敷の人々」を見たばかりなのだけど、そういったフランス映画の伝統にもつながるような実は普遍的な愛の姿でもあると思う。 演出面も、女性の姿が幻想として見える場面での(おそらく)液晶スクリーンを使った独特な撮影や、焚火の場面でのクラッシックではない現代音楽的なコーラス、その焚火の場面の直後のユニークなジャンプカット等、さりげないながら驚きがあり素晴らしい。もちろんその中で一番印象的なのは焚火のあのシーンと〇〇〇〇の物語とつながるラストだと思うが、それだけではなく、絵画的、象徴的な映像が巧みに散りばめられている。例えば、侍女の花の刺繍だが、最後の場面では、花瓶に生けていた本物の花の方は枯れてしまっていたが、刺繍は完成する。それは「私の今の姿を記憶の中で覚えていてほしい」と願う主人公の思いとも重なっているし、最後なぜ主人公が思いを寄せる女性に再開した時に、本物ではなく絵の中の彼女としか視線を合わせることが出来ないのかという事とも、響き合っている。 簡単に語りつくせるような作品ではないが、とにかく、これからも何度も見て物語と絵の美しさを味わいたくなるような素晴らしい作品だった。
視線が操った炎に惹かれた。
前半は盛り上がりに欠ける感じだなあと思っていたが、使用人の女の子が妊娠した、原っぱの女だけの祭りで女たちが歌ったあたりから引き込まれた。
その原っぱで、火の裏にいるエロイーズを見つめるマリアンヌの視線が、炎を操りスカートを燃やした、ように思えて、ぞくっとした。
そのあとは、惹かれあう二人のひと時のロマンスを堪能した。
使用人の女の子が妊娠したけど、全然望んでなくて、なので(流産するように)走りまくったり、棒からぶら下がったりしていた。最終的に多分手で掻き出す処置を、地域の女性(産婆?)にしてもらってた。その処置の間、使用人の女の子のそばには、赤ん坊が寝転んでいて、その対比が切なかった。
生理痛の緩和に温めた豆?をおなかに当てるとか、生理にまつわる文化史ってあまり触れられないから新鮮だった。
17世紀のブルゴーニュ地方の島が舞台らしいが、それは映像からは読み取れなかった。
映画には関係ないけど、中絶を私は悪いことだとは思ってない。その必要があるなら選択できるべきだと思う。
妊娠に至る行為そのものを望んでいなかった場合だって大いにある。妊娠させた男は逃げることが簡単にできる。
そんな現状で、中絶を殺人だと女を糾弾するのは絶対おかしい。
妊娠させた男も等しく糾弾するならばまだ議論になりうるが、そうではないのだし。
美術館に行ったみたいでした!
好きなシーンと感想。
・冒頭の裸でキャンパス乾かすシーン
全体を通して素敵。ずっと絵画を見てる様。
・暖炉前にしてパンを切るエロイーズ・刺繍をするソフィとそれを覗くマリアンヌの横並びシーン
まさに絵。3人とも綺麗すぎ、ソフィが意外と負けず劣らず美・美・美!
・祭りでの合唱の迫力
ホラーかと思う歌い出し。
これが絵の下地になる様なオマージュを感じこの映画の感動を表す様で好き
・祭りでエロイーズが燃える時と直前
直前のぼやけは自分の涙!?と錯覚するほどの揺れ動く感情。
そのあと、すぐ2人が崖でのキスシーンに移って心から「そうだよね!?そうだよね!?」って2人と同じ気持ちになれた。
その後の"キスをしたいと初めて思った時を思い返すシーン"でまさかのその前に!?ってなる裏切り。マジで最高。
・ソフィの子供堕すシーンでの子供
言わずもがな。
何故あの場に子供!?と思う気持ちはコンマ何秒かでどっか行っちゃうくらいグッとくるシーン。
ソフィの相手も出て来ないってとこも映画的に想像を掻き立てられてすごいと思った。
マジ相手どんなやつなん!?
