よこがおのレビュー・感想・評価
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傑作と言われているけど、1度の鑑賞では理解できなかった…というか時...
傑作と言われているけど、1度の鑑賞では理解できなかった…というか時系列が全く分からなくて迷子になってしまった。
犬になりにおいを嗅ぐシーンが強烈すぎて「ちょっと無理かも」と思ってしまい、そこからしばらく真面目に観なかったのもあり…
ただ俳優陣みんな素晴らしいと思うし、もう1度ちゃんと観ます。
生きていくのは大変だけど
主人公(筒井真理子)は訪問看護師、担当する一家の長女(市川実日子)が介護福祉士を目指しており、勉強を見ていた。
しかし次女が失踪、無事に帰ってくるが、事件に主人公の甥っ子が絡んでいたことから・・・。
最初から不安感をかき立てる演出で、観ている方もどんどん追い込まれていくのはすごい。
主演・筒井真理子の役者魂
誘拐を犯した弟をもつ女性が、周囲の偏見から孤立し、復讐しようとするが空回りする話し。
全体的に曇天のトーン。男性不在の女性同士のドロドロした情を描く。筒井真理子という女優を当て書きしたような脚本に思える。
筒井真理子の演技はすばらしい。構成としては、現実なのか主人公の妄想なのか、はっきりしない。すべて妄想であったなら、のっぺりした日常を描いているともいえる。
たしかな独自性
筒井真理子も池松壮亮も吹越満も暗い。この布陣だけなら気が滅入っていた。が、市川実日子がパッと明るい。明るいキャラクターではないのに、垢抜けた顔と伸びすぎの佇まいに、どこか非現実を持っている。助けられた。
映画はサスペンスフルに展開する。面白い。もっとアート系な寓意を予想していた。不遜な言い草だが、だいぶうまくなった──と感じた。
何気ない日常会話を重ねていく。
是枝監督や河瀬監督に何気ない日常会話を見ることがある。
深田監督にもそれがある。
ただ、いつでも何かが起こりそうな不安を孕んでいる。
なにかの言葉によって、闇が掘り起こされ、日常がいっぺんに崩れ落ちる──ような気配が、常に漂っている。
時系列を錯綜させた編集も、それに拍車をかける。
そもそも、半尺過ぎてさえ、市子がいったい何を秘めていて、何をどうしたいのか、解らない。それでも、不安を感じないではいられない。
ほとりでも淵でも見えなかったが、この感じは確かに独自性があると思った。
ただしである。
いったん基子のテレビ発言が晒されると、様相が壊れる。
この発言が、内的葛藤を抱えていた基子の気まぐれにより、16円と言ったにもかかわらず、10億円と捉えられてしまった──みたいな、とんでもない針小棒大となり、元来、生まれるはずもなかった悲劇がはじまる。
わたしの勘違いでなければ、この映画は、事件と甥のズボンを下ろしたという日常会話を伏線させ、モラトリアムな基子に、甥のちんちんにいたずらをした──と報道されてしまった叔母さんが、それを期に社会から爪弾きにされる話である。
火の無い所に煙は立たぬ──とは言うが、悲劇がないところに力技で悲劇をつくり出している。
しかも息子じゃなくて、甥だよね?なんか勘違いしているのかな。甥のわいせつに、しかも未遂に、なぜ叔母が、芸能人の不倫かと思えるほど多勢の報道から追いかけ回されるのか──解らない。
筋だけならコメディといって差し支えない──と思った。
父の秘密(2012)や母という名の女(2017)のミシェルフランコ監督が、向こうのインタビューで深田監督との作風の類似性を指摘されている記事を読んだことがある。
確かに似ている。
何が似ているのかというと、元来、おこりようのなかった事故/事件/悲劇が、魔が差した人の行動/言動によって、おこり、そこへ主人公が呑まれてしまうドラマ展開が似ている。
事故によらなければ悲劇がおこらない、それが20世紀である──と言ったのは大岡昇平ではなかっただろうか。
この方法論は、うまく構築しなければ、まさに火のないところに煙を立てる作業である。
つまり市子が陥ってしまった悲劇に対して、あたかも打球が後ろへ飛んでいったバッターを揶揄するがごとく、むしろ、そっちへ打つほうが難しそうだわ──と言いたくなってしまう。なにを好き好んで、そんなところへ嵌まっているんですか?と尋ねたくなってしまう。
つまりコメディ。
だが閉じるまでのあいだに悲劇は中和される。押し入れでの情交を回収し、復讐は水泡に帰し、丘陵にテツandトモの片割れのようなジャージ姿の基子が仁王立ちしている幻影に過呼吸になったりもするが、しずかな湖畔で過去を洗い流す。時間はつらい思いを緩和させる。ふたたび安寧が戻ったかのように見えたとき、宿敵が轢いてくれと言わんばかりに道路にまろびでる。
一応、笑おうか迷った。
妙。じわりと変。どんより曇り空、絶対に晴天を撮らない。
因みにこれは上げの評価です。
ベテラン女優の貫禄
脚本が凄く面白かった。どんどん話に引き込まれていった。
筒井真理子さん、市川実日子さんの演技も素晴らしくて最後のクラクションを鳴らすシーンは息が止まった。
人間ってちょっとした事がきっかけで人生が180度変わってしまうんだ…という事が怖かった。
池松壮亮さん好きとしては女性陣に振り回される彼を観て萌えっとした。こういう役が良く似合うなあ…
こういう感じか…
それでも生きていく
て事なんですかね…映画的には私の嫌いな終わり方だし、人に聞かれたら勧めないし、凄い映画を見た!とも思わないけど、凄いやるせない気持ちになりました。単純に俺には合わない!つまらない!とは言えない何かが残りました。
ただ一つ主人公の謎行動だったのがタツオとのあれ、何で手伝ったの?あんなのタツオの自己満足だし、相手も望んでないのでは?せめて事前に自分が先にいくとか電話とか手紙とか無かったんか?
