「トラジェディー・セメタリー」ペット・セメタリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
トラジェディー・セメタリー
作品の内容に掛けて言うなら、スティーヴン・キングの禁断の書が、墓の中から再び蘇る…。
1989年にも映画化されたキングの同名小説をリメイク。
大まかな話は89年版とほぼ同じなので、割愛。
新しい要素も。
特筆すべきは、蘇ってきたのが幼い息子ではなく、娘になっている点。
年齢設定も高くなり、生前から死に対して疑念もあり、死から蘇ってきたその存在により哀しみや憐れを際立たせている。
演じた女の子の生前の可愛らしさからの一転、不気味さと怪演はなかなかのもの。
ジェイソン・クラークと妻役の哀しみと恐怖演技もさることながら、ジョン・リスゴーの田舎爺さんぶりもハマっている。
かつてのホラー映画が今リメイクされた時のあるある、よりグロく、恐怖感増し。
医師である主人公が応対した黒人青年の脳みそがはみ出た傷口はかなりグロい。89年版ではユーモラスな助言役であったが、今作では警告役のみ。
妻の少女時代のトラウマ。若くして死んだ背骨が曲がった姉。その形相、状態。終盤辺りで、妻の幻覚で姉が荷物用エレベーターから這い出てくるシーンは『リング』の貞子さんにも匹敵!
序盤の不気味な動物のマスクを被った子供たちも不穏。
そして、禁断の地。決して来てはならぬ、この場所の存在を知ってはならぬかのように、この現世ではないような別世界の雰囲気を醸し出している。
89年版でも書いたが、人は愛故に哀しい過ちを犯す。
何がこの悲劇を招いたのか…?
引っ越して来た事…?
愛猫が轢死した事…?
隣老人があの場所を教え、知ってしまった事…?
愛猫を蘇らした事…?
娘を蘇らした事…?
たった一度の過ち、突然の悲劇が人の平常心、判断を失わせる。
引っ越して来てから、死や恐怖が纏わり付く。
それ自体、この惨劇への警告だったのであろう。
どんなに短い生涯でも、愛された記憶と共に、安らかに眠っていたい。
どんなに突然の悲劇でも、愛した記憶と共に、それを受け入れるしかない。
どんなに哀しく、不条理でも、人の生死の一線を犯してはならない。
それはもう、人のエゴに過ぎない。
ラストは89年版とは違う。
ネタバレチェックを付けるので触れるが、娘が母を殺しあの場所に埋め、父が娘を殺めようとした時蘇った妻に殺されあの場所に埋められ、死者として蘇った父母娘は幼い息子の元へ…で、幕。
あの後そのまま家族を続けたのか、この息子も?…と、解釈はそれぞれ。
悲劇の連鎖や皮肉的でもあるが、ラストはあまりにも愚かで哀しい89年版の方がいつまでも後味悪さを引く。
でも、本作も悪くなかった。
おそらくキング自身は本作を書きながら、自分は何て恐ろしいものを書いているんだろうと身震いし、自分は何て哀しい話を書いているんだろうと涙もしただろう。
改めて本作は、“蘇らせてはならない”戦慄の作品であった…。