9人の翻訳家 囚われたベストセラーのレビュー・感想・評価
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出版のおじさんやり過ぎ
出版のおじさんはたかが出版で人殺しすぎ。
ハリー・ポッターくらいのヒット作を思えばそれくらいやる価値はあるのか。
あと、電車通勤もしないでしょう。
捕まった理由も省略されてたし、
おじさんの嵌め方もなんかいまいちだった。
「タイピスト!」つながりで観てしまうと…
作家の想いという執念
この作品
小説というのが題材ということもあり、非常に複雑かつミステリアスだ。
どうでもいいが、この作品を見る前にクソ暑い中、庭の草むしりを1時間以上していたので、途中で寝てしまった。
頭の中の整理が必要になり、まずあらすじというのか顛末から整理したい。
時系列で整理する。
この物語は、アレックスが書いた小説『デュダリス』を、古本屋のジョルジュがその才能を見抜き、出版を提案するところから始まる。
しかしアレックスは、「自分の名前ではなく、ジョルジュの作品としてなら出版してもいい」と言い出す。
こうして、オスカル・ブラックというペンネームのもと、ジョルジュが著者ということにして出版されることになった。
その後、アングストローム社のエリックが版権を獲得し第1作が刊行されるが、内容は大幅に書き換えられており、アレックスの意図とはかけ離れたものになっていた。
それでも第2作は大ヒットし、シリーズは大成功を収める。
そして第3作の世界同時発売が決定。
ここでアレックスは翻訳家の一人としてチームに紛れ込む。
これが、エリックに対する復讐劇の始まりでありこの物語の主軸となっている。
物語の冒頭に描かれる火災は、エリックが「価値観の違い」を理由にジョルジュを殺害し、証拠隠滅のために火を放った事件。
この価値観の違いこそ、第3部を発表するしないの意見の相違。
アレックスはこの事実を利用し、巧妙な罠を仕掛ける。
彼は8000万ユーロをエリックの口座から奪い、さらにその金を再びエリックの口座に戻すことで、すべての罪をエリックに着せることに成功する。
これがこの物語の顛末
さて、
この作品に描かれてないこと。
それこそが「デュダリス」という名の小説の内容
このデュタリスの内容そのものの解釈が群像となっていて、人のものの見方の違いとなっている点が面白い。
翻訳家たちが考えたこの小説
・カテリーナ(ロシア語翻訳者)
『デダリュス』のヒロイン「レベッカ」に心酔しており、コスプレまでして翻訳作業に臨むほど彼女にとっては単なる仕事ではなく、物語の世界に没入するほどの魅力があったことがわかる。
・ダリオ(イタリア語翻訳者)
「オスカル・ブラックに会いたい」と語っており、物語の背後にある作者の存在に強い関心を持っていた。
つまり、作品そのものだけでなく、その創作者にも魅力を感じていたと思う。
・コンスタンティノス(ギリシャ語翻訳者)
「金のため」と割り切っているような発言をしており、物語への情熱よりも仕事としての側面を重視していた人物。
そして、
・アレックス(英語翻訳者)
最年少でありながら、翻訳作業初日から昼寝をするなど余裕のある態度を見せていた。
彼こそが原作者であり、他の翻訳家たちとは異なる視点で物語を見ていたことが後に明かされる。
アレックスは物語を単なるミステリーとしてではなく、「喪失と後悔の物語」として捉えていいた。
彼はロシア語翻訳者のカテリーナと同じく、物語のヒロイン「レベッカ」に強く共感しており、彼女の苦しみや孤独を通して、物語の本質を理解しようとしていた。
これは、アレックス自身が経験した「創作の裏切り」や「ジョルジュの死」という喪失と重なっており、彼にとって『デダリュス』は自分の内面を投影した作品でもあったはずだ。
アレックスは、エリックによって歪められた『デダリュス』の出版に対して強い怒りを抱いており、物語の本来の意味を取り戻すために、翻訳家として潜入し、復讐劇を仕掛けた。
彼が『デダリュス』で見ていたものは、「真実の物語」であり、それを守る、実行するためにやってきたのだろう。
このデュダリスという言葉を調べると、ギリシャ神話の「ダイダロス(Daedalus)」に由来しているようだ。
その意味は、象徴的であり、迷宮ラビリンスを設計し、イカロスの父としても知られている。
自ら作った迷宮に囚われた後、翼を作って空を飛び脱出するという逸話があり、これらを鑑みると、この物語の顛末そのものと言えるかもしれない。
そして、ローズマリー
彼女はエリックの忠実な秘書であり、編集者の仕事に満足していた、と考えていた。
しかし、アレックスの部屋に侵入してそこで見た写真
この写真にはエリックから怒鳴られている彼女の姿があった。
それはブックフェアの舞台袖での出来事で、ローズマリーにとっては日常的だったかもしれないが、「外から見た自分の姿」を突きつけられたことで、彼女の中で何かが崩れた瞬間だったのだろう。
ローズマリーは「自分がどれだけエリックに支配され、軽んじられてきたか」に気づく。
つまり、写真はアレックスが仕掛けた心理的な罠であり、ローズマリーの心を動かす決定的なトリガーだった。
なかなか凄すぎる。
デュダリスにも、ローズマリーの群像が登場するのだろうか?
