「長男の“不在”の理由、事前情報では控えてほしい」さくら 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
長男の“不在”の理由、事前情報では控えてほしい
原作でも映画でも、ストーリーは繊細に語られている。一人暮らしの次男・薫が、音信不通だった父からの手紙を機に、久しぶりに帰省する。実家には母、妹の美貴、数年ぶりに会う父、愛犬のサクラがいる。だが、薫の回想に頻出する兄のハジメはそこにいない。家族もそれを口にしない。その理由が、少しずつ、順を追って明かされていく…。
予備知識ゼロで鑑賞できた人は、その過程をある種ミステリー要素として楽しめたはず。だが悲しいかな、無粋な宣伝方針のせいで、予告編でもマスコミに提供される紹介文でも、ハジメの不在の理由が配慮なくばらされている。もったいない。
物語の真の重心は美貴であり、良くも悪くも家族と周囲に強い影響を及ぼす“天真爛漫なファムファタール”を、小松菜奈が唯一無二の存在感で体現。だが重くなり過ぎないよう、家族愛を象徴するサクラを配したことで、家族の試練と再生が穏やかに受け入れられるのだろう。
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レモンブルーさんのコメント
2020年12月19日
そもそも 原作小説のカバー裏表紙に 「ヒーローだった兄ちゃんは20歳と4ヶ月で死んだ」から 始まる小説の内容が紹介されているので…その記述にひかれて読まれた方もいるのではと思いました。なので…映画も当たり前のように予告に兄の死を明かしたのだと思いましたが、私も 出来たら 映画では内緒?で良かったんでは?という気がします。