「格差社会への問題提起、どころの騒ぎじゃない」パラサイト 半地下の家族 chibirockさんの映画レビュー(感想・評価)
格差社会への問題提起、どころの騒ぎじゃない
韓国映画は疲れるのであまり観ないけど、時々観なければいけない気がするものがあり、これが久々のそういう作品。
やっぱり疲れたけど観て大正解。
ソン・ガンホの存在感は唯一無二で、適当そうでありつつも、根っこには自尊心と己の哲学をしかと保ち、物を言わない演技でそれをよく表している。
母親、娘、息子、それぞれキャラがよく立っていて、演技の中の演技が素晴らしい。
蹴落とされた家政婦のビフォア・アフターも強烈。この人の秘密が明るみになってから、物語が厄介な方向に向いはじめる。
印象的だったのは、大雨の中、豪邸から這々の体で自宅に向かう家族が、土砂降りの中、下へ下へと階段を下っていくシーン。上流社会と社会の底辺の高低差をこれでもかと見せつける。そして下りきった先で見たものは、降り続く大雨、下水、便器から溢れ出る水で浸水した我が家。ついさっきまで気持ちよく酒盛りしていた豪邸の広々としたリビングとは、天国と地獄ともいえるギャップ。容赦がない。
寄生される金持ち一家が、とりたてて嫌味な人たちではないというところで、逆に寄生する側の異常性が際立つ。見下す方よりも見下される方が敏感なのだ。
単純に言えば格差社会を浮き彫りに、というのがテーマであるっちゃあるが、みんなで考えようね、なんて問題提起ではなく、ユーモアをグロテスクで強化して、誰もが想像できないようなストーリーを猛スピードかつド迫力で展開させ、観客を呆然とさせた上、2,3日の後遺症をも残す、なんというか、映画を超えた体験というか。4D とかジェットコースターとかそういうものではなく、心理的な体験。
それでいて最後はほんのり希望の光がさすような、おかげで気持ちのもっていきようが更によくわからなくなった。
どっと疲れ、しかし心わしづかみにされてその跡がしばらく消えないような、ああ、つくづく、韓国人の感性をもってでしか生み出せない代物だと思わせられた。
物理的にはすぐ隣に位置していて、人の顔も街の風景もどこか日本に似ているのに、この映画で観る韓国人はまったく異なる生き物のようで、いや逆に似ているからなのかも?近そうで、ものすごく遠い国という印象。
きっと欧米と日本では、これに対する体感温度は相当違うのだろうな。
>印象的だったのは、大雨の中、豪邸から這々の体で自宅に向かう家族が、土砂降りの中、下へ下へと階段を下っていくシーン。上流社会と社会の底辺の高低差をこれでもかと見せつける。そして下りきった先で見たものは、降り続く大雨、下水、便器から溢れ出る水で浸水した我が家。ついさっきまで気持ちよく酒盛りしていた豪邸の広々としたリビングとは、天国と地獄ともいえるギャップ。容赦がない。
同意です!決っして美しくはないんだけど、すごく胸を打たれるシーンでした。