この恐ろしい小説は、表面上の人間模様と裏に隠された意図や葛藤や矛盾などが入り混じるのだろう。
第1作で裏切られたのが本筋だったのだろうか?
それに魅了された人々が第2作を求め、修正したにも拘らずまた似たように裏切られる。
そして書き上げた3部作には、悪人エリック ただ一人に犯人が描かれていたのだろう。
そしてそれを演出した人物こそ、作家(ペンネーム)オスカル・ブラック=アレックスであり、デュダリスの主人公なのかもしれない。
なかなか凄い作品だった。
叙述トリックミステリー
トリック・トリック・トリックしているよくできたミステリー。
頭空っぽにして脚本に振り回されるのが良い楽しみ方なのだと個人的に思う。
結末を知って2回目を観ると、デダリュスの信奉者カテリーナ(拝金主義者の対極)に向ける眼差しや、仲間内だけにしている目配せなど、新しく読み取れることがあって面白い。
こっからガチのネタバレなのだけど、これは愛するジョルジュを殺されたアレックスの復讐の物語だと思う。
ずっと「オスカル・ブラックに会わせろ」って言ってたのは、原稿流出を止めるのと引き換えに、エリックの自白を引き出す事が目的だったんだと思う。
自供+奪った8000万ユーロをエリックに入金することで、エリックが金欲しさに自作自演したというストーリーに仕立て上げ、更に3巻すり替えも実際には行っておらず誰も犯罪を犯した者がいない(エリックが訴える相手がいない)という結末にはやるなぁ!と感嘆した。
ストーリーがブレるよりはマシだけど、数人しか背景が描かれてなく、9人いる必要があったのかというのは少し謎。
傑作とはこんな作品の事を云うのかなぁ~???
タイトルなし(ネタバレ)
印象通り、全体像としては終始暗く重めの内容。
中盤で答え合わせをすると見せかけ、終盤にどんでん返し。
途中、『オリエント急行の殺人』みたいなオチか?と思ったが違った。しかしそのタイトルが出てきて驚いた。
個人的にユージュアルサスペクツを沸騰とする様な最後のイメージだ。
中盤以降少しづつだが面白くなってきたが、前半は気持ちが盛り上がらなかった。
構成は良い、設定は面白い、展開は読める
なんとなく『ユージュアル・サスペクツ』を彷彿とさせられる。
閉鎖環境 => (あー殺人事件起きそうだな) =>2ヶ月後の刑務所
という極めてテンポの良い時系列シャッフルが良い
この先どうなるのか、という好奇心を刺激させられる
この手の作品は大どんでん返しをするもの
というメタ読み的な視点で視聴していたがまぁその通りで
途中から答え合わせを楽しんだ。
"実は逆"、"実は最初"から、という2点で正解したので
この作品のどんでん返し部分は正解した。
そのくらいわかりやすい
物語の構成は良かったのだが、なぜせっかくの閉鎖環境を生かせなかったのか
『十二人の怒れる男』のように密室を舞台に展開すればなお良かったと感じる
また、一人一人の人物の掘り下げも足りないように思える。
9人居るが、3人とその他くらいの印象しかない。
翻訳家を監禁して出版する。という設定が面白いがそれだけかな
最後の、翻訳家という設定を活かした展開も取ってつけたように感じてしまう。
地下室監禁はいいのだが、似たような設定で『ベター・コール・ソウル』の地下室工事のために監禁される展開が鮮烈過ぎて、多少流血があった程度では刺激的には感じない。
うーん
色んな展開あり
見終わった感想「勝手なやつ」
何度も展開が変わりスピード感も増し、飽きないように工夫はされているけど、本の作者がこんな奴で最後はムカついて終わった。人が死んだのもこいつのせいでしょう。本屋のおじいさんには純粋で可愛い文学青年と思われていたかも知れないけどすごく性格悪い。
(山分けするかどうかは知らないけど結局大金せしめたわけだし)
ラングドンシリーズも、隔離されていた時は銃で脅されていたの?
