常人の発想では到底理解できない天野監督作品にハマってしまい、1日で監督作品すべて網羅してしまいました。
天野監督作品を見るうえでまず理解すべきことは、この世の常識やルール、普通こうなったら次はこうなるだろう、といった既成概念が全く通用しないということ。それを理解して楽しむのが天野作品の楽しみ方。
まず冒頭、住宅街で女性が後ろから男に近寄られてナタ包丁でぶっ叩かれる。
後ろから男が足音たてて近づいても全く気づかない女性。後ろからナタ包丁で思いっきりぶん殴られるのになぜか顔面を流れる血。首筋には全く血がついていない。
んで、どうやってか倒れた女性を部屋に連れてくるんだけど、男の服には一切血がついていない。
住宅街で、白昼堂々包丁持った男が女性を襲っても、だ〜れも見てないし通報もされない。
これこれ、これが天野ワールドですよ!
天野作品はポリ袋に入れた死体がよく出てくるけど、これを男も女もヒョイと持ち上げちゃうんだよね。
70kgの男性の死体だったとして片方35kgの死体入りポリ袋を簡単に運んじゃう。
血液だけで5kgぐらいあるらしいから差し引き65kgと考えても軽々持ち上げちゃう。そもそも天野作品の死体はいつまで経っても腐らず新鮮な血が滴ってる。
んでどうやってか知らずかこういうのをどうも白昼堂々運んだりするらしいのよね。
血みどろの人間が歩いてても、サバイバルナイフや包丁持った人間が歩いてても誰も通報しない優しい世界が天野ワールド。
さてオフィスの場面に切り替わり、それなりに広い職場と机の数なのに職員さんはたった6名。ミーティングを始めるも他に誰もいないオフィスで電話が鳴り響きキーボードを叩く音が聞こえ続ける怪現象が...。
主人公の女性、なぜか二日連続同じ服で出社。他の人は着替えてたけど。
この主人公の女性、ベッドで寝る方向が毎回変わるんだよね。
電話の持ち方も変わっちゃう。社会人ならたいてい左耳に当てるんだろうけどこの子は右耳にも当てちゃう。
あと、なぜか山積みにしたマシュマロをご丁寧に一晩中ライトに当てておいて朝になって食べる。カッピカピでっせ。
もう一人の重要人物のストーカー男性。なんかカソリック信徒らしいけどなぜか背中に「onan」の入れ墨が。オナンはイスラエルの血統を残すことを重んじたタマルに反して子を残すのを嫌がったから罰を受けて死んじゃった人だよ。たぶんそんなことは知らず聞きかじった知識と感覚で入れ墨彫っちゃったんだろうね。そもそもカソリック信徒が入れ墨彫るかいな?しかも旧約聖書の人物の名前でっせ。
で、どうもこの男性死体の入った袋を律儀に入れ替えてるのよね。
あとなんか自分で啓示じみたこと語りだして折る刃式の細いカッターナイフで自分のお腹刺すんだけど、わざわざ刃を全部出すのよ。刃を伸ばしたカッターナイフを思いっきり突き刺したらどうなるかわかってる???
このカッターナイフも天野監督のお気に入りらしくよく出てくるんだよねえ。
人肉切り刻んだり自殺に使ったり...。
少しでも料理したことがある人なら、あんなぐわんぐわんに曲がるカッターナイフを肉切る用途に使うなんて発想にはならんと思うけど。
天野監督作品の場合、他人の家にこっそり入るのはとても簡単で、本作でもストーカー男が喫茶店の女の子の家に入って明かりをつけて女の子の帰りを待ったりする。たぶん天野ワールドの住民はみんな鍵をかけないんだと思う。
帰ってきた女の子のは逃げもせずすぐ左には金属バットもあるのになぜかストーカー男の言いなりになって服を脱ぎ始める。
んで帰ってきた彼氏がかなり狭い部屋で片手で金属バットでストーカー男を思いっきり殴りつける。5回も。しかしストーカー男くんはちょっと痛がって少し血を流すくらいで元気。
襲われたら逃げないのも天野ワールドのお約束ですね。
このストーカー男くんが主人公に、自分がストーカーしているところを自分で撮影したBlu-rayを送りつけるんだけど、これがちゃんと画質やアングルにこだわった映像になってる。きっと自分がストーカーしてるところを撮影するためにいいカメラ買って三脚も用意したんだろうね。家帰って編集してBlu-rayなのにビデオ風の砂嵐のトランジション入れてね。健気だわ。しかも宅配業者装ってわざわざ自分で届ける律儀者。
死体埋めるのにちゃんとポリ袋に入れて民家だか集会所の庭にちょっとだけ穴掘って埋めたり、心配になって埋めたときと全く同じ格好で再び訪れたり。
落ち葉に寝っ転がって上を見上げると青々と葉が繁った木がうつったり、仰向けの人間の胸をナイフでぶっ刺したのになぜか顔が血だらけになったりと、もう我々の常識や既成概念を片っ端からぶっ壊してくれます。
しまいにゃ「これからどうすればいい」なんて言いながらすぐ横には蓋の開いたポリタンクが...。
液体がピンク色じゃなかったからたぶん灯油なんだろうけど、灯油の入ったポリタンクの蓋を開けて部屋に置いといたら部屋中臭くてたまらんよ〜。
そして恐らくとんでもない大惨事になるであろう結末へ...。
もう、ブレない天野監督ワールドをお腹いっぱい楽しませてもらいました。
ただ、本作に関してはミステリー部分もなかなか面白くて、常人では思いつかないサイコパスな天野ワールド+ミステリーで、天野監督の4作品中で最も面白かったと思います。
あとさすが天野監督作品、ご自身が作曲されてる音楽が毎度ながらホントきれいです。
あ、でも喫茶店ではなぜか音楽流れてないんだよねえ。