「正義と慈悲が失陥したアメリカと言う国で。」黒い司法 0%からの奇跡 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
正義と慈悲が失陥したアメリカと言う国で。
もうね。「失陥」って言って良いと思うんです。本来あるべきもの、人間に備わっているべきものが、何者かによって奪われて欠損状態にある、って事なんで。ちょっと視点が偏ってるし、厳密な定義から外れるけど。アメリカの場合です。
州高裁の法廷でブライアンは「法の正義が守られること」を願い、判事に訴えます。ラストシーン、ブライアンは聴衆に向かって "Justice" と "Mercy" が必要だと演説する。でも、タイトルは”Just Mercy”。突き詰めれば、ただ”慈悲”が欲しい。つまりは”死刑廃止”って解釈になるんかなぁ、と一瞬思いましたが。
ちょっと違うかも知れない。
インターンとして死刑囚訪問をしたブライアンは、収監されている同い年の黒人青年に出会い、何かに突き動かされる。"Just Mercy"は、ブライアンを闘いに向かわせている動機が何なのか。何が彼に、30年もの長き闘いに向かわせたのか。「ただ慈悲の心から」。実際の人物像は存じ上げ申さぬが、言います。「心から尊敬申し上げます」。
弁護士と言えば、スキャンダルを見たばっかだったもんで余計にね。
あれだけの新証言を提示しながら、再審を認めない郡判事。無能のそしりを逃れるために事実をでっち上げ、ご丁寧にシナリオを書き、役者を準備して、無実の市民に死刑判決を下す人々。
電気椅子のシーン。独房で打ち鳴らされるコップのリズムと、通気口から響いてくる声々に、哀悼の涙。
再審開始の報を信じて疑わなかったのに、下された判定のクソっぷりに、無念の涙。
ブライアンの突然の訪問に気を悪くしながらも、法廷で法の正義を下す側に転じた検事の言葉に、ガッツポーズで涙。
ちょっと涙もろくて、あれなんだけど、その他にもね。5分間時間を与えてくれた新人看守の姿だったり。ブライアンを迎える、無実の罪を晴らして欲しい一族達の姿だったり。結構泣かし何処、たくさんあります。
役者さんも良かったです。
ベタっちゃー、ベタですけど。
こんなんが、本当に大好き。
良かった!とっても!
今のところ、今年一番です。
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(3/2) またまた、どうでも良い追記。
もうすぐエジソンの映画が公開されるんですね。で、電気椅子です。19世紀終末から20世紀初頭に掛けたアメリカの「電流戦争」は、「直流送電」を推進するエジソンと、「交流送電」のウェスティングハウスの戦いでした。アルフレッド・サウスウイックが考案したとされる電気椅子。実際に電気椅子の開発に着手したハロルド・P・ブラウンは、エジソンの支援を受けていました。エジソンの狙いは、ウェスティングハウスの「交流送電」が危険で致命的であることを人々に印象付け、電流戦争に勝つことでした。実際、エジソンが実行したネガティブ・キャンペーンの数々は、下衆としか呼びようの無いモノばかり。人間のクズです。これ、あくまでも、21世紀のモラルに照らせばですけどね。
電気椅子には、エジソンの狙い通りに交流が使用されます。「囚人を処刑する送電方法と同じ方法で家庭に送電して欲しくない」となるはずだった世論は、そうはなりませんでした。エジソンのネガキャン、やり過ぎたんちゃいますか?
もうすぐ公開のエジソン映画、どんな人格描写になるのか、楽しみです。
bloodtrailさん、ありがとうございます。場違い、板違い、私は方向音痴故なんですが、ご理解いただきすみません!どんだけ残酷で痛いのか、どんだけの権力であなた方は殺人出来るの?も考えながら、議論する問題ですよね。国家じゃなくて、仇討ちOK?(半分本気、半分、よくわかってない)「ショーシャンク」まだ見てません!見ます。
コメントありがとうございます。どこに送信したのか迷子になりました。ごめんなさい。ここにお礼書きます。電気椅子にせよ絞首刑(こちらの方が残酷であること、知りませんでした!)にせよ、今の時代にそぐわないこと、よくわかりました。そして死刑廃止論は、痛みも含めて議論する方向に行って欲しいと思いました。
bloodtrailさん、コメントありがとうございます。そうなんですか…。ショック、というか、何も知らなかった私。イケイケ死刑の国の日本は、苦しみについて考えていないっていうことですか?死刑反対、賛成、その議論と一緒に、苦痛を与えない為にどうしたらいいかも、話して欲しいです。オープンに。
電気椅子と絞首刑、苦痛が少ないのはどっちなんでしょう?なぜアメリカは前者で、日本は後者なのか、なんか理由があるんでしょうか?大島渚の映画でも、(たしか)失敗した絞首刑が扱われてましたよね。
bionさん、talismanさんへ
グリーンマイルのあの場面ですが、電気椅子の開発初期の死刑囚による実験は更に凄惨だったそうで。数分間の通電で心停止。しかし心拍復活。もう一度電気椅子。などと言う失敗もあったとの記録があります。純粋に怖いですね。
bionさん、すみません!bloodtrailさん、グリーンマイルの原作でいうと第4巻、ある看守によく思われていない死刑囚ドラクロワの処刑(電気椅子)が凄いことになってしまってます。映画でもそうでした。海水吸わせた海綿を頭に乗せなければいけないのに、それをわざとしなかったんです(って、コメントを書く場所に慣れてなくて、何度も書いて覚えてしまった…)。
talismanさんのコメントをおいておきます。
bloodtrailさん、電気椅子のコメントで「グリーンマイル」思い出しました。1回で楽になれなかったんですよね…。
もう1つあの映画の中で描かれていたのが弁護士の倫理的な部分、主人公の前の担当弁護士がみな、金が無くなったらトンズラしたとの台詞、これもアメリカの現実かもしれません。