あのこは貴族のレビュー・感想・評価
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自分らしく頑張ろうと思える作品
どのシーンだったかは忘れてしまったが、
水原希子演じる時岡美紀が言っていた「地元から出なければ両親のトレースになってしまう」的なセリフが刺さった気がした。
あと、石橋静河演じる相良逸子のバランス感覚がすごくよかった。
観賞後にラジオ番組、東京ポッド許可局での各々の感想を聴くとより作品を味わえた。
いつでもやっぱり隣芝生は青い
上京してきてなんとか東京の自由にしがみつく希子ちゃんの感じる東京の自由さと、東京の家柄に縛れて窮屈に暮らす麦ちゃんの関わり合いが絶妙。そして、周りの友達たちも丁寧に描かれていてとても良かったです。
映画後半で、希子ちゃんの部屋に遊びに行ったときに麦ちゃんが感じた自分への絶望感と、希子ちゃんへの羨望感を表したあのセリフは秀逸だと思いました。
まっとうに毎日生きているのに、自分の人生を歩めてないことに気づいてしまった虚しさは見ていて胸がきゅっとなって。
自由があるはずの東京で、いい家柄に生まれてしまったばかりに、田舎で暮らすようながんじがらめになる感じがなんとも言えず酸っぱい気持ちになりました。
山内マリコさんのインタビューか何かでみた、東京には匿名性よりも、より一層深い自由がある、という言葉は深く頷いてしまった。
実は知っていた事
東京で生まれ育った人と地方から東京に住み着いた人。実は越えられない透明な壁がある。それは昔から変わらず今も現存していると言う事実。それを棲み分けと表現しているが、この事象はリアルに存在しているのだか敢えて誰もが口にしない皮肉なデリカシーと言うものが東京には在る。それをあからさまに映像にした社会風刺的な作品である。現代の大都市東京の街作りは、東京人が作ったモノではなく、東京に憧れている地方出身者の、かく在るべき東京の姿…であった。それらを独自の切口で映像化したドキュメント的要素をもった映画であると言える。全体を通して大変良くできている作品だと思います。
残酷かつ魅惑の街、東京
映画が語るように、東京は沢山の人々が集まりながら、実は交流のないクラスターが幾つも重なっているのだけど、どこかに小さな接点はないわけでなく、他の世界が垣間見えるときはある。
私も、お金持ちにはお金持ちの辛さがあることを若いときに知った。某社の御曹司が同じ部署に武者修行をしていて、土日も実家の人間関係を維持するために色々な行事に出て月曜の朝から疲れていた。
私は作中の人物と同じく富山から上京した。映画でも実家の弟が暇を持て余したのか、やたら大きいクルマを買っていたり、シャッター商店街など田舎の閉塞感もリアルである。
残酷なまでの格差もあり、誰もがそれなりの行き詰まり感を感じながらも、刹那的な喜びはある、それが生きていることだと感じられるのが東京という街なのだろう。
生まれた階層が与える幸福と不幸、自分が決めた生き方が運んでくれるシアワセのお話。
今日あった事を話せる、話を聞いてくれる人が居るシアワセ。もっと言うと、誰かに話して聞かせたいことが、自分自身が行動することで身の回りに起きると言う生活を送る事が出来るシアワセ。
例えば。貴族の頂点である皇族には、居住地選択の自由が無い。職業選択の自由も、事実上、発言の自由も婚姻の自由も、全部無い。それ、シアワセって言える?
