「新型ゾンビを作り出すお花」リトル・ジョー chakauooさんの映画レビュー(感想・評価)
新型ゾンビを作り出すお花
人を幸せにする香りを放出する花の研究をする過程で、周りの人々の様子がおかしくなる…という予告からのイメージを受けて、展開が気になって鑑賞。
レビューを見なかったので
グロめのホラーだったらどうしようかとびびっていたのだが、
ホラー要素はほとんどなく、淡々と最後まで進む。
たぶん私は家で見ていたら集中できないレベルで展開が緩やかである。
恐怖ポイントとしては、
見た目も行動も一見変わらないのに、リトル・ジョーによって着実に感情を支配している点である。(映像とか行動でそこが際立っていたらもっとよかった…)
人を食べるゾンビであれば、相手が感染していることにすぐに気がついて、別人になってしまったと割り切って戦える。
一方でリトル・ジョーに感染した者たちは、普通なのである。
感染していることが分からないし、勘違いだと思える程度であるため、
目の前にいるのは知っている人間なのか、感染したゾンビなのか分からない。
その人間の情の弱い部分をついて、感染を広げようとする仕組みは新型ゾンビのようである。
(ベラは見切りが早かったが…)
前半はずっとリトル・ジョーを悪のように思っていたけど、
中盤でアリスのカウンセラーがメッセージをレコーダーに録音するシーンで、
おやそっちの話?!とちょっと期待させる。
もしかして、向き合いたくない現実を未知のウイルスのせいにして逃げているんじゃ?!
愛犬の変化を受け入れらない、反抗期の息子を受け入れられない彼女たちが
悪の対象をつくることによって精神の安定を保とうとしている話か?!
リトル・ジョーはただのいい匂いのするお花なのでは!?
……と思ったのも束の間、最初の流れのままお話は進んでいく。
映画としては単調かもしれないが、
こういった感じでところどころ考察したくなるテーマが散りばめられていて、
じっくり味わいがいのある話だった。
あと気になったテーマは
・植物に責任はない。生み出したあなたに責任がある。
・感情なんてどうでもいいじゃないか。
・幸せな気分になれるならそれでいいじゃないか。 など。
結局のところ、
最後にワーカーホリックのアリスは仕事に集中できる環境を手に入れた。
たまにしか会わない父親が気がついた息子の変化に
一緒に住んでいても気がつかない母親だったのだから、
一緒に暮らしたいという感情は本心ではなかったのかもしれない。
結果的にリトル・ジョーはアリスの一家に幸せをもたらしたのではないだろうか。