「急ぎ足がすごい」るろうに剣心 最終章 The Final myさんの映画レビュー(感想・評価)
急ぎ足がすごい
原作を読んでいた人間で、るろうにシリーズは映画も好きだったので楽しみで観に行った。漫画という枠組みのなかにいる、ある意味、非日常的なキャラである剣心が、実際にいたらどんな風なんだろうというものを、姿と色をもって魅せてくれたこの実写シリーズがとても好きだった。あぁこういう人が本当にいたのかもしれないと、二次元のキャラである剣心を、それほどのリアリティをもって魅せてくれた映画に感謝すらしていたので、本当に楽しみにして観に行ったのだ。
結果、とてもがっかりした。
まさかこんなに原作を無視した作品になっているとは思わなかったし、オリジナルであれど物語が破綻していないのであれば納得もできたが、物語のつながりも急ぎ足で進むストーリーだったためよくわからず、ひたすらアクションを見せられるだけの物語だった。
やたらと剣心の過去のシーンを繰り返しみせてくるなと思ったけれど、これは続くビギニングのために作った作品なのかもしれない。そうだとしたら、この作品は、シリーズ最後になるビギニングのためのプロローグで、だからストーリーなどなくても問題なかったということだろうか。とりあえず、ビギニングをこの後で観に行く予定なので、それを観てまた判断したい。
剣心は何をしたかったのだろうか。シリーズを通して人斬りの過去とどう向き合い未来につなげるのかが大切になるはずなのに、人斬りの過去などではなく、ひたすら巴のことだけを考えてそれがただ辛いのだという感じにしか見えなかった。そうだとすると、とんだ恋愛脳の人間だし、巴だけのことしか考えていないのであれば、人斬りに対しての罪悪も何もないただのサイコパスということになる。そういう人間にしたかったのだろうか。
巴という過去があったうえで、薫と出会い人斬りでありながらも生きるのだという強い意志をはぐくみ前を向きかけたところで過去からの復讐に合い、薫を喪失、過去からは逃げられないのだというその失意の中で、それでも人を救うという思いは捨てられない、人斬りだからこそ、剣をもってこの先も人を救うのだと、そう決心する、彼の人生のターニングポイントとなるためのお話だったはずなのに、この話は、ただただ巴を殺したトラウマにいまだに捕らわれただけの男という話にしかなっていない。ここまで書いて思ったが、やっぱりこれはビギニングのためのプロローグなんだろうか。そうだとするとこの内容でも納得できるなと思った。そういうことかな。それならまぁいいんじゃないだろうか。
この剣心はこの先も神谷道場にいるとは思えないけど、それでもいいと制作陣や役者も思ったんだろうな。だからこんな仕上がりにしたんだろうな。そうだとすると、原作の、清濁すべてわかって上で、理解したうえで、それでも清を信じるのだと、地に足をつけた、ある意味何より辛い道を選んだ剣心が好きだった自分はとても残念だが、実写での制作では、そんな道ではなく、巴を選ぶだけの剣心を描きたかったのだろうから仕方がない。
結論としてこれは、巴が好きな人がつくった、巴のための映画である。剣心と巴以外はサブキャラであると公式が映画ではっきり申している映画なので、それは違うという人にはお勧めできない作品だ。
自分はもう二度と観ない。アクションはすごかったので、それだけは見ごたえありました。ありがとうございました。