「タイトル「パラサイト」は、何を表すのか」パラサイト 半地下の家族 K.Kさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトル「パラサイト」は、何を表すのか
パラサイトとは、何か。
主人公(家族の息子)は、友人から貰った石を「僕にひっついて離れないんだ」と言う。あの石が象徴するものこそが「パラサイト」であるという事なのだと解釈する。
では、あの石が表すのは主人公達家族か?地下にいた夫婦か?友人が言った「財産と合格」だったのか?
私は、あの石が表すもの、彼らに寄生していたものは「期待」だったのではないかと考えている。
地下のもの(元家政婦とその夫)が憎んだのは地下のもの(家族)であり、裕福な社長やその息子であるモールス信号の読める少年には期待をかける。
しかし実際は少年は「タスケテ」のモールスを読めたところで誰にも言わず、社長は「自分のことを知っているのか?」と言い鼻をつまみ拒絶しながら去っていくのだ。
その結果、人を気にかけることができる(「あの運転手は仕事を見つけたよな?」)父が、元家政婦の夫の心情を悟り、その無念さと怒りにそれまで抱えていた憎しみが足され、社長を刺す。
地下のものの辛さを汲み取ったのは、地下のものだったのだ。期待をかけていた裕福な家族ではなく。
地下の夫は「いつか気づく」と期待し、計画をし、モールスを打つ。いくら計画が入念でも、それは叶わない。
主人公は最後、「計画を立てました」とあの家を買い取りまた家族で住む夢を見る。
しかし、あの手紙の内容を父が知る術はなく、「立てた計画は成功しない」のだろう。その夢は「お金がないと叶わない」夢なのだ。
だからと言って、「期待しない=計画を立てないこと」にした父親が、最後の惨劇を生んだ。
裕福な家族は「無知故に想像できず、他者に期待する」、貧困家族は「お金がなく想像(期待)しかできない」。
「期待しすぎること」「期待しないこと」は、悲劇を生む。
勿論、貧困層と裕福層への格差を描いているのは間違いない。
しかし、私の感想では、この映画は「期待への執着の危うさ」「期待を持たないことへの危うさ」を描いている、が最も近いと感じた。
うーん、しかし…うーん。見終わってすぐ書いているため、まだ少し考えがまとまらない。
自分の中で、再度噛み砕きたい映画である。
もし監督のインタビューで判る意図と180度違ったら、恥ずかしいな。
PS.アカデミー賞四冠!おめでとうございます!!
私はこの映画を「面白かった」と言うのになぜか抵抗があり、なんと言おうか迷っていたのですが「噛み締める映画だった」と表現するのが正しいのかな、と思うようになりました。本当におめでとうございます!
>tanapさん
コメントありがとうございます!
感想は自由ですが、共感していただけた、同じように見ていた方がいたと思うとまた違った嬉しさがありますね。とても嬉しいです!
>作品は受け取った側が解釈するものなので
ありがとうございます!そう言っていただけるとホッとします。笑
コメントありがとうございました!
>いぱねまさん
ご返信までありがとうございます!
>社長への抑えられない咆哮
とても素敵な(素敵な、というのは違うのかもしれない…的確な?)表現だ、と思います。確かにとても奥行きがある映画ですよね。
噛みしめ、考え、本日アカデミー賞四冠を受賞するに値する作品でありましたね。返信ありがとうございます!
ご丁寧なコメントでの共感、大変痛み入ります。
稚拙なレビューをご覧頂き、誠にありがとうございます。
今作は大変思い入れが激しくなってしまい、冷静でいることが出来にくい事を恥じております。作品と同様に私も半地下に片足突っ込んでるような状況なので、勿論フィクションとはいえ、あのバイタリティには頭が下がる思いです。
コメント最後の文でのご見解、大変参考になります。作者の意図を汲むのは大変困難ですが、逆に色々な解釈を掻立てられる作品程、奥行きの深さを証明しているのではないでしょうか。あの反撃は、今現在だからこその人間としての尊厳を踏みにじった、超えてはならない一線を易々と越えた非人格者としての社長への抑えられない咆吼なのでしょうね。それと同じような別表現を『バーニング』でも演出されていて、成金達のデリカシーの欠如を端的に印象付ける秀逸な場面に畏れ入ります。