「普遍的不条理からの脱出」パラサイト 半地下の家族 Sawakoさんの映画レビュー(感想・評価)
普遍的不条理からの脱出
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舞台演劇を鑑賞しているような錯覚は、パク家の居間の巨大なガラスが、映画の中のもう一つの映像スクリーンとして扱われているためか?家の中で移動する登場人物を距離を置いて捉えるカメラワークは、建物のスケールの大きな箱のような空間で起こるドラマに対して、見る者の客観性を際立たせる。しかし、人物の設定が、物語が進むにつれ一人一人の内面の葛藤を突き付けられるように大変うまく構成されている。そのため、客観性と主観性がうまくバランスを取り、映画の中に観客を引き込まずにはいない。誰もが気づいている社会の不条理を、明るい陽射しの庭でそれこそ、明るみに出し、最後に自分の本能のままにパク氏を刺した父親は、初めて家族に憤り、怒りを最も激しい形で表して見せた。俳優の演技力と配役の妙、人間の抱える矛盾、尊厳、いろいろなものが交錯し、人と人とをつなげるものとは何か、自分の力でといった時に感じる違和感のようなもの、結局人間は関係性の中でしか生きなれない、他者との比較を辞めることはないのではないかという悲壮な感想さえ持つ。この映画は、自分の人生を引き受ける勇気と責任を説いているのではないかといえる。
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