お金にどん欲になるのは悪いこと?
お金にどん欲になるのは悪いこと?
芸術作品を作品を金儲けの道具に使うな、これがこの映画のテーマなんだろうけどピンと来なかった。「自分の作品を金儲けに使うな」と怒るアレックスの気持ちが分からない。むしろお金に正直なエリックに感情移入できた。好きなことして、それが誰かに心を動かして、お金をいただく、幸せなことだと思う。
展開は想像と違ったけど面白い
話の流れが想像してたのと違った。最後の最後まで9人の中から犯人を予想しながら見るものと思っていたら、早い段階で犯人が判明したので驚いた。序盤は動きも少ないし、本の引用ばかりするインテリ集団に頭が疲れる。しかし、アレックスの企みが露見し、エリックが彼らを追い詰める辺りから急速に面白くなり始めた。
刑務所にて、アレックスがエリックに「自分が著者だ」告げるシーンは予想できなかったのでゾクゾクした。アレックスがやたら「著者に会わせろ」って言ってたのは、エリックがジョージズを殺害したと知ってたからなんだね。
最後の子供時代のアレックと書店経営者のジョージズが抱き合うカットが心に残る。あの一瞬の絵だけで、アレックスのジョージズに対する想いと、怒り、悲しみが伝わってくる。バリバリのミステリーというより、静かな復讐劇と楽しめた。思ってたのと違ったが、良い意味で裏切られたので満足だ。
美女のパンツは
純白デカパンツでした。Ooh…となりました。
フランス発の中盤まではソリッドシチュエーション的スリラー。
世界的ヒットをしているスリラー小説の完結編、世界同時発売をもくろむ出版社のオーナーエリックは、過去作の売り上げが高かった9カ国の翻訳家と契約し、翻訳作業を2か月で終わらせて世界同時発売をすることを発表する。
ただし、スリラー小説という素性から発売前にストーリーが少しでも流出したり海賊版に先んじて発行されないよう、9人の翻訳家を地下室に閉じ込めて徹底的に管理する。
スマホはもちろん電話など外部との接触手段は全て隔離施設に入る前に没収。
9人の翻訳家は、地下施設に軟禁されつつ各国の翻訳作業に没頭する。
ところが、出版社オーナーのエリックのもとに、作品の冒頭をネットで流出させるとの脅しのメールが届く。
背景として、ダビンチコードの原作者の作品が本当に出版前に隔離部屋で翻訳されて出版されたことがあったらしく、それに着想を得た作品とのこと。翻訳業って本当にお金にならないし自分の名前が表に出ることもないし、過酷なお仕事だなあと日本の翻訳業の方のインタビューを見て感じていたけど、どうやら世界共通らしく、各国の翻訳家さん達も鬱屈したものを皆さんお持ちのようで。
作品が流出する経路として一番疑わしいのがこの翻訳家経由であるため、出版社側は血眼になってそれぞれの個室や持っている荷物から証拠を見つけようとする。その手口は人権無視、しまいにはある女性翻訳家さんの荷物から光り輝くバイb…いろいろ出てくるが証拠らしいものはない。
どの翻訳家もほんのり怪しい。翻訳家の中に犯人はいるのか?その目的は?というところがもちろん見どころ。
途中で挿入される鑑別所?刑務所?の接見シーンや、さまざまな出来事の時系列が前後しながらストーリーが進んでいくため、今時系列のどこにいるのか、この出来事は前の出来事の前か後か、そのあたりがなかなか掴みづらい。そこがもう少しスッキリできていたら、物語への没入感も上がったように思う。
翻訳家さんたちのキャラはそれぞれ個性的だし、翻訳している作品のヒロインに見た目からなりきろうとする美女翻訳家のカテリーナさんはいかにも東欧系美女、だけにデカパン残念。中国人の爽やかマッチョ チェンさんはいい人ポジション。デンマーク語の翻訳家の肝っ玉母さんエレーナさんは色々複雑すぎる事情でちょっと気の毒ポジション。
そして、翻訳家さんではないけど私の一推しローズマリーちゃん。エリックの助手なんだけどいかにも都会的なフランス美女で、お手本のようなオシャレなショートカット。ちょっと薄幸ポジションかと思わせて…。
真相もそれに向かっていくどんでん返しもなかなか凝っていて面白かった。それだけに時系列の整理をもう少ししてくれれば。そうしたら快作になったに違いない。
作品星三つ、ローズマリーちゃんでプラス0.5
犯人の本末転倒な動機や傲慢さに感情移入できなかった
他の方の指摘にもありますが、私も冒頭のシーンは火事だけではなく、点と点を繋げる「伏線」として殺人事件を描いておくべきだったと思います。真相にカタルシスが感じられないのは、伏線が機能していないからではないでしょうか?そもそも犯人の動機に連なる「文学に対する敬意」が出版社に足りないとしても、「商業主義に塗れるよりも売れない方がマシだ」なんて言う、青臭い考えには感情移入できませんでした。
あの社長にしても翻訳家を監禁しているとは言え、単に原稿の発売前の流出を恐れての事ですし、本当に死ぬまで働かせていたり、報酬を払わない訳ではないんですし、本人たちも同意の下です。何より社長の販売戦略によって世界的な大ベストセラーにしたのですから、いきなり作家(ジジイ)に「文学に敬意の無いお前の会社とはバイバイ」なんて言われたら、そりゃキレるでしょ(笑)。そんなに金儲けしたくなかったのなら、最初から無料公開にしとけよって話ですよ。二冊も出しといて今さら?矛盾してますよね。一冊目がヒットした地点で契約終了を宣告していればまだしも、三作目が大々的に宣伝されてから言うなんてそりゃ非常識すぎるでしょ。下手したら契約不履行か何かで逆に訴えられたり、ファンの期待を裏切ったりで、批判するつもりが逆に作家の傲慢さを批判されたりして、作品自体の評価を落としかねない。そんな事になったらそれこそ本末転倒では?