2人同様、ソフィもとっても魅力的だった。
・エロイーズの淫部にマリアンヌ
エロイーズの脇毛に謎の薬や、このシーンでも美しさが勝ってかいやなエロさがないのすごい。
それが28ページに続くってのも最高。
・チラ見せの28ページ
淫部に写るマリアンヌの自画像が書かれた本を持ってエロイーズの子ども?と書かれた絵のこのチラ見せ。
見事な伏線回収。
あそこ、字幕いらないでしょ。笑
・ラスト、オーケストラの迫力
ここも伏線回収。
心が揺れに揺れまくった2人いや、ソフィも入れて3人、いや母親も入れて4人、の感情をドーンと全てさらけ出させたような爆音オーケストラ!
動揺しておでこを触りました。笑
結局、お姉さんの自殺の心境や
ソフィの相手や経緯など、解明されないからこそ、ああなのかな?こうなのかな?って妄想も膨らんで楽しいし、女性メインになってることで後半、ひさひざ登場の男性(ただ座っておはようって言うだけ)のシーンにゾゾっと悪寒がする感じはやられたぁって感じでした。
見た人と語り合いたい映画なのに上映数が少ないの残念。
ラストシーンは、『女王陛下のお気に入り』を彷彿とさせてくれました
すべてが綺麗で美しい映像で描かれるので、観念的な美の世界の愉悦に浸る、と決めて味わうのであれば、まったりしたストーリーもそれほど気にならないと思います。
美術鑑賞への深い造詣や美術史的知識が無くても(というか、私がその方面についても極めて疎くて浅いので)、結構入り込めました。たぶん、多かれ少なかれ神話や宗教画やルネッサンス期の有名な絵画も、印象派も、レンブラントもルーベンスもベラスケスも、何かの折にどこかでは見たり聞いたりしたことはあるけれど、どの絵が誰の作品かなんて分からない。そんな程度でも、なんだか絵画的雰囲気が伝わってきました。
今よりも遥かに、〝女性の性〟について不自由な時代であったとしても、美しいもの、自分にはないものに惹かれ合うという本能的で生理的な衝動が生じるのは抑えられません。しかも、タイミング良く世の中とは隔絶された離島で自分たちだけの濃厚な時間と空間が物理的かつ限定的に巡ってきたわけです。侍女の堕胎という出来事に関与したことも、〝ある種の秘密を2人で共有する〟というスリリングな体験となり、はからずもマリアンヌとエロイーズの親密度が増す働きをしたのだと思います。2人の心が燃えない理由はありません。
ラスト数分間のエロイーズの表情の変化。
振り向いたのか、耐え抜いたのか。
エンドロールに移る直前、突然スクリーンが真っ暗になって2〜3秒の間がありました。
鑑賞者が自由に想像してください、ということなのですね、きっと。
劇中で語られるオルフェの話では、振り向いたことで、〝終わった〟わけですが、マリアンヌは回想のナレーションの中で最後の再会と言ってました。
最初の再会(絵画の中)で、手元の本の28ページに自分がエロイーズの中で生き続けていることを確認したマリアンヌは、ラストの場面で(たぶん)振り返ったエロイーズとは、現実世界での関係は終わりを告げたこととしたのではないでしょうか。あの涙でエロイーズの思いの丈をしっかりと受け止めることもできました。
だから、顔が判別できない『燃ゆる女の肖像』はその区切りでもあり、自分にとっての永遠のエロイーズ、自分にとっての28ページとしての記録、なのだと思います。
流行映画に流されない意地を感じた
ドラマチックな演出も無ければ、 劇的な音楽さえ排除して、 演じる役者と、そこに映し出される映像に全てを託したのは、 真の映画人としての姿を見たような気がする。 今の玩具映画に馴らされた私には、ある意味興奮させられた作品だった。
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