劇場公開日 2019年12月13日

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「ケン・ローチ」家族を想うとき J417さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ケン・ローチ

2019年12月16日
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鑑賞方法:映画館

「わたしはダニエルブレイク」以来のケン・ローチ。
社会の矛盾、不条理を鋭くあぶり出す、彼の手腕は相変わらず。
救いがあればいいのだけれど・・・・。
日本でも、働く環境の劣悪さを言われて久しい、宅配業の夫と訪問介護士の妻の家族のお話・・。
映画で描かれる、オーナー制の宅配もそうだが、コンビニ、派遣、介護関連の仕事・・、すべからく、上手く造られた現代のタコ部屋。タコ部屋から逃げられないような環境を政治が作り出し、安い労働力でも働かざる得ない奴隷を生み出している・・。こんな生きづらい世の中どうにかならないか!と声をあげたのが「わたしはダニエルブレイク」だったが・・。この作品では、どうにもならない現実を突きつけられちゃう・・。せめてもの救いが、優しい家族・・。家族のためを思い実直に働こうとすればするほど 蟻地獄の如くタコ部屋から抜け出せなくなる、地獄のような社会。
いわゆる、企業の株価は、利益に支えられ、そのためにコストを抑える、すなわち、人件費を削ることで保たれている・・。言い換えれば奴隷制の上の楼閣。ほんと、なんとかしなきゃ・・だ。
ケン・ローチ サッカーが好きなんだろうなぁ・・。ニューキャッスルのユニのお客と、マンチェスターユナイテッドファンの主人公の蝶々発止のやりとりが、英国っぽくて楽しい♪
実は、ケン・ローチ作品で一番好きなのが「明日へのチケット」。
複数の監督による、ローマに向かう鉄道の旅の列車内での出来事のオムニバス。
ケン・ローチのパートが、FCローマとスコットランドのセルティックスのチャンピオンズリーグでの試合をローマまで応援に行くスコットランドの若者と、たまたま乗り合わせた難民の家族のお話。セルティックス サポーターだから、スコットランド人の魂だけでなく、アイルランドのハートも加味されていると想う・・。そのハートがとても素敵な物語。「ダニエル・ブレイク」のハートもそれに通じるものがある。
人は、組織やら狭い社会の理不尽な論理に身を任せる前に、人としての倫理感や情を上位のモチベーションにしなければ、やがて滅びる。

J417