そもそも主人公が偏屈で融通が利かないから起こった悲劇であり、大好きなジイさんが殺されたのも、ある意味、自業自得。今まで通りにやってたら誰ひとり不幸にならなかったのにと思うと、やはりラストも「半分以上はお前の自己中心的な傲慢さのせいだぞ」と思えて釈然としませんでしたね。
本で読んでみたい
映像だとついていけないので、小説で読みたい作品。目まぐるしくてよく分からなかった…ギリシャ翻訳家とイタリア翻訳家はあまり役割がなかったような?? ドイツの翻訳家がそこそこの年齢のはずが可愛かった。デンマーク翻訳家の「夫のために産んだけど、子供は欲しくなかった。小説家という夢の為に頑張りたかった。」と泣くシーンが印象的だった。
高評価のワケアリ
似たような映画はたくさん見てきた。
なのになぜこの映画だけが特別に評価され、愛されるのか考えてみた。
構造的には、この映画は明らかにミステリー映画の分類に入るであろう。つまり、殺人などの犯罪行為ののちに、探偵が現れ、犯人が見つかるというものだ。
だが、その定義に当てはまらない要素がいくつかある。
まずは、犯罪行為そのものがないこと。
厳密には、殺人行為があるし、機密事項の漏洩がある。特定の立場の人にとっては、莫大な損失を被る犯罪行為であるし、撮り方によっては、犯罪を軸に話を進めていくことが出来るはずだ。
しかし、そうはなっていない。
あたかも、何か壮大なプロジェクトが進行しているかのような日常を描き、そのために集められたチームが立ち上がり、一見して順調に進んでいるかのように映る。
ところが、すぐに問題が発生し、その「犯人探し」が始まる。事態を収拾するための身代金が要求され、強硬な態度で突っぱねる。すると事態はさらなる悪化をたどる。
つまり、表向きはそのプロジェクトの進行と、謎の妨害者の、地味な攻防戦を描いたストーリーになっている。
一見してメンバーの中の誰が裏切り者なのかを突き止めていくミステリーなのだと思った。しかし、それもあっさりと覆される。
きっとこの人が探偵役なのだろうと思ったプロジェクトのリーダーが実は犯罪者だった。なぜか囚われの身であり、今まで何らかの悪事の主犯格だと思っていた若者がそれを追及する側だったという主客転倒が起きる。
鮮やかに。
これが最初のツイストだとするなら、この映画では3回も4回もツイストが仕掛けられている。きっとこの鮮やかなツイストこそが、この映画の高評価の秘密なのではないだろうか。
普通はそんなツイストを仕掛ければ仕掛けるほど、映画としては破綻していく。
その時は「あっ!」と、驚かされても、あとになって「いや、やっぱりなんかおかしくないか?」と思い直すことが多いのだ。
この映画にもちょっと苦しい言い訳がいくつか出てくる。
「いや、そのカードを切るんだったら、あそこの展開まるまる要らなかったじゃん」というような言い訳だ。
ネタバレなので書けないが、地味なスト―リーに少しでも派手で、観客をハラハラさせる冒険の要素が欲しかったのだろう。その違和感がぬぐえないまま、映画が終わってしまった。
よく出来た映画だとは思う。でも、世間的な高評価ほど、いい映画とは思えなかった。
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