劇場公開日 2019年4月20日

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「私は認めるわけにはいかない。」主戦場 エーゲ海の真珠さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5私は認めるわけにはいかない。

2019年9月15日
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鑑賞方法:映画館

公開からだいぶん経ちますが、いまでも高い総合評価を維持しており、鑑賞者からはとても勉強になったと高く評価する声が多く見受けられる映画です。
楽しまれた皆様には残念かつ申し上げにくいことですが、この映画を勉強に使うのは危険だと私は思います。皆様はあまりにも純粋無垢でいらっしゃり、その点ではインタビューの中で女子学生が「(慰安婦問題を)知らない」と言い放つシーンに通ずる虚無感にさいなまれました。
これだけ連日話題に上っている問題なのに、詳しく知らない人がこんなにも多いとは思ってもみませんでした。それどころか、歴史認識を巡る理論武装のやり方からして知らない人たちがこれほどに多く、そしてそんな皆様をこの映画はことごとく虜にしてしまっている点には驚きました。
歴史認識は国家間の利益に直接的に響く、重要な学問分野です。決してこの映画のように「かもしれない。きっとそうだ」といった論法で論じるべきではないと考えています。
テザキ氏も皆様も、認識と事実の違いが曖昧であるように思えます。
歴史認識には日韓それぞれの認識が存在しますが、事実はひとつだけです。
韓国では大勢が性ドレイとして日本軍に強制連行されたという認識がありますが、それを裏付ける証拠はこの映画で出てくる程度のものです。あの程度で事実たりえるなら、私は今からでもあらゆる国家犯罪をねつ造できると考えています。
そうならないために史料が存在します。それがみつからないなら、勝手に「事実」にしちゃだめです。

北朝鮮は首相級同士での会合で日本人拉致を国家的な犯罪行為として、「事実」だと認めたがために、今なお厳しい立場に置かれています。
北朝鮮は、日本側も北朝鮮の優秀な人材を国家主導で日本に拉致したに違いないと「認識」し、世界に向けて発信しています。国家に与えうる影響度はどのくらい差がありましょうか。
相手の認識をかんたんに事実と認めれば、ものすごいことになります。

日本はいわゆる慰安婦問題について、一度は国内の誤報を信じて事実でないものを「事実」と認めた後に撤回したせいで国際的な信用ががた落ちしました。このようなことを繰り返さないためにも、事実確認は慎重かつ確実に行う必要があります。
南京大虐殺しかり、慰安婦しかり、相手は数を誇張して責めたてて、微量だけでも事実として認めさせようとする手法をとります。何故か?それで十分だからです。日本が国家主導でそれをやったと認めれば、20万人だろうが1万人だろうが日本をバッシングする材料たりえるのです。
さて、これは慰安婦たちにとって、ものすごく失礼な姿勢だと思いませんか?
あったかなかったかは、この通り大変に重要な問題なのです。しかし、この映画では、その点について述べることはありませんでした。それどころか、差別者でないなら罪を認めることこそが真摯な姿勢だとでも言いたげな論理展開をしていました。
つまり、そういうことです。
利敵行為といわれるゆえんは、この論理展開にあると思います。

エーゲ海の真珠