劇場公開日 2020年12月4日

  • 予告編を見る

「赤と緑のドレスの戯れ」燃ゆる女の肖像 ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0赤と緑のドレスの戯れ

2021年1月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

 ある肖像画家と絵のモデルとの出会いから別れまでを静謐な創り方で描いた人間ドラマ。観客は絵の創作過程のみならず、その間二人が共有した秘密を見ることとなる。
 映画の描写は、ロウソクの仄かな光や自然光による撮影、火の爆ぜる音や衣擦れの音を拾う音声、荒涼とした島の風景、対象物を画面の中心で捉えるフォトジェニックな画作り、無駄な会話を配した進行が重なり作品の格式を高めている。そして筋立ての面白さが群を抜く。
 主人公である画家の人物造形は、冒頭すぐの海と次の島のシ−ンで観客に提示される。性格や顔の造りが男性的な画家。絵の創作過程では、ある無理難題が画家を縛る。それが画家とモデルが秘密を共有してから縛りから解き放される。
 その他の印象的のことは、夜に女性たちが集まり低く地鳴りのように唸りながら手拍子を打つ場面、何度も出てくるキャンバスでのデッサン、堕胎の実践と傍らの赤ん坊、画家とモデルが着ていた赤と緑のドレスの重厚さ、そして画家の凛々しいおでこと眉毛。

ショコワイ