ワイルドライフのレビュー・感想・評価
全50件中、21~40件目を表示
どうしたポール・ダノ?むちゃくちゃ良いやん!
ちょっとビックリ。だって、むちゃくちゃ良かったから!スイス・アーミーマンの印象が、強烈な残像となってしまってるポール・ダノの初メガホンだそうです。もう、あのビジュアルは忘れます。いや、やっぱり無理かw
一人息子。父の不在。女と化してしまう母親。壊れかける母子の絆。と、ここまでのプロットは今年6月に全国公開されたポーランド映画「メモリーズ・オブ・サマー」と同じ。ポーランド人は、そのまま母子の絆を壊して息子が精神的に親離れするところまでで終わりました。こちらは、その後までしっかりと見届けます。と言うか、そっからが本番。
久しぶりに見たキャリー・マリガン。少し老け目だけど、相変わらずの「男殺し感」。キュート。ギレンホールは2週間振り。この二人の役者振りに救われているってのは、あると思う。というより、二人の演技を強調する演出。カメラを向けて、そこで顔芸芝居。しかも結構の長尺あり。二人の演技は、見応えあったです。が、ポール・ダノの嫁はゾーイ・カザンでしょ?いや、実はマリガンより、この役にはまりそうに思うんだけど、ってのは言いっこなし?
いずれにしても、これが「アメリカ映画」だってのには、焦る。ポール・ダノはNY生まれの子役上がりだそうです。旧い日本映画、イタリア・フランス映画、見まくってるでしょ。タイム感がアメリカ映画には無い感じ。そもそも、米国脚本で、これほどに「派手なイベントも事故も事件も起きない物語」は嫌われる。というか、嫌われてきた。多少、風向きが変わっていることを感じさせる映画は、ボチボチあったけど、これもその中の一品。個人的には、かなり好きです。
繰り返すけど、アメリカ人にこんな映画撮られた日には、日本人はどうすれば良いのかと。ラストカットと幕切れの瞬間から、ジワジワと胸に滲みて来る温かさを噛みしめながら、「メディアが狂わせた価値の評価軸の是正」が、一向に進まない日本映画界の将来に不安も覚えるのでした。
ちなみに「野生生物」と言うタイトルが意味深。息子のジョーから見た母親の事ですよね。あの夜、野生生物に見えたのか。少年は荒野に立って前を向く。と言うか、家族は、まずは「自分の足で立ってみた。歩いてみた」。この後、家族の絆がどうなるかは、誰にも分らないけど、この写真は、僕の家族が、ちゃんと自分の足で立って生きていることを記念したもの。それが、僕の家族の門出。
写真館で「記念撮影」に立ち会い、多くの家族の、夫婦の、友人達の絆を、門出、生きている記録をフィルムに収めて来たジョーは、胸を張って誇らしくシャッターを切りました。
良かった。とっても。
と言うか、ポール・ダノ、あなたヤバいヤツだったんですね。次作も期待してますから!
ジェイク・ギレンホール目当てで観ました
2019年ベストムービー!⭐️✨
素晴らしすぎる"家族崩壊"の物語。
息子ジョーを演じる少年の、心の揺れや悲しみが繊細に描かれていて、静かなカメラワークながら感動的でした。
そして、ラストシーン…鳥肌でした!(笑)
カメラをみつめる3人の目線や、その目の表情が!
今年、1、2の映画作品…名作です。
*息子ジョーを演じたエド・オクセンボールドが、名演でした。
14歳の多感な少年の目線で描かれた作品
好きな映画
ポール・ダノの秀逸な脚本とキャリー・マリガンの演技に魅了される。
切ない映画である。父、ジェリーがゴルフコーチの職を失った事がきっかけで家族の絆に不協和音が生じる過程が観ていて辛い。
その状況を見守るしか術のない息子、ジョンの悲しげな眼差しも辛い。(この少年、ポール・ダノに似ていると思ったのは私だけかな?)