誰にも頼らずに、自分自身の脚で立って生きている華子も美紀も、親の地盤に縛られ、逃れる事を許されない幸一郎よりはシアワセだと。
私、生き方を見つけました。
そうみたいだね。頑張って。
ラストカットの微笑みのやり取りは、そう見えました。
しかし、またまた女性監督ですよ。映画界に関して言うと、俺の中では完全に女性優位ですよ。大上段に構えず、大仰にもならず、身の丈の問題を地味な演出と、良い脚本と良い役者さんで撮る。
2ケツJKに、躊躇しながら手を振る華子。貴族だとか、そうでないとかの潜在下にあった華子の意識が消えるシーン。こんな描写が好き。なんか最近、そういうのが刺さるみたいです、俺的には。
良かった。とっても。
普通な面白さ
なかなか面白い展開だったから期待したけど、まぁまぁな着地点でした。
小説が原作だけあって、印象的なセリフがたくさんありメモしたい位だった。
東京は棲み分けが出来ている
地方からの上京者は東京に搾取させる
そうかもしれないと頷いてしまったが、ユニクロ柳井のように、若者に低賃金で深夜まで残業させながら「定時で終わる仕事だ」と言い張り、自分は渋谷一等地に住む地方からの東京進出搾取者も数多いことを認識しておいて欲しいと願う。
原作には細かい描写があったのかも知れないが、映画だと結婚から離婚までの経緯がいまいち解りづらいので、ラストをアッサリ目に感じたのは、もしかしたらそのせいかも知れない。
役者に関しては、ちょい役まで含め何気ない日常会話における細かい言い回し、仕草まで非常にリアリティーがあって好感。
ただ水原希子の田舎生活やキャバ嬢は違和感しかなく、他にいなかったんかと思った。
門脇麦は水原の役でも良かったと思う。
健気にしなやかに生きる
松濤で生まれ育った開業医の娘華子を門脇麦さんが楚々とした演技で、富山から慶応大学に進学した美紀を水原希子さんが、のびやかな演技で好演。
三人での待ち合わせ、華子の重大な決断、という展開に戸惑いましたが、姉妹間で交わされる気の置けないやり取り、人の好い義兄の台詞、美紀が呟く本音がいい。
夜の東京、そして女の子達の弾けるような笑顔が印象的な作品でした。
映画館での観賞
ありのままでいいってこういうことかな
「ありのままでいい」って言葉が嫌いだ。
どんな人間だって平等だし、自由であるべきだし、正解なんてないし、どんな個性でも認められるべきってのは分かる。
でも、長年かけて構成された「ありのままの自分」は育った環境や価値観で無意識に固められている。勇気が出なかったり人と比べてしまったり自分の立場を認識したり、そういう仕方なさも自分なのに、「ありのままでいいんだよ」という一見甘い囁きは、そういった「自分のバックボーンや性格を受け入れ、決別して、ウジウジ人と比べないでいい加減自立せよ」という厳しい言葉に聞こえてしまうのだ。少なくともありのままの私は。
原作は未読だけれど半年前の予告からずっと惹かれていた「あの子は貴族」は、楽しみにしていた以上に素敵な映画だった。
生まれも育ちも東京のお嬢様、華子の門脇麦(いい意味で泥臭い役のイメージがあったのだけれど、完璧に上品で世間知らずのお嬢様で、頭からつま先までこんなに可愛らしかったの!)と
地方から上京したけれど大学を中退、夜の仕事をしながら強く生き抜いてきた美紀の水原希子(顔面もスタイルも美しすぎ、、それでいて実家でジャージに履き替える自然さが素敵でした笑)
東京で生活しながらも本当に正反対の2人は、羨ましがられるところも、惨めさを感じるところも正反対。
1人の男を通じて出会うという構図にはハラハラしたけれど、2人は喧嘩する訳でも見下し合う訳でもない。更に良いなと思ったのは、特別親友になる訳でもなく、静かにお互いと自分を認め合いながら、大事な友達はそれぞれ同じ世界にいるというところだった。
逸子の言う通り、とかくカテゴライズされ、対立させられがちな20-30歳代の女性たちだけれど、戦う必要なんて無いし、ぶつかって自尊心をすり減らす必要なんて全然ない。で、ついていけないならお互いが必要以上に歩み寄ったりする必要もないんだという優しさをしみじみと感じた。
