「半地下に残された希望とは」パラサイト 半地下の家族 財団DXさんの映画レビュー(感想・評価)
半地下に残された希望とは
恥ずかしながら、ポン・ジュノ作品は初観賞。
序盤のコメディから後半のホラーまで、観ている間私の心の中にポン・ジュノ監督が寄生し、予想はことごとく打ち破られ、えもいわれぬ感情と興奮、すぐそこに同じような現実があると言う嫌な余韻が残された。
ただ意外性を出すためだけの捻りではなく、自然に必然的に物語のツイストを生んでいく見事な構成。
そして、序盤に下から見上げる階段のカットを何度も見せてある種のケイパーものとして観客を惹きつけておきながら、クライマックスの俯瞰のカットで一気に観客を引き離す。
キム一家に感情移入して見ていた私は、最後の父親の行動に戦慄を禁じえなかった。
何も理解していなかった。
完全なる地下で富裕層を崇拝する人々に同情を禁じ得ない心と、地上の人々と同じような生々しいプライドを併せ持つ彼らは、足掻いても足掻いても半地下という地獄から抜け出せない…。
その象徴であり、最後のトリガーとなるのがまさかの匂いだとは…!
これがエンターテインメントの真髄だ。
『ブラッククランズマン』『ブラックパンサー』は黒人が受け続けてきた差別を、『万引き家族』『アス』は貧困層を描いてきたように、観客を魅了し、混乱させ、痛烈な問いを投げかける。
半地下の家にさす窓の光は希望、それすらも失った彼は…。
もう今作を見る前には戻れない。この映画は生涯我々の脳裏に寄生〈パラサイト〉し、映画以上に悲惨な現実から目を背けさせてはくれないのだ。