「相手を敬う気持ち」レ・ミゼラブル KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
相手を敬う気持ち
予告で見て興味を持って鑑賞したのだが、予告を見て思い描いてた通りの展開でとても見やすかった。
パリ郊外の犯罪が多い一つの街をリアルに描いた作品。
なぜ犯罪がなかなか減らないのか…いろんな原因はあると思うが、その原因の一つが理解できるそんな作品に思えた。
おそらく多くのものが主人公のステファン目線でこの作品を鑑賞する事になると思う。
犯罪者の多くはもちろん大人達なのだがこの街の怖いところは子供達もまた現時点で多くの問題を抱えており、近い将来の犯罪者予備軍と化しているところだ。
ではなぜそんな子供達を救うことができないのか。
決して大人達が彼らを放置しているわけではない。
しかし大人達もまた余裕がない。大人達は互いに力を見せつけ合い、力で互いを制圧し事を解決していく。
そんな姿を子供達は見て育つ。そして子供達が悪いことしても大人達は暴力や暴言で彼らの非行を否定する。
暴力、暴言、権力で相手を抑えつけた先には、そこに生まれるのは改心ではなく復讐となり暴力、暴動、犯罪といった負の連鎖はさらに続いていくのである。
大人から子供へ、そしてそのまた子供へと暴力や復讐心
は受け継がれていくのである。戦争時代となにも変わっていない。
最後はステファンは自分たちの命を子供に奪われかけるシーンで終わる。
引き金を引けば命は助かるかもしれない。しかし彼を撃ったり殺せば、残された者たちの復讐の火はまた燃え上がりこの負の連鎖はさらに続いていくだろう。
最後のシーンの様に、窮地に立たされてからではなにが正しい選択なのかわからない。どちらを選択するにしても犠牲が付き物になってしまい、事が解決しない可能性が非常に高いと思われる。
結果として、暴力や暴言で一時的に相手を抑えつけても、そこには尊敬や敬意は生まれない。
どんなに平和な社会でも、人と人がぶつかり合うのはもちろん避けられないことだ。
しかし、そこには相手を敬う気持ちがないと解決に進まないことが改めて感じされた。