「邦題は = No Mercy」黒い司法 0%からの奇跡 Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
邦題は = No Mercy
警察の検問。保安官が職質する前に主人公は既に車のホイールに手を置いて無防備・無抵抗であることを示している...しかも細部にわたり指を広げて何もない事を、しかし
いつも通りの黒人に対する仕打ち、見ている者に憤りを感じさせる映画の掴みには最高なものとなっている。
ロースクールを卒業した主人公のブライアン、彼に対し母親は…
I know you got your law degree now,
and you think you're grown,
but you're still my child.
And I'm the one that has to deal with your funeral arrangements
if you get killed down there.
ここでちょっと、”you're still my child.” というフレーズ...幾度となく外国映画の世界では聞いたことがあるけどテレビドラマを除いて一般の日本の家庭で表立って聞いたことが今まであったろうか?しかも大の大人になって...この会話がこれから彼が人生をかけて挑まなければならない裁判へと駆り立てる前触れとなっている。
十代の女性殺しの容疑で収監され死刑がまじかに迫り、精神のはけ口を失ったウォルター....彼のピジン英語が弁護を引き受けるブライアンに対しても寄せ付けない。
You're rich boy from Harvard,
you don't what it is down here.
この言葉より戦う勇気さえウォルターはそぎ落とされている。しかも映画のプロットは、弁護士ブライアンの苦闘が分かり易く描かれていて協力者のエバの家族にかかる脅迫電話であったり、確実な目撃者証言を得ても証言者の過去を利用して諦めさせることを警察も関与をしているように描いている...その姑息さが見ているこっちも保安官・警官・検事にムカツキ...この野郎!って・・・
Johnny D is old,
Herb, you more ancient.
その上、戦争の影響でPTSDを発症し、言葉をまともに話せない死刑囚ハーブ。自分の気持ちをはっきりと言葉に表せない彼の素朴すぎるほど素朴な極刑のシーン・・・・・!
そして終盤になると足元を完全にすくわれる弁護側....一体全体、アラバマの司法はどうなっているのか?.....なんてかなり感情移入をしてしまっている。ウォルターの言葉が蘇る....
You know how many people been freed from Alabama death row?
”None.”
先日鑑賞する機会のあったタランティーノ監督の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」…登場人物のチャールズ・マンソン。このチビが・・・失礼、死刑制度を復活させた人物だと思っているけど、そのカリフォルニア州の知事が、死刑執行の一時停止書に署名している。全米一の死刑囚その数730人以上・・・アラバマ州は全米一の死刑執行数のテキサス州には負けていても一人当たりの人口に占める割合は、全米一...その意味は
カリフォルニア州が死刑執行制度を停止した理由?この映画を見れば回答が分かります。
映画解説の通り、ノンフィクション部門で賞を獲得している”Just Mercy: A Story of Justice and Redemption” 2014年出版の作品を原作にしていて、具体的に言うと主人公のブライアン・スティーブンソン本人のお話で、近年、発行部数が刑法の量刑に関する参考書のジャンルで上位を占めている。
ラストの結審...このシーンが個人的には印象に残る場面となっていて、後ろで喜ぶ黒人たちをしりめに傍聴席を占めている地元白人たちの顔や態度が....実際のところマイケル・ハーディング演じる地元保安官のテートがその後も保安官として再選を成し遂げ、定年の任期まで仕事を全うしている。
ひとりの少女の殺人事件。南部の多くを占めるプアホワイトの人たち、彼らのはけ口・ガス抜き的存在を維持してくれる社会とそれを支える保安官。反面その犠牲になる黒人と彼らの反発…の構図を考えるとユニバーサルリサイクルのシンボルのようなメビウスの輪のようにあらぬ方向から見ると蒙昧な者にとっては混乱を導くだけの....そんな映画になってしまっている…でも一般の視聴者にお勧めの社会派ドラマということに間違いがない…この人ジェイミー・フォックスの冗談かよ?と思えるほどの過去における ”黒人至上主義” 的発言などを含め混乱中の卑怯者は映画の評価は自ずと☆3になってしまう。