形は違えど懸命に生きる2人や女性たちの一つ一つのシーンがたまらなく愛おしくて美しかった。
私は田舎の微妙に裕福な家庭で育ち、親のお金で上京して、今は安月給でなんとか東京で生きている。
偉そうだけれど、どちらの世界のコンプレックスや窮屈さも分かるような気がして、どちらも美しく立派な女性だと感じた。
人種や性別や宗教や、世界的に見ればもっと大きな違いなんていくらでもあるけれど、分かり合って皆がシェイクハンズする日なんてこないけれど、東京の片隅で、女性同士がこんな風に弱さを抱えながら自分を生きることができたら、それが「ありのままでいい」に繋がるのかな、と思った。
一瞬の音楽や光景も大事にしたい、素敵な作品でした。
東京で暮らす人に存在する見えない階級制度
東京生まれ東京育ちのお嬢様と、地方出身の叩き上げ女子の2人を中心に描く、リアルな東京ヒエラルキーが見事です。
私は東京寄りの横浜に生まれて、物心ついた頃から遊ぶ場所は東京、祖父母の家も東京という育ちで、幼稚舎からあるお嬢様おぼっちゃまが通う私立高校に高校から外部入学したので、劇中で描かれる「見えない階級」や「同じくらいの階級の人としか出会わない」ということに物凄く共感しました。
主人公の女性2人が選んだ道を、この先後悔しないかは正直分かりません。レールに乗った人生でも、歳をとってから分かる有難みは絶対にあると思うのです。
それでも、特に華子にとっては人生初の自分で決めた決断が彼女を成長させることは間違いないので、切り拓いた未来が明るいものであればいいなと思いました。
生まれの違いはもちろんある
~「みんなの憧れで作られていく・・・幻の東京だよ。」~
【賛否両論チェック】
賛:正反対な生い立ちにあって、「本当の幸せとは?」という同じ問いに悩む2人のヒロインが、無機質な東京の街で出逢い、心温まる人間ドラマが生まれていくのがステキ。
否:時間軸が結構分かりにくく、ストーリーも非常に淡々と進んでいく感がある。上流階級のシーンは共感しづらい部分も(笑)。
門脇麦さん演じる生粋のお嬢様・華子が葛藤することになる、「『結婚=幸せ』なのか?」という、普遍的な問い。一方で、水原希子さん演じる苦労人・美紀もまた、「女性の幸せとは?」という自問自答にぶつかります。そんな2人の運命が、東京という異質な街で交錯した時、思いもよらない温かな物語が生まれていくのが印象的です。
とはいうものの、物語の時間軸は結構分かりにくいほか、上流階級の生活のシーンは、我々庶民ではなかなか共感しにくい部分もあったり(笑)するのが、たまにきずでもあります。
それでも淡々と進む物語には、気になるようなラブシーンもありませんので、人生について改めて見つめ直すのにはうってつけの、そんな作品といえそうです。
本当に素晴らしい映画。門脇麦さんと水原希子さんという二人の魅力的な...
本当に素晴らしい映画。門脇麦さんと水原希子さんという二人の魅力的な女優さんが共演するということで観に行ったのだけれど、泣かせるシーンがいくつかあった。松濤で生まれ育ったお嬢様で、名家の子息と婚約を果たした華子と、猛勉強して富山から慶応義塾大学に入学したものの、親の家計の問題で中退せざるをえなくなった美紀の人生は接点はなく、二人のからむシーンもそんなに多くないのだけれど、非常に大きな影響を及ぼすことになる。東京をタクシーで移動する華子と、自転車で移動する美紀。二人にはそれぞれ生き方に影響を及ぼす女ともだちがいる。この女ともだちがからむところに感動的なシーンがたくさんあった。この映画、これまであまり映画描かれていなかった、階級格差と女性同士の友情という二つのテーマが基調になっているのだけれど、東京の景色や、二人の女優さんの心の動きを的確にとらえる女性監督の手腕に巧さを感じる。特に夜の勝鬨橋(?)で橋の両側で邂逅する華子と美紀(と女友だちの里英)のシーン、里英が美紀とカフェで話すシーンはぞくぞくとするものを感じた。老若男女を問わず、多くの人に観てもらいたい映画だと思う。
誰が貴族だって?
