ロケットマン : 特集
何度も見たい、毎日だって見たい 全身の細胞で感じるミュージカル映画の誕生
張り裂けそうな音圧、魂の歌声… 多幸感に身を焦がす珠玉の体験
大人の映画ファンが浸って酔いしれる“夏休み映画”が、ようやくやってきた
映画「ロケットマン」の音楽を浴びると、全身の細胞が歓喜に沸く――。グラミー賞を5度も受賞した世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの人生をミュージカル映画化した同作が、8月23日から全国公開を迎える。メガホンをとったのは、「ボヘミアン・ラプソディ」(以下「ボラプ」)で知られるデクスター・フレッチャー監督。張り裂けそうな音圧が劇場を揺らし、魂の歌声が体と髪と服をビリビリと震わせる。華麗なダンスと愛を貫く豊かなドラマは、網膜に焼きついて何日も離れない。何度も見たい。毎日だって見たい。そんな多幸感に身を焦がす映像を、あなたは目撃することになる。
「ボラプ」手がけた監督が、今度は“ミュージカル映画”で日本を沸かす!
アメリカではリピーター続出── 全身の細胞に、多幸感が駆け巡る!
言うまでもなく、米アカデミー賞4冠に輝いた「ボラプ」は、世界中を感動の渦に包んだ “音楽映画の傑作”だ。そんな作品の最終監督を担ったフレッチャー監督が、今度は“ミュージカル”が全面を彩る「ロケットマン」で、日本のファンの心をわし掴みにする。
・開始5分でフルスロットル! 傑作ミュージカルに劣らない、歌とダンスの多幸感物語は、世界的成功を収めたエルトンが、セラピーで少年時代を振り返る様子から始まる。モノトーンと原色のコントラストが映える1950年代を舞台に、歌詞が刺激的なミディアムテンポの楽曲「あばずれさんのお帰り」が鳴り響き、勢いよくミュージカルシーンが始まる。開始からここまでわずか5分、映画はフルスロットルで走り出す。この大胆なオープニングから、観客は一息に、映画の世界に自身の精神を旅立たせることになる。
全編を盛り上げる歌とダンスは、「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」など、傑作ミュージカルに比肩する幸福をもたらしていく。これまで「ミュージカルは耳を楽しませるものだ」と思っていたが、その認識がガラリと覆された。本作の“圧力”は鼓膜だけでなく全身を震わせ、脳に鮮烈な信号を届け、細胞のひとつひとつを歓喜させる。ミュージカルとは、全身の細胞で“感じる”もの。観客は多幸感に肩まで浸かりながら、劇場をあとにできるはずだ。
・知らなくたって感動できる、全22の名曲が物語を彩る
エルトンの22の名曲が物語を彩るが、もちろん本作は、楽曲を知らなくとも楽しむことができる。世界中を虜にした楽曲なだけに、非常に耳に残るので、鑑賞後には自然とメロディを口ずさめる。「知らない曲である」ことが、感動を削ぐことは一切ない。さらに、楽曲は主人公の心情と共鳴するように奏でられる。スクリーンで起こる出来事と、浮かび上がる歌詞を噛みしめれば、より強い情動が胸に溢れ出してくる。
・「ボヘミアン・ラプソディ」の“21分間”に匹敵する、珠玉の映画体験が待っている
本作は、音楽映画である「ボラプ」とはジャンルを異にする“ミュージカル映画”だ。しかし種類は違えど、あの“奇跡の21分間”に匹敵する珠玉の映画体験が、要所要所で盛り込まれている。高度な音響設備を有する劇場であればあるほど、その体験は素晴らしいものとなるだろう。またアメリカでは、本作は公開から6週間を経ても、全米興行収入ランキングのトップ10入りを果たしていた。つまり「リピーターが続出していた」という事実であり、このことは“何度も見たくなる魅力”を雄弁に語っている。
“ファミリー向け超大作”に飽きた“大人の映画ファン”のための夏休み映画──
魂捧げた出演陣、情緒たっぷりな脚本、一流の製作陣…人生に訴えかける物語
夏休みは家族連れや学生向けの“超大作”が多く公開されるが、本格派の作品を求めるため「この時期はあまり映画館に行かなくなる」という映画ファンもいるだろう。「ロケットマン」は、そんな「ファミリー向け大作に物足りない人々」も満足させる、重厚な作品と言える。
・主演は「キングスマン」タロン・エガートン 吹き替えなし、衝撃の美声で歌って踊る ・脚本は少年の成長を情緒的に描く「リトル・ダンサー」のリー・ホール ・製作には世界的人気作「キングスマン」の超一流クリエイターが結集 ・製作総指揮にはエルトン・ジョン本人 自身の人生を最もクレイジーに映像化「キングスマン」の主人公役で脚光を浴びたタロン・エガートンだが、長編アニメ「SING シング」の劇中で披露した歌唱力が記憶に新しい(同作ではエルトンの「アイム・スティル・スタンディング」を歌っていた)。本作でも衝撃的な歌声を響かせており、数々の名曲を完璧に歌い上げている。製作総指揮にはエルトン本人が加わり、自身の人生を最もストレートに、最もクレイジーに映像化するため指針を示した。製作陣には「キングスマン」のマシュー・ボーンらが名を連ねたほか、脚本のリー・ホールら各セクションに一流の面々が集結し、“人生に訴えかける物語”を創出していった。
鑑賞後、私たちは何を感じるのだろう?愛を求めた少年の“人生”を辿れば、
本当のあなたの人生に“出会える”――
この物語のテーマをあえて一言で表すならば、それは“愛”だ。厳格な父とややエキセントリックな母に育てられたエルトン。愛を求めて生き、失うたびにその魂は切り傷に覆われていった。「抱きしめて」とせがむと、父は「甘ったれるな」と叱責した。母は新しくできた恋人との情事に夢中のようだ。世界から置き去りにされたとき、少年は階段に腰掛け、「愛が欲しい」と切実に歌うのである。その模様は、映画の重要なターニングポイントと言える。
少年はやがて大人になり、はからずも急激な世界的成功を収めていく。ステージでその歌声を響かせれば、数万の観客が狂ったように歓声を上げた。誰もがうらやむ富と名声を手に入れ、常に人々に囲まれていながら、常にエルトンは孤独を持て余していた。ただ、一欠片でもいいと欲した愛は、掴もうとすればするほど、砂が指の隙間からこぼれ落ちていくように彼の元から去っていった。
愛はどんな形をしていて、その在り処はどこなのだろう。本作の主人公は、そんな問いを絶えず自身と観客に投げかけていく。エンディングでは、「(アイム・ゴナ)ラヴ・ミー・アゲイン」という楽曲が感動的に挿入される。エルトンが盟友バーニー・トーピンと本作のために書き下ろし、エガートンとともにデュエットした新曲だ。いつだって成功に戸惑い、身を引き裂かれていたエルトンは、自身を愛し“求めたもの”を手にできるのだろうか。本作を未鑑賞の人は、是非その過程をお楽しみに。鑑賞済みの人は、その胸に灯る“思い”を、どうか抱きしめてあげて欲しい。きっと、それが本当の“あなた”なのだから。