屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのレビュー・感想・評価
全69件中、1~20件目を表示
絶望する現実
この映画の主人公は、最近の言葉で言うと「インセル」に近い存在ということになるだろうか。とにかく、自分がモテないことが腹立たしい、だが女性に対して敬意は持っておらず、ひたすら性的欲求を満たすものとして扱う。気に入らなければ暴力に走り、最後には雑に殺してしまう。
本作は僕は『ジョーカー』とどうしても比べたくなってしまう。『ジョーカー』もまた社会にはじかれ、殺意に目覚めてゆく男だったが、彼がそうなっていくわかりやすい理由が描かれていた(最後のシーンでそれは全てウソかもしれない可能性が示唆されるが、ここでは考えないことにする)。しかし、フリッツ・ホンカがなぜあのような人物になったのかは明確な理由は示されない。理由がわかれば、それに対して解決策を示せるが、理由がわからなければどうしようもない。ホンカには救われる道はあったのだろうか。どうすれば『ジョーカー』を生み出さずに済むかはわかっても、『フリッツ・ホンカ』に対してはどうすればいいのかわからない。しかし、フリッツ・ホンカこそ実在の人物なのである。
タイトルなし
逆「ヴェニスに死す」。
とにかく醜い人間(見た目も中身も全てが)ばかりをかき集め、醜い生き様をそのまま差し出した形。
しかし、エンドロールを見ると再現度が凄まじいっぽい。あれは凄い。
それから、70年代の実在する事件をそのままやっているのだけど、現代性があるというか、ナ・ホンジンも「チェイサー」で同じネタ、つまり売春婦(この世に不必要な醜い人間)を殺しても誰も通報も捜索もしない、という現実を描いていて、もはやこれは普遍性なのか、人間の。
また感心したのが、2時間弱醜悪な人と出来事しか出てこないのだけど、「男はつらいよ」の寅さんや「北の国から」の純君や「隠し砦の三悪人」の馬鹿たちを見続けるよりよっぽどストレスもなく楽しめた。演出力なのかな?または「馬鹿で人に迷惑かけるけど、笑って許してやってよ~」という甘えがないというか。"そのまま見せる"人間に対する姿勢が良いのか。見ていて気持ちがいい。
それから、自分がお酒飲むのやめた事もあって、一度断酒と真っ当な生活に戻ることを決意した(殺人後なんで全然遅いけど)主人公に出会う人出会う人みんな酒を勧め、挙げ句一度酒を断ったの知ってるはずの好きな女性にまで勧められ、苦笑いでアル中殺人の世界に舞い戻るくだりが切ない。人間って弱いのよ、助けてやってよ、と思いました。
愛されるすべを持たない男の狂気!
実在するシリアルキラーを描いた映画は幾度か見てきましたが、本作ほど娯楽性を一切取り除き、すべてが不快で不潔に実在の殺人鬼を描いた映画は今までに類を見なかったでしょう。あまりにもフリッツの言動がリアルに描かれているので、殺害ドキュメンタリを観ている感覚に陥いりました。
フリッツを、実在に似せイケてない不幸でブ男にし、言動すらイケてなさを表現することで嫌な人間味をリアルに感じてしまいます。愛されるすべを持たないフリッツが選ぶ女性も、誰が見ても見た目も精神状態もイケてない年配の女性ばかりですが、弱者である彼女ですら手こずるフリッツがこれまた妙にリアルです。感情に任せた無計画な殺害も不快感を一層引き立てました。
屋根裏部屋の家の作りや雰囲気も実在とうり二つに作られているらしいですし、行きつけのバー「ゴールデン・グローブ」も実在のお店での撮影ということで、雰囲気も抜群でした。癖のある常連客もフリッツに対して敵でもなく味方でもない、微妙な関係性も何とも言えない距離感でした。フリッツ自身はこの店でちゃんと認められた存在なのですよね。
そんな不快さのリアルを追求した映画の中で、唯一といってよい娯楽性(花?)を描いたのが、女学生のペトラの存在でした。一瞬にして彼女に惚れてしまうフリッツですが、結局手を出すことが出来ず映画は終わってしまうのです。フリッツの人生を象徴するかのような、醜さと対照的に描いた花が決して手が届かない存在としてなったのではないでしょうか。
さて、結局のところ映画全体の感想ですが、面白いと思うような要素は全く無く嫌な気持ちにさせられますが、実在したシリアルキラーの心理面が手に取るようにわかる映画でしたので、見ごたえ十分な作品でもありました。でも、2回は絶対に観たいと思わない映画でもありますね…。
ヒッッデェ話なのに笑っちゃった。サイコパス的な怖さかと思ってたら、...
ヒッッデェ話なのに笑っちゃった。サイコパス的な怖さかと思ってたら、なんつーかもう…。
ノーサンキューってドイツ語だとネインダンケなんだね!