原作は読んでいませんので、原作に対する評価や脚本演出に対する評価は混ざってしまいます。
さて、『クレージー・リッチ!』は普通じゃない金持ち一族が出てくるコメディーでしたが、海外が舞台だとしても華僑にはこういう人もいるなと思わせるだけのリアリティーが在りました。本作はどうでしょうか。貴族という言葉に見合うだけの人は出てきたでしょうか。劇場でもときどき笑いが起きていましたが、昔の大映ドラマの嫌みな金持ち一家程度での設定にしか見えませんでした。コメディーならよいですが、コメディーではたぶんないので、見ていて辛いです。役者の皆さんの縁起が良いので、嫌みに見えないので余計に困ってしまいます。
まず、病院経営者の一族。医療法人の理事長は医者しかなれませんし、医師免許は世襲ではありません。金持ちの医者がいても、もともとお金持ちなのに医者になった場合を除き、成金みたいなものです。『貴族』的な特徴はないと思いますよ。また、婚姻関係にない医師を呼んできて後継者にするということは、せっかく作った法人を乗っ取られるので、簡単な問題ではありません。必死に結婚相手に医者を探すが、皮膚科のお姉さんを跡継ぎにするはずです。別に皮膚科+整形外科で良くない?
高良健吾のうち。本当の貴族的な金持ちは、びっくりするほどの資産がありますが、昔から普通にお金があるので、お金があるから高いものを買うのではなくて、買ったものが結局高価なものであった、普通の人には選択肢に入らないような、となります。なので、大きな古い家でも別荘でも高級外車でも普通なことなので嫌みに見えません。他人には優しく、普通の人を見下したりはしません。気付かずに残酷なことをする場合が有りますが。誰かが亡くなると、資産分配の前に相続税が大変で、土地を切り売りしなくてはならないので、高齢のメンバーが無くなった場合の想定はしてあります。この一家も貴族には見えません。
松濤、アールグレー、慶応幼稚舎、Moe et Chandonなど属人の想像する金持ちワードが出てきますが、笑いをとろうとしているのか、鑑賞者の理解できる金持ちの設定はこれでいいよね、と思っているのかと思ってしまいます。そもそも、金持ち=貴族ではないので、貴族らしい伝統や奥ゆかしさなどをを表現すべきでしょう。はいからさんの伊集院家のおばあさまのように。
また、原作者が富山の方のようなので真実なのかも知れませんが、地方出身者の描き方もあんまりな気がします。
今どきの結婚かからも離れているし(『貴族』だとしても、結婚しても働く人なんていますよ)。親が失業したってせっかく受かった慶応を中退せず奨学金を考えたり、さすがに、キャバクラバイトなら何とかやってけそうですが。親が経営者なら『絶対、商学部』の様な気がします。ジャズの話をしているとき、店でかかるジャズも、なんだかなぁ。関西弁の男性は確かにお付き合いしたくないけど、ダマって消えるのは失礼です。外に婚外子が沢山いる父親もいやだなぁ。
章立てがされていますが、時間が動くだけで、リズムや画像は同じなので、なぜこうしているかわかりません。
高良さん、門脇さん、水原さんは結局自分の人生を歩んでいくわけですが、きっかけが希薄ですし、結果として立場は変わりましたが、それぞれがあまり成長しているように見えません。オズの魔法使いを見ない位で別れるなら、もっと沢山嫌いなところがアルでしょう。とってつけたような複線に見えます。高良さんなら、気の利いた言い訳をして起こらせないでしょう。
それでも、この映画が印象に残っているのはキャストの頑張りです。高良さん、他の人だったらオモテ裏のある嫌みな人になってました。うそはついていないと思える演技でした。門脇さんは『貴族』には見えませんが、箱入り娘で時代から取り残されている感じがしました。水原さんは素敵です。豊島区の本屋の娘にしては洗練されすぎていると思ってましが、今度はいけてます。入学式のいいういしさや、田舎での気だるさや、自分のポジションをみつけて生き生きしているところのそれぞれ味わい深いです。その他、石橋さんや山下さんは始めてみましたが、そういう育ちのそういう仕事をしている人にちゃんと見えました。
まとめ、せっかくいいキャストなので、ちゃんとコメディーにまとめるか、若者が成長していく群像劇にすると良かったのではないかと思いました。ちゃんと、貴族を定義づけして、それに合わせた貴族像をリサーチするとよいのではないでしょうか。
私の億劫な気持ちを画と物語で代弁してくれました。
箱入り娘の婚活奮闘記。
物語のテーマや主人公の置かれている立場は「スワロウ」と通づる所があり、スワロウを頭の片隅に置きながら観ていました。
