「カリビアンエクスプロイテーション」イン・ザ・ハイツ k_keitaroさんの映画レビュー(感想・評価)
カリビアンエクスプロイテーション
歌、踊り共にクオリティの高いパフォーマンスで見応えは十分あったが、色々気になる点もあった。
まず、ミュージカルとして致命的とも思える事は、観終わった後口ずさみたくなる楽曲がないという点。あまり前知識を入れずに観たので全編ラテンなのにもビックリしたが、キャッチーさがないと言うか物足りなく感じた。
これは日本で外国語のミュージカル映画を観る上で宿命と言えるかもしれないが、字幕と歌のリズムが合わず、さらにラップ調の言葉数の多い歌詞などは文字数と意味の違和感があって、クラクラする。冒頭の曲でキャラクターの紹介がされ情報量が多く、なかなか頭に入ってこなかった。翻訳難しかっただろうな〜
それと、尺が長いね。その割にキャラの掘り下げ足りないかな。もう少し丁寧でも良かったな。特にアブエラはもっと街全体のオッカサマみたいな雰囲気をもっと描いておいてもらえたら、あそこでいきなり歌い出す件もすんなり入ってきたと思う。どっちに進んだら“あの世“みたいのも分かりにくかった。
あと、主人公のウスナビ、ちょっとボンクラすぎないか?あのクラブのシーンでバネッサと一緒に踊らない理由が分からない。奥手なの?ダンスにコンプレックスでもあんの?まぁどうせ、最後にくっつく為に勿体つけてんでしょ?って思ってしまう。
最後ベニーどこいった?
これ以上時間が伸びるのもなんだから、かき氷屋の件は話に関係がないからバッサリやったりしても良かったとは思うけど、あれってきっと原作ミュージカルファンへのサービスかなんかなんだよね。わざわざ、クレジット後にも出てきたし(エンドクレジットの楽曲欄に"reprise"って書いてあったから予想ができてしまった)
停電もせっかくカウントダウンしてるし、気温も出してるんだから、停電の兆しみたいなものを描いたり、暑さ表現とかやればもっと風情のある映画になったんじゃないかな。
冒頭からチョイチョイ入るカリブの海のシーンにはすっかり騙されたが、強制ミスリードなので「上手いっ!」とは言えないな。
どうしても遠い国の話なので「へーNYにそんな場所もあるんだ」くらいにしか思えなかったが、当事者からしたらかなり胸熱な話なんだろうな。『クレイジーリッチ』の時も思ったが特定の人種に向けて作っているのではと思ってしまう。
ニューヨークで停電して音楽があってマイノリティ(ヒスパニック系がそうとは限らないが)の映画なら『ショートバス』の方が圧倒的に好きだな。かなりドギツいシーンがあるけど停電から盛り上がりは最高。ほんとオススメ。