しかし、ポール・ダノ監督はストーリーの中に幾つかの伏線を忍ばせ、この家族の未来に微かな希望を感じさせる素晴らしいラストシーンに繋げている。
見事である。
パートナーのゾーイ・カザン(「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」での可愛らしい笑顔が印象的な女性だったなあ)の存在も大きかったのではないだろうか。
初監督・脚本作がこのレベル。
ポール・ダノの今後の監督作品が実に楽しみである。
家族が山火事 くすぶった炎は冬の雪がしずめてくれる
子どもが育つ環境は大切。そして子ども自身の資質や力も大切だと思わせてくれる作品でした。
父親は仕事の続かず他罰的、生活よりプライドを守るために低賃金の山火事消火活動へ。
夫がいなくなると途端に、温もりを求めて女になる母親。
これだけ揃えば、非行へ走るのがありがちなストーリーかと思うが、そうならない子どもの強さはどこから来たのだろう?という疑問が出てきます。
今までの生活は、台詞の断片から推測すると、父親は仕事をよく変えているけれど、全く無職にはならない程度には安定しているし、子どもへの愛情もある。母親は父親が無職の期間には支えてきたのでしょう、近くにいる限り。自分で働く力もあり、短期間であれば大丈夫。
そうやって多少の綱渡りはありながらも、基本的な信頼感は育まれてきた子だったのだと思えます。だからこそ、ラグビーは苦手だし友人ができないことも親に言えたんでしょうね。知的能力は勉強を見てもらっていればかなり優秀なようです。
この家族の悲劇は、親は二人で1.5人分の働きはできるけれど、1人になるとどうしても1に満たない決定的な弱さがあり、それが離ればなれになることで露見したんじゃないかと感じます。
タイトルなし(ネタバレ)
14歳の主人公とその両親。
仲睦まじいなぁ、と思ってたが父の失業から少しずつ綻びが…
大人になれない父、そんな夫が信じられず精神的に弱り、壊れていく妻。
そんな母の姿を見せられた息子も父が戻れば大丈夫、と思ってたはず…しかし、1度壊れたモノはそんな簡単には戻せない。
あのラストシーンに希望をもっていいのか?
ポール・ダノは初監督とはおもえない素晴らしい作品を作り上げました。
壊れてしまった家族三人のポートレート
時代背景が重要な映画
個性派俳優ポール・ダノの初監督作品。原作は、ピュリッツァー賞作家リチャード・フォードの同名小説。ダノとともに共同脚本を務めたゾーイ・カザンは彼のパートナーで、『エデンの東』などの名匠エリア・カザンを祖父に持つという。
1960年代はじめ、14歳のジョー(エド・オクセンボールド)はカナダに近い米国中北部モンタナ州の小さな町に両親とともに越してきた。
父親ジェリー(ジェイク・ギレンホール)は近所のゴルフ場でコーチをし、母親ジャネット(キャリー・マリガン)は専業主婦。
ジョーの成績は優秀であるが、まだクラスに溶け込めず、ひとりでいることも多い。
そんなある日、ジェリーがレッスン相手たちと賭けゴルフをしていたことがバレて、コーチの職を馘になってしまう・・・
というところから始まる映画で、家庭の崩壊劇を少年ジョーの視点から飾ることなく描いていく。
この手の映画は、近頃では珍しい部類にはいるのではなかろうか。
ジェリーはプライドが邪魔して、なかなか定職に就くことができず、代わってジャネットがYMCAでのスイミングスクールのコーチの職に就き、家計を支えるようになる。
なにかしらのもどかしい気持ちを抱えたジョーは、夏になると頻発する山火事の消火隊員に志願して家を出てしまう。
残されたジャネットは、心と肉体の隙間を埋めるかのように、スイミングスクールの生徒で、町で大きな自動車販売店を営む年かさのウォーレン・ミラー(ビル・キャンプ)と不倫関係になってしまう・・・
ま、よくある話といえば、よくある話なのだけれど、60年代はじめという時代設定がかなり重要な位置を占めている。
劇中でジャネットの口から語られるように、ジャネットは現在34歳。
ジェリーとはワシントン州の大学で知り合ったというから、ジェリーも同じような年齢。
ジャネットは20歳でジョーを産んだ計算になるが、そのころがどうだったかと逆算すると、第二次世界大戦・太平洋戦争の終結直後。
そして、ジェリーは先の戦争に参加していないことになる。
この設定が重要で、男らしさ=ファイター(闘う男)という価値観のなか、ジェリーには戦争に参加することができなかったという負い目がある。
このことが、山林火災の消火隊員への志願に繋がっている。
そして、ジャネットがウォーレンに惹かれる理由もわかってくる。
父親ほど年の離れたウォーレンは、先の二度の戦争(つまり第一次大戦も)に参加し、脚を負傷している。
