「【”深く愛し合った男女が作り上げた家族は、簡単には壊れない。時に深い喪失感を経験し、時に詰り合っても・・。そしてサクラは彼らを鼓舞するように尾を激しく振る”随所に心に響くシーンが散りばめられた作品。】」さくら NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”深く愛し合った男女が作り上げた家族は、簡単には壊れない。時に深い喪失感を経験し、時に詰り合っても・・。そしてサクラは彼らを鼓舞するように尾を激しく振る”随所に心に響くシーンが散りばめられた作品。】
ー鑑賞前、キャストを見て、”え、吉沢亮さんが、お兄ちゃんを演じるのか・・、あんなに端正な顔なのに・・”と思ってしまった自分を、鑑賞後激しく恥じた。
それは、
・一の葬式のシーンで映し出された”微笑む遺影”と事故後の顔の対比が、妹美貴(小松菜奈:この不世出の女優さんは、どこまで演技の凄みを持っているのか・・。凄すぎます・・。)の余りの哀しみのために、”狂気に陥る寸前”まで行ってしまうシーンに戦慄を伴う凄みを与えた事と、
・場内から漏れた”綺麗だったのに・・”という中年女性の呟きを耳にした薫(北村匠海)のモノローグ ー僕は初めて人を殺したいと思った・・-
に、深い兄弟愛を感じたからであり、それ故に場内からの”呟き”と同じ事を考えてしまった自分自身に対する浅はかさに気付いたからである。
そして、吉沢亮さんの役者としての”気骨・気概”に心打たれたからでもある。”あの顔で役を演じるのは相当な勇気が必要であると思ったから・・。”-
■印象的なシーンは数々あれど
1.子供たちが幼かった頃、夜、両親(永瀬正敏・寺島しのぶ)の夜の営みの際の、母の嬌声を聞いた美貴が、翌朝の家族そろっての朝食の場で
”ママ、昨日の夜、猫のような声を出していたけれど、何をやっていたの?”
と無垢な声で、聞くシーン。固まる、一と薫。
だが、母は優しい顔で、夫と性交する理由を子供たちに分かりやすく話をする。
- 夫もその話を止めず、下を向き黙々と朝食を摂っている。この夫婦が如何に深く愛し合っているかが良く分かるし、子供たちも”家族”とはどのようにして出来るのかをうっすらと理解する・・。良いシーンであると思う。-
2.子供たちが、思春期に入るにつれ、長兄の一は皆の憧れの存在になって行く。その中には妹、美貴も含まれている。
ー 所謂、”禁断の恋”に近いのかな・・。一が初めて、家にガールフレンドを連れてくるシーンでの家族たちの事前準備の姿が面白い。だが、後半美貴の行いの切っ掛けにもなるシーンでもある。ー
3.一が事故に遭い、”あの身体と顔”で、病院で家族と会うシーン
- 美貴の”敢えて、明るい態度を振舞っている” のか ”これで、あの九州に行っても兄と文通を続け、将来は結婚の約束までしているガールフレンドから相手にされなくなる・・という真の喜びなのか・・”
私は、後者であると思った・・。
少し、怖いが小松さんが演じると ”ありかもな・・” と思ってしまう。-
4.一の”ギブアップ”のシーン・・。
- 桜の木の下で・・、サクラを連れて・・。 -
5.久しぶりに揃った5人の家族(もちろん、サクラを入れてである。)の大晦日の夕食時に起こった出来事。
そして、元運送会社で、トラック運送ルート管理をしていた父の”久しぶりに見せる”格好良い姿。
- 緊迫感溢れる中の、サクラのあのオチ。少し、脱力するが、久々に笑いに包まれる長谷川家の人々。そして、新年の朝陽がゆっくりと上っていく・・。 -
◆物語中、二男の薫を演じた北村匠海さんのモノローグ風に家族を語るスタイルも良い。
<お互いに愛し合って来た家族は、そんなに簡単には、壊れない・・。
長兄の一と長女の美貴はそれぞれ、人生の大きな”決断”を自ら下した。
二男の薫は、東京の大学に進学し、どのような決断をしていくのだろうか・・。
一度は壊れかけた家族を、幼犬から育てられたサクラが、もう一度結び付けたラストも、この家族の再生を感じさせており、派手さはないが、”良いなあ”と思った作品である。>
NOBUさん 大変 遅くなりましたが、コメントへの返事?をレモンブルーのレビューの方に書かせていただきました。
ひとつ原作を読んで 気になった点があり、質問させていただきます。NOBUさんは 葬式のシーンで「綺麗な子だったのに…」というハジメにかけられた言葉だと解釈されてましたが、私は映画を見た時「綺麗な子ね」と美貴を見た葬列者が言ったと思いました。それで原作を読みましたら、「綺麗な子」としか表現されてなかったし…葬列者は美貴をギクリとした目で見た…という記述もありました。これは映画と小説では「綺麗な子」の対象が違うのでしょうか?私はNOBUさんの解釈の方が 薫の怒りの動機が共感できるのですが…
NOBUさん 初めまして?ですね。私のレビューにコメントありがとうございます!私も 数日前からNOBUさんのレビューにコメントしたいとずっと思っていました。私のレビューの方への返事はそちらにさせていただきます。
私は昨年「キングダム」を観て以来、吉沢亮という役者に強烈に惹かれております!それで この1年半でいろいろと吉沢亮さんを知ろうと過去作から 知ることが出来る限りのものを見たり読んだりしたのですが、吉沢さんは、凄く演じる事を楽しんでいらっしゃるし、かなりの努力家であると思います。そんな吉沢さんなので、一の役の事故後の姿になる事は(見た目上)全く 抵抗が無かったに違いない!と思ってます。メイクは時間かかるし面倒と思ったかも知れません(笑)が。役柄を演じるのが役者だという事で
まさしく気概と気骨に溢れた役者なのです。
今月末に公開になる『AWAKE』という作品は山田篤宏さんの初監督&脚本の作品で 公開劇場も30舘ほどしかないのですが、この映画は吉沢さんが脚本を非常に気に入り、主演を引き受けたそうです。