「今こそ笑おう」ビーチ・バム まじめに不真面目 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
今こそ笑おう
残酷でひどい現実にいて、楽しい時間を過ごすことによって抗議する。『スプリング・ブレイカーズ』の精神的な続編のよう。今回は歪んだ形ではなく真っ直ぐな印象。”Fun is the gun”。それが原動力、とムーンドッグは言う。
煙、ビーチ、海と溶け合う太陽、カラフルな光線、バラード。ひとつのシーンでそれらのショットがリズミカルに切り替わり、まるで夢を見ているような感覚になる。
そこで、はたと気付かされた。全編に渡り、余計な効果音がほとんど入っていないのだ。どうりで言葉と音楽がクリアに際立つわけだ。そう言えば夢の中で、小さな音って聞こえない。
衣装、撮影、音楽、美術…。天才のもとに一流のスタッフが勢揃いしたのでしょう。
映画作りというかなりしんどい作業に耐えるには、イカれた頭と、美しさを見つける精巧なセンサーが必要。この作品には最高に精密なセンサーを感じた。
「ポンヌフの恋人」以来の花火が、過去とカネを破壊して喜劇は幕を下ろした。
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