生々しい殺人
1974年のドイツはあんなにも鬱々としていたんだろうか。男も女も酒浸り。仕事中とか関係なくのむのむ。
安酒屋でおじいちゃんとおばあちゃんの公開ラブシーンとか、おばあちゃん達のアルコール依存性率が高すぎる。
ホンカ役は22歳の男前俳優っていうのも驚きだけど、殺される役の女優さん達もどうやったらあの体が出来上がるのか、謎がいっぱい。
映画になる華々しい連続殺人鬼なんて氷山の一角で、大抵の殺人者って、あんな感じなんだろうな。
コンプレックスが生み出した孤独な怪物ってところか。
生々しい殺人
1974年のドイツはあんなにも鬱々としていたんだろうか。男も女も酒浸り。仕事中とか関係なくのむのむ。
安酒屋でおじいちゃんとおばあちゃんの公開ラブシーンとか、おばあちゃん達のアルコール依存性率が高すぎる。
ホンカ役は22歳の男前俳優っていうのも驚きだけど、殺される役の女優さん達もどうやったらあの体が出来上がるのか、謎がいっぱい。
映画になる華々しい連続殺人鬼なんて氷山の一角で、大抵の殺人者って、あんな感じなんだろうな。
コンプレックスが生み出した孤独な怪物ってところか。
『良い子にしないとフォンカが来るぞ!』空気感と寂しさと臭いが印象的な作品。
内容は1970〜5年間に4人が殺されるハンブルクで起きた娼婦連続殺人事件の犯人フリッツ・フォンカの日常風景を描いた作品。印象に残った言葉は『クソが!』と『空気が抜けてる又ペチャンコ!』で第二次世界大戦の爪痕がまだ残って人々を価値観という見えない断絶の壁にわけてしまった時代背景のと描写が印象的だった。境遇や立場では、インセル革命に先駆けたいつの時代も絶えず横たわる見えない壁を強く意識させられた。シーンや場面では、フォンカの部屋に多量のポルノ写真や人形があった事で、映画の登場人物全員と同じで寂しさで解けない呪いが正にホラー表現。底なしの寂しさと虚しさを紛わす為に酒に溺れた人達ばかりが臭いや味に溺れていく姿が生々しい。最初と最後に映像的に繋がる映画文法表現も上手い。真ん中辺りの車に引かれる転機になるシーンも素晴らしい。作品のテーマが難しい中、漂う臭い表現は過剰な程響いた。映画最後で現場見取り図は、暫く眺めてしまったが、自分の部屋の外にも遺体隠してたんですね。ネズミが腐敗しただけでもあれ程臭うのに階下のギリシャ人家庭はよく絶えたなあ。事実は小説よりも奇なりとは良く言ったモノだ。
とあるBARの堕ちている人々を描く人間劇
個人評価:4.2
事件を描くのではなく、殺人鬼の日常を描く。そのウィットにとんだ演出が監督のハイセンスを感じさせる。酒に溺れる人々。その中に混ざっている殺人鬼に誰一人気づかず酒を酌み交わす。BARでの酒に対する描写をとことん暴力的にまたコミカルに掘り下げ、すでに堕ちている人々を描く。
実在の殺人鬼の物語と同時に、堕ちている人々を、とあるBARを舞台に描いた人間劇だ。
また殺人鬼フリッツの人間性も細かく描けておらり、弱い者への暴力性と、強い者への劣等感がなんとも人間味溢れている。またBARでの常連客とのやり取りもリアルで、顔馴染みへの社交性は持ち合わせていたのだと気付かされる。
これはとてもいい殺人鬼日記だ。
不潔
映画内における不衛生描写フェチの自分としては、美術が凄く頑張っていて良かったです。
最高にどうしようもない娼婦たちを演じた女優さんにリスペクトです。目を覆いたくなるようなヌードを惜しげもなくガッツリ見せてくれました。
死臭がこちらまで臭ってきそうでした。
アル中は、やることが雑すぎる
アル中の連続殺人魔とか最悪です。
死体をちゃんと捨てないし、やることなすこと全部雑。
成り行き任せにも程がある。
海外のパブとかバルとか好きだけど…
あまり怪しい店には入らない方がいいなと思った。
とにかく汚い
屋根裏に住むフリッツ・ホンカはバーでひっかけた娼婦をついカッとなって殺してしまう。
遺体は切断し、部屋の押し入れへポイ。
腐乱死体の山に何も起きないはずはなく……
酒!女!暴力!SEX!× 汚い。画面から悪臭がするような映画です。
特に大きなヤマ場などはなく、淡々とホンカの日常が描かれる。
頭のキレるシリアルキラーでもなければ、殺しを楽しんでいる様子でもない。
なんの目的もなく、ただ怒りに身を任せて女を殺す。
「こいつ、アホなんかな」と思わずにはいられない。
でもきっと、これが殺人のリアルなのだ。
殺人は感情のコントロールが上手くできない人間なら誰もが起こしうる犯罪だ。そして、人間は自分の感情を完全に制御することは出来ない。
実際のところ、殺人鬼とそうでない人の境界線は結構曖昧なのかもしれない。
良い点
嫌悪感と不快感がすごい(褒め)
悪い点
仕方の無い事だが、中盤まで物語にほとんど進展が無いのでダレる
最低で最高な狂人映画
冒頭からとにかく強烈な一本だった
連続殺人犯の異常な日常が、ひたすら淡々と描かれる。
これはサスペンスなのか?