女性の生き方を問う映画は昨年沢山観ましたし今年も沢山上映されるでしょうから、作品に何らか特徴がなければ印象には残りません。その点、本作は貴族という日本でもよく知られていない閉ざされた世界が舞台で、そこにミキティのような庶民派や逸子のような海外生活者の価値観を入れることで貴族の世界をよりメタ的に見れる作りになっています。また、この手の映画には珍しく男性側の苦悩も描かれており、決して短絡的な作りにはなっていません。そもそも邦画でこういったテーマを取り扱っていることが私には新鮮で、持続的に興味をそそられました。
私にとって幸福とは「自分の欲求を理解する。その欲求に基づいた行動をする」というシンプルな行動原理です。これに制限を掛けるのが「他人の目」であり、それが家族の場合だとなかなか抜け出せず呪縛と化すケースがあります。私は家族が作り出した文化を継承するのが億劫で未だに結婚に興味が持てませんし、結婚となると相手方の家族の事まで考えなければならないので二重苦です。本作はそんな私の孤独な気持ちを画にしてくれた作品でした。
華子はジャズや舞台が趣味だなんて言っていましたが本当は興味ないと思います。離婚という決断は彼女の生まれて初めての意志だったかもしれませんし、お陰で自分の物語を手に入れることができて良い結末でした。一方で幸一郎のその後はどうなっていくのでしょうか?これはスワロウの時も思ったのですが、今後は男性側のにスポットを当てた作品も見てみたいです。今は多様な生き方が認められる時代なのでそういう作品も今後増えてくることでしょう。
最後に、本作は印象的なシーンが多かったので幾つか記録しておこうと思います。
・ミキティと幸一郎の食事シーン
大衆中華屋という普段の2人から遠く離れた着飾らなくて良い場所。幸一郎にとって自分の生い立ちを話す必要のなかったミキティの存在は大切だったはずです。
・ミキティが起業に誘われるシーン
ミキティはずっと誰かに必要とされたかったんですね。即答したことからその喜びが伝わってきます。
ミキティの生い立ちは庶民的ではあるものの、家庭の事情に巻き込まれている点では華子と同じ。追い込まれていたとはいえ、自分の意思で自らのレールを作れる人はやはりカッコイイし、そういう人について行きたくなる。華子の気持ちがわかる。
・華子のタクシーから降りるシーン
多くの人がこのシーンが記憶に残っているはず。
全自動的に移動する華子と自らの足でペダルを漕ぐミキティのそれぞれの生き方のメタファー。ミキティに助けを求めていたんだと思いますが、何はともあれミキティという存在が華子を変えたんですね。華子にとって幸一郎は何気ないことすら話せない存在だったんですね。
個人的に思い入れの強い作品でした。
皆んなまぼろし
「東京とはみんなの憧れで出来ている」
冒頭でタクシー運転手が
「お客さんをホテルへたくさん運んだことがあるけど、一度も中に入ったことがないです」というセリフがあった。確かに丸の内に立ち並ぶビル群なんか通り過ぎるだけで入ったこともない。
そんな丸の内の住人達にも上には上がいる。
松濤のお嬢様もしがない開業医の娘として青木家の前では格が落ちる。
その青木家も海運業で財をなしたと言っていたが、
つまるところ商人の出なので出るところに出れば、成り上がり者として後ろ指を刺されるのだろう。
人の欲望は饕餮で足ることを知らない。
東京の憧れは、外から眺めているくらいが距離感としては丁度いいのかもしれない。
この映画は幸せをテーマとして扱っているので
登場人物が出てくるたびに「この人は幸せなのか?」という目で観てしまう。
居場所と幸せは相関する。その自分の居場所は誰かに与えられても意味がない。
幸せも与えられるものではないという点において貴賤はなく、平等なのかと映画を観ながら思った次第。
しかしああいう層ともなると、絶対amazonとか利用したこと無さそうだな(笑)
美しい所作=上品なだけではない
実在する隠れた格差
とても面白い点をテーマとした映画です。
”格差”というのは一般的な生活をしているとあまり感じない。
普通に自分の生活を生きていると感じない。
ただ異なる世界に一歩入ると、こんな世界があるんだということがわかる。
美紀が富山から慶應に入ると違和感を感じる、、というのは私も感じることがありました。
でも、そこでしか生きていない華子はそれを感じない。
美紀と出会い、だんだん気づいていく、自分の世界の特別感を。
これらを秀逸に描いた部分はとても素晴らしいと思います。
友人や恋人、パートナーに感じる違和感はないでしょうか?
