「【あらゆる差別、偏見思想をぶち壊せ!世界の現状に鋭い警鐘を鳴らす作品。メインキャストを演じた俳優達の抑制した演技が、直面する深刻さ、怖さを浮き彫りにした作品でもある。】」黒い司法 0%からの奇跡 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【あらゆる差別、偏見思想をぶち壊せ!世界の現状に鋭い警鐘を鳴らす作品。メインキャストを演じた俳優達の抑制した演技が、直面する深刻さ、怖さを浮き彫りにした作品でもある。】
舞台は人種差別思想が色濃く残る1980年代、アラバマ州の田舎街。
ブライアン(マイケル・B・ジョーダン)は"北"から来た若き弁護士。ある理想を実現させるためにやって来た。
が、彼とその仲間達(エバ:ブリー・ラーソンetc.)が直面したのは、この地に根強く残る”風土”。
検察がでっち上げた"死刑囚"ウォルター(ジェイミー・フォックス)の無実を長年かけて晴らす過程には唸らされるし、結果には喝采する。
(若い白人警官のブライアン達に対する接し方がどんどん変わっていく所をさり気無く写し込んでいるのも良い。)
が、 現在でも、世界各地に蔓延る事象を考えると、暗澹たる気持ちになる。
検察官が、ウォルターを殺人犯に仕立てた手口が、巧妙で汚い。
所謂、司法取引というモノだ。マイヤーズ(ティム・ブレイク・ネルソン)に巧妙に圧力をかけながら、嘘の言葉を言わせたことが明らかになる件など、どこでもやっているのではないか?と思わせる程である。
ブライアン達が執念でマイヤーズの嘘を暴いた決定的な証拠を提出したにも関わらず、そしてマイヤーズ自身が嘘を言った事を認めたにも関わらず、裁判官(男性)は、ウォルターの死刑判決を覆さない。
それでも、ブライアンは諦めない。
検察の”冤罪ドキュメンタリー”を作り、検察を追い込んでいく・・。
そして、検察側が裁判で取った判断。(この時の裁判長は女性・・)
日本でも検察の控訴断念事例は枚挙に暇がない。そして、その多くは偏見に起因しているのは皆が知っている事。
(戦前、終戦直後は知的障がい者がターゲットにされた・・)
アメリカでも国を統べる唾棄すべき人物の不寛容な思想に基づいた愚かしき政策の数々。
日本国は大丈夫か?
〈今作品の原題は”ジャスト・マーシー”。
相手を敵対視するのではなく、慈悲の心で包み込む姿勢が、現代社会の風潮を変える第一歩だと、私は思いたい。
鋭い警鐘を私達に鳴らす、素晴らしい作品である。
今作品を制作し、上映に漕ぎつけた方々の執念に敬意を表します。〉
いい映画、観るべき映画ですよね。と、偉そうなことを言いながら、原作者のTEDトークを探してもいなかった自分に気づいて、少し恥ずかしい気持ちになりました。今回いただいた "いいね" を機会に、ちゃんと探してみようっと。
気づかせてくれるお年玉をありがとうございました。今年もよろしくお願いします。
海外で暮らしていると、人種差別的な空気を察したり、拙い英語でも寛容に理解してくれたり、自分がアジア人だということを、強く実感します。自分が外国人にならないと気がつかなかったことですね。
コメントありがとうございます。
死刑制度を維持するためには、公正な裁判が絶対条件が必要で、日本では実現していると思っているのですが、危惧していることがあります。それは、日本でも司法取引が導入されたことで、この映画のように権力側の都合に合わせて偽証する人間が出てくる可能性があることです。
それに加えて伊藤詩織さんのように事件自体がもみ消されることが、日本でも現実にあり得るという事実を知って、司法制度への信頼が揺らぎました。検察審査会も機能しなかったので。
それでも死刑制度に関する国民投票があれば、今のところは、維持に票を投じると思います。
この映画を見たのは、正直、マイケル・B・ジョーダンが主演だったからですが、僕みたいに娯楽として映画を見た人も、見た後に、真剣に死刑制度を考えるようになります。そういった意味で、映画は大きな力を持っているので、これからも問題提起する映画が続いてくれることを願ってます。もちろん、映画として成立していることが前提ですが。脚本も演技もダメダメだったら本末転倒なので。