「新しいことに挑戦して失敗した作品」チャイルド・プレイ SIGさんの映画レビュー(感想・評価)
新しいことに挑戦して失敗した作品
一言で言うと「意気込みは買うが、退屈だった」映画。
最近実現化し始めたAI産業をアイデアに取り入れた新しいタイプのホラー映画だったが、寧ろ一周回って「アイロボット」とかのSF古典まで先祖返りしてしまった作品。
所謂AIによる暴走をサスペンス調で料理したのがアイロボットで、ホラー調にしたのがこの映画。
ホラーではなくSF枠なら、他に似たような作品はたくさんある筈。
そこまでは良いのだが、監督やスタッフがホラー畑の人なせいなのかSF描写が素人同然でかなり安直すぎた。
具体的に言うと、チップの安全項目を削除したぐらいであそこまで暴走させるのは説得力に欠ける。
それと、チャッキーが絶望的に不細工なのも問題。
不気味な老け顔でおっさん声なせいか、殺戮をしてもさもありなんてな感じであまり恐怖心を刺激しなかった。ここはやはり可愛らしい人形が可愛らしい声で血にまみれた方が、ギャップとなって怖かったかと思う。
物語としては、「孤独な少年とサイコパス人形との友情と狂気」が主題でその部分は力を入れて描写していたようだが、それ以外の部分は雑で描写不足だった。
初っぱな原因になった作業員の行動も逆恨みで共感しないし、たかが家電人形が狡知に長けて人を策に嵌めたり車や店のシステムを簡単に乗っ取るのも変。それに何より、非力でのろまな筈の人形に殺しをさせるから、殺され方に無理が出てコントみたいになってる。
それでいてホラー映画特有の登場人物が偶然やる迂闊な行動はしっかり描写してるから、よりコント感が増してスリル感が台無し。
終盤急に自己主張を始めた友人達の活躍も中途半端で残念だった。
素人がプロの仕事に口を出すのは烏滸がましいのは承知で言うが、SFテイストを混ぜるなら前半は正常で愛らしいチャッキーとの純度99%の友情物語でホッコリさせた方が良かった。裏で残り1%の異常を多少の専門性を持った台詞で臭わせてから、後半徐々に狂わせていく方がギャップがあってより怖かったかと思う。