それともスリラーなのか?
はたまたブラックコメディなのか?
あらゆるジャンルを軽々と横断するカルト映画っぷりはとにかく強烈!
実在した殺人鬼フリッツ・ホンカ。
とにかくこのキャラクターのクセが凄い。
ぱっと見、人畜無害な社会不適合者に見える彼が見せる狂気。
歪みきった性愛。
暴力的な独占欲。
一瞬のユーモラス。
これが恐ろしくも面白い。
ホンカはさながら"ドイツ版"ジョーカーと言ったところだろうか。カリスマ性こそないけれど、本質的には同じと言っていい。いや、むしろジョーカーすら手緩く感じるくらいに救いがないのだ。
最底辺の人間が集まるバーでの最低最悪の会話も最高で、タランティーノ作品も叶わないくらいぶっ飛んでいた。
そんな本作だが、最も衝撃的だったのは本編よりエンディングだろう。
意外なほどの実物再現っぷりに驚かされる。
そしてこの映画がノンフィクションベースである事をふと思い出すのだ。
彼は時代が生んだ狂人などではない。
この男はどこにだっている。
誰だってなり得る。
あなたのすぐ隣に住んでいるのかもしれない。
それこそが、最大の恐怖なのだ。
実話だったから観れた。
これがフィクションなら途中で止めただろうと思います。
とにかく汚く臭く不気味。画面からも臭って来そうな程に酷い映像。逆を言えばリアリティあって当時の時代風景が見事に表現出来ていました。役者の方々も体当たりの演技が凄い!
ラストのあの写真は背筋が凍りました。
実話だからなぁ
この手の映画はたまに観る。猟奇的なことへの抵抗はそれほどないのだが、この作品はわたしには無理だった。
なぜかと考えてみると、実話なだけに美学みたいなものが感じられなかったからかも。
犯人は酒浸りで醜い容姿、女なら誰でもよくて酒で釣れる女をお持ち帰り。自分の欲望を満たすためだけに行動している。殺人も気がついたら殺してて、バラバラにしてトランクに入る分は捨てに行きあとは自宅にかくす。それは異臭を放ち、自分で吐く位臭いのだ。そこにこだわりや美学はなく、正直気持ち悪い感じだった。
ただ、実話なだけに、現実はこうだとしらされた感じもあった。殺人に美学とかはなくて、孤独な男が欲望のままに動きあっけなく捕まって終わる。あんだけ行き当たりばったりなら捕まるよね。
2度は観たくない。
実在の連続殺人犯の話。フリッツの酒を飲んで手当たり次第に声をかけるのも呆れるし、あんなにも簡単について行くオバ様達にも呆れる。カッとなってすぐ殺したり、バラバラにした死体をあんなところに隠したって、、、何も考えていないのか、呆れることだらけ。こっちまで悪臭が匂ってきそうで、参った🤢
高校生の彼女が犠牲にならなくてほんとに良かった❗️
【”アナタの部屋はとても臭いですが、何の匂いですか?ハイ、腐乱した人肉の匂いです・・”とフリッツ・ホンカは言わずに、平凡だが”不条理な日々”を過ごす中、只管に”不条理な狂気”の行動を取っていた・・。】
◆1970年代、ドイツ、ハンブルク。
実在した連続殺人鬼、フリッツ・ホンカは日々バー”ゴールデン・グローブ”に入り浸り、昼間から酒を飲むどこか壊れた人々と共に、酒に溺れる日々。
酒を老婆たちに奢ろうとするも、容姿の醜さ故に断られ続ける。
が、時折、自宅に酔った老婆を導き、狂気の行為を”ルーティーン”のように繰り返す・・。
・今作に登場する人物の多くは、昼間から酒を煽る男女の老人たちである。品の無い会話を交わし、不条理な行動を取る。
トイレで隣に立った元軍人らしき長身の男に挨拶した青年が、男から脅され、背後から放尿されるシーンなど・・。
彼らは、どこかが壊れている。
劇中で、老人たちが屡口にするのは、第二次世界大戦で受けた不条理な仕打ちの話である。
壊れた人たちの中で暮らしているので、フリッツ・ホンカの狂気は埋没して、目立たないのである。
<孤独感を抱えた、素面の時は真面目な男、フリッツ・ホンカ。
だが、酒が入ると、狂気のサイコキラーになってしまうフリッツ・ホンカ。
”貴方の隣にいる、不細工だがごく普通の男は、実は・・”
不条理極まりない、実在した連続殺人鬼の日常を描いた作品。
元アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのF.Mハイトが担当したポップな当時の曲が、画面で繰り広げられる惨劇を、何故かコメディに見せてしまう作品。
それにしても、ファティ・アキン監督は前作「女は二度決断する」で、不条理極まりないテロに対し、決然と立ち向かった哀しき女性を描いた傑作を撮ったが、
【不条理】に拘る監督なのだろうか・・。
第二次世界大戦で心が壊れた老いた人々の姿を描く中、ファティ・アキン監督は”世の中に蔓延る、不条理”を描きたかったのであろう、と勝手に推測した作品。>
全69件中、1~20件目を表示