その上、彼の息子は第二次世界大戦で戦死している(彼の家を訪れた際に、息子の軍服姿の写真が飾られていることからわかる)。
ジャネットは、ウォーレンのなかに、戦前の男らしさ(=ファイター)をみている。
ただし、それは幻かもしれないのだが。
と、こんなことを映画は、過多な説明をすることもなく描いていく。
この演出は、凡庸ではできない。
ポール・ダノが優れた監督であることを示している。
さて、少年ジョーは、父親から期待されていたフットボールもやめて、家計を助けるために、アルバイトを行うようになる。
バイト先は、町の写真館。
当時貴重だった写真を撮るのは幸せなとき。
その幸せな思いを忘れないように、と願って写真を撮るのだ、と館主がジョーに告げる。
だから、常に、笑っているように、とも。
なかなか、いい台詞。
ジョーは撮る側(まだ撮影することは許されていないが)にいる。
このポジションも、父や母をみる側、というのに通じている。
さらにまた、演じるエド・オクセンボールドが実にいい。
困惑した表情をしながらも、決して間違った方向にはいかないぞという強い信念。
ポール・ダノ本人のようだ。
また、ジャネットを演じるキャリー・マリガンが素晴らしい。
『わたしを離さないで』の少女が、10年もしないうちに、人生に疲れた中年入口の女性になってしまった。
はじめスクリーンに登場した際には、誰だかわからなかったほど。
少し前だったらミシェル・ウィリアムズあたりがキャスティングされていたような役どころだけれど、より若いのに、より疲れた感じがとてもよく出ていました。
最後になるが、なんやかんやあったのち、少年ジョーが写真館で両親とともに写真を撮るラストも心に沁みました。
ジョーが心のなかで言っている・・・
僕は二人から、人生のすべてを学んだ(謳い文句)。
ま、なんやかんやあって、不良になる暇なんてなかったけどね。
唯一無二の色合いを感じる。
息子の求めていたものは
親である前に人間だった
父親も母親も、親である前にどうしようもなく人間であった、という話。
ポール・ダノの初監督作は、最初はとても平穏な感じの家族で始まる。しかし父親が失業して、その結果様々なほころびが見え歯車が狂い始める。
プライドと承認欲求が高い父親ジェイク・ギレンホールは山火事を消しに家族を置いて去り、しっかりしてそうだった母親キャリー・マリガンがどんどん狂う...というか崩れていく。キャリー・マリガンの壊れっぷりが絶妙で生々しい。最早息子に感情を隠すことができなくなった、抑制の効かない母親。
大変なのは息子である。いつも何か言いたげな目をしながら結局何もかも飲み込む息子。結局、大人になりきれない両親に代わって彼が大人になる。
「僕ら家族はどうなるの?」「分からない」に全てが集約されている。夫婦は所詮他人の同士、結局繋ぎ目を維持し続けなければ簡単にバラバラになるものなのだ。しかし息子には父と母だ。どちらも投げ捨てることができないあの表情と台詞が悲しい。
しかし、ラストが予想外に穏やかというか、未来が仄かに明るく見えて、ああ、こういう落とし所もあるのかと思った。あのまま切断してもよかったけれど、救いはあった。
物語と登場人物の緊迫感、物語に無駄や弛緩がなく、非常に映画的な映画でした。初監督作とは思えぬ出来。
ジェイク・ギレンホールやっぱりヒゲがあるとないとじゃ全然違うな...。
美しく安定した映像と、そのストーリー
ジョーがかわいそう
やるせなさ、それでも皆 前を向く
14歳の僕は、両親との暮らしをそれなりに幸せだと思っていたのに、ちょっとしたことから、父と母がすれ違っていき…という話。
舞台は、1960年、俺が生まれた年のアメリカ。
父のプライドがもう少し低ければ、母がもう少しだけ二人の愛に自信があれば、もう少しだけ景気がよければ、とつい思わせる小さな小さな落とし穴に落ちてしまう家族。
それでもこの映画が好評を博しているのは、それでも前を向いて歩いて行こうというラストシーンのメッセージが伝わってくるからだろう。
「写真はね、幸せな人たちを写すものなんだよ」
いい映画でした。
ただ、心がゆったりとしている日に観ることをお勧めします。焦っている日にはダメだよ。
楽曲を提供しているヨハンヨハンソン(2018年2月没)に捧げられていました。
(博士と彼女のセオリーも彼の曲だったんだ…)
追記
なるほど。ゴルファーを目指している父親が勧めるアメフトの道をやめて、静かに写真館でバイトするというのも、彼が自分を確立していく重要な過程だったのか。
少年が自立を始める物語として秀逸! 一歩一歩、ゆっくり進むのがよい。
全50件中、21~40件目を表示