劇場公開日 2019年11月29日

「作品全体を覆うプロレスのプライドと難しさ」ファイティング・ファミリー regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5作品全体を覆うプロレスのプライドと難しさ

2019年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

単純

幸せ

スポーツは「筋書きのないドラマ」だが、プロレスは基本的に「筋書きのあるドラマ」。
本作の製作に絡んでいるWWEは、そうした内実を全てオープンにしているため、筋書きやマイクパフォーマンス、レスラーの役割である“ジョブ”の在り方まで堂々と出しているあたり、さすが世界一のプロレス団体。
『レスリング・ウィズ・シャドウズ』で、ブレッド・ハートが「相手にパンチをしても血が出ないのは何故か?そこにアートがあるからだ」と語るように、本作からは「プロレスをナメるなよ」という大いなるプライドを感じる。

実在の女子レスラー、ペイジの半自伝にして、あらすじ展開はボクシング映画『ザ・ファイター』とよく似ている。ただ、どうしようもないほどのボンクラ揃いだった『ザ・ファイター』の家族より、こちらはまだ温かみが…いや、そう大して変わらないか。
周囲から疎外されていると感じるペイジが、実は自分こそが周囲を疎外していたという展開が上手い。こうした描写からも、安易にレスラーを悪く描かないという姿勢が感じられるし、コーチ役のヴィンス・ヴォーン(相変わらずイイ味出してる)の言葉「WWEを目指す事が人生の全てではない」にも重みがある。

ただ、スポーツを題材にした映画の中でも、プロレスが特に難しいのは、やはり「筋書きのあるドラマ」故に、どこに感動のポイントを持ってくるか。
そのせいかクライマックスの試合も、「でもこの試合も…」という先入観に加えて取ってつけた感があり、素直に感動しにくいのが痛し痒しなところ。
かといって、大傑作『レスラー』のような結末はあまりにも悲しいし…
いろんな意味で、プロレスって奥が深く、難しい。

regency