「【フランス・スラム街に住む有色人種の子供達の激しい怒りの理由。現代世界への鋭い警句を発信する映画でもある。】」レ・ミゼラブル NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【フランス・スラム街に住む有色人種の子供達の激しい怒りの理由。現代世界への鋭い警句を発信する映画でもある。】
冒頭、ワールドカップ優勝に沸く人々が集う、凱旋門前。はためくトリコロールの旗。
だが、そこに浮かび上がってくる、映画タイトル・・。
それ以降は、
”ここは本当に世界一等国のフランスか?”と思う映像が続く。
主舞台のボスケ団地に住まう人々は
・“市長”が纏めるアフリカ系移民グループ
・ケバブ屋をリーダーとしたムスリムグループ
・怪しげな麻薬を扱っているらしき人々
・サーカス団を率いるロマたち(昔風に言うと”ジプシー”ね・・。)
と、多岐にわたっているが、微妙なバランスを何とか保っている事が伺える。
彼らを取り締まる、フランス警察クリス(彼らに対する態度たるや・・)、グワダ、そしてシェルブール地区から異動してきたステファン。
上記背景の中で、”ある事件”が起き、彼らのバランスが徐々に破綻していく・・。
自分たちの失態を隠そうとするクリス&グワダ。(けれど、ショックは隠せない。)
事件を引き起こしたがためにゴム弾を顔面に受け、失神するアフリカ系移民イッサ少年。
ステファンのみが、イッサの救急手当てをするが・・。
今作で印象的な場面は多々あるが、
・警官たちとスラム街住人たち(ほぼ成人前の子供達に見える。教育環境の劣悪さも垣間見える。)とのリアリティ感溢れる緊迫した争いの連続シーンには引き込まれるし、
・上手いのは非道な警官として描かれるクリスは家庭に戻れば父親の姿になるし(幼い二人の娘)、グワダには料理を作って待っている年老いた母がいる(彼が母親に涙を流しながら縋り付く場面は、グッとくる)場面を挿入している所。
・更に登場人物が、”ほぼ”有色人種であること。
・そして、フランスだけではなく、世界各国での喫緊の課題がリアルに作中で描かれているところだろう。
<イッサが怒りに燃えた目で、警官たち(ピストルをイッサに向けるステファン、目に怪我を負ったクリス・・)を見据え、火炎瓶を手に持つシーンで映画は黒くフェード・アウトし、
”ヴィクトル・ユゴーの警句:”友よ・・・、悪い草も人間もいない、育てるものが悪いだけだ”
がテロップで流れるラスト。
見事である。
ー ここからは私見であるが、イッサは最後どうしたのか?
”甘い!!”と言われるのを覚悟して、私は且つて自分を助けたステファンの必死の姿を目にし、敢えて火炎瓶を
”厳しい現状を諦観を持って、甘んじて受け入れている自分たちの親世代”に投げた。
と思いたい・・。
出なければ、この映画自体が、本当に”悲惨な人々”を描いたものになってしまうではないか。
厳しい現実が横行する現世界だが、”救い”が欲しいと感じた映画でもある。-