それはきっとこれまで生きている場所もそうですが、その人の環境も人生に形作っている。
そういった違和感を感じる映画でもあります。
特に結婚前の方や、友人や恋人、パートナーとの関係がよくない方向にいっていると思った方、
ぜひともこの映画を観てみて下さい。
自分の世界と他人の世界を考えるいいきっかけになると思います。
お勧めします。
映像と演出もすごい
「今の日本で階級差を描くのは難しい」って言われてるんだけど、描けるね。すごい。
演出がいいんだよね。門脇麦の箱入り娘の感じとか、石橋静河が語る感じとか。映像もすごい。石橋静河が河川敷で語るところは特に良かった。
予告編観てるから、門脇麦と水原希子のダブル主演だって分かってるんだよね。でも水原希子がなかなか出てこない。「いつ出てくるんだろう?」と思いながら観させておいて、登場させるシーンはキレがあって良かった。
キャストも良かったな。門脇麦のお姉さんに石橋けいと篠原ゆき子を使ってくるとか。篠原ゆき子は《ミセス・ノイズィ》よりいい演技だったよ。
途中まで「幸せな人が誰も出て来ない」と思ったのね。門脇麦も水原希子も高良健吾もみんな不幸そうなの。「この窮屈な状況で女性が割りを食っている」っていう感じかなとも思ったけど、それより、家に縛られるとみんな不幸になるってことだね。
ラストに向けては、女の人が家から解放されていって、そこそこ幸せそうに見えてきたな。
作品のテーマと違うかもだけど、観てて、「階級の固定」は思った。世代を超えて階級が固定される社会になってるね。そして上の階級に生まれたからって幸せとも限らなそう。
あと慶応大学は恐ろしいね。そんなに格差を感じながら過ごす大学なのか。
深いテーマを最低限の説明に押さえて、いい演出と映像と観せてくる岨手由貴子監督はすごいと思ったし、観たほうが良いと思うよ。
誰も不幸にならない映画は後味が良い。
予告編を初めて見たときに、とても映像の雰囲気が良くて惹かれた記憶があり評判も上々だったので鑑賞。
やはり映像は良かったし、一人ひとりの登場人物が実在するかのようなリアリティ、というか、わざとらしさが全く無いなという映画だった。
あまり良くない邦画を見ると、演者の演技が暑苦しかったり、演技が良くても音楽が大袈裟だったりと何かと映画を構成するあらゆる要素が上手く噛み合った作品ってなかなか出会えないのだけど、これは何もかも上手い具合に噛み合っているなという印象を受けた。
東京に憧れて背伸びして生きる話はよくあるけど、こういう一人ひとりが自分の生きる場所で懸命に希望を見出だしながら生きている様子は案外珍しいかもしれない。でも、そこがかえって現実味があった。
お嬢様の華子ちゃんと富山の田舎出身の美紀ちゃんがどうやって噛み合うのか、鑑賞前は疑問だったけど終盤の二人でベランダで会話するシーンでとても府に落ちた。
一生田舎で暮らす人も都会の裕福な暮らしをしている人も本質的なものは同じに近いのかな。
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