薄い氷の上で成り立つ人間関係の輪
楽しい気持ちにはならない。終始心をキリキリさせながら、でも面白くて最後まで観た。
人間関係という薄氷を、自分のちょっとした欲望のために崩した方は、
大抵何にも覚えていないよね。
人間関係って、そういう、いつも危ういバランスの上で成り立ってるとしみじみ思うと同時に、やっぱり苦しくなる。
欲望に満ちた顔がその瞬間が、誰しも真っ暗で見えないのがとても印象的でした。
深田監督と筒井真理子のコンビは日本映画の宝だ!
筒井真理子という女優はこの年齢(失礼)にしてますます進化している。この筒井真理子と深田晃司の理想的な共同作業がこの作品を際立たせている。前作「淵に立つ」では深田晃司のもの凄い演出に筒井さんをはじめとするキャストが答えている。よこがおは筒井真理子ありきの脚本演出だ。
2019年の私個人的な主演女優賞は筒井真理子に決めたい。
怖い
自分の日常がふいに壊されたら。自分もこんな猟奇的な部分を持っているのだろうか。ぞっとする。思えば主人公だけでなく登場人物たちは事件がきっかけで全く違う一面を見せている。人間は愚かだ。愚かで寂しい。
現実を受容する美しさ
傑作だと思う。
ラスト、市川実日子との対峙において復讐を果たさない主人公、虚しく鳴らされるだけのクラクション...このケリの付け方に、スッキリしようのない現実を受け入れるしかない主人公の強さを見た。
頭で考えれば(恐らく)レズビアンの市川実日子の男を寝取った所で復讐になんてなりようがない(これは相手がレズビアンだと気づいてなかっただけとも取れるが)。だけどこのようなどう捉えども馬鹿げた復讐に走るしかないという所に社会から弾き出された主人公の切実さがある。そして、明確に描かれてはいないので仮説にはなるが、市川実日子が主人公の意図を知り気持ちのない彼氏との関係をあらかじめ精算しておいたのだとすると、彼女はこの時点においては悪意のない悪から相当な悪に変貌していたとも言えるのだけど、そのヒールの顔を画面に出さない所に監督のセンスを感じる。随所に挿入されるイメージショットも相まって、映画全体が顔の見えない相手に支配された悪夢のようにも見えてくる。シンプルなプロットの中に唐突に挿入された感のある夢やイメージショットはこの点において映画の狙いに有機的に機能している。
この映画自体が市子という人が観ている悪夢や走馬灯を観客が共有していると観ることもできる構造になっている。
このように深田晃司監督が「意識的に何を描いたか」は非常に重要だが、「意識的に何を描かなかったか」も同じウェイトで重要だ。
列挙するなら、どうして池松壮亮演じる和道がデートにやってきたのか、市子と寝たのか、そのことを基子が知っていたのか。また、基子が厳密にはどのような気持ちで市子を裏切ったのかやその表情など、意図的に描かなかった余白がかなりあるように思われる。
それらを描かないことにより、現実や過去の曖昧さが立ち上がってくる。1人の人間がトラブルに巻き込まれる時に、「どこで誰がどんな悪意を働かせたのか」が分かることの方が稀なのであって、人間は過去のこと、現在の事なんて厳密には分かりようがない。これは深田晃司作品に通底するテーマのように思われる。
この映画の主題は悪夢であり現実そのものである。日本を覆うある種の現実、つまり異物と思しき物はバッシングして切り離すこの社会そのものを強く打つ映画であり社会派サスペンスとしても一級品。ラストの美しさはその中で苦しみ続けるしかない事を受け入れた人間の孤独である。
わだかまりが残る
いろんな意味で難しい作品でした。
役者も素材も演出も、申し分ないのに、心に残るわだかまりが、
もう一度この作品を観たいとは決して思わない。
脚本は誰にでも起こりうる悲劇。
加害者は本人だけと世間は思ってくれない、
被害者の家族を守る団体はあっても、
加害者の家族を守る団体はないという不条理を敢えて取り上げた作品。
筒井真理子さんと市川実日子さんが文字通り体当たりで、挑んだ作品でしたが、
私は、もう観ないと思います。
吠える
時系列の違いが頭の中で整理できておらず、主人公の行動の表裏がありすぎて、多くの誤解の中で序盤見てしまった。テーマ的にそれも計算されたことなのかな。
悪いことをした訳ではなく、拙いのであるが、巧者が世渡りでき、不器用者が踏み外す悲しい世の中でもある。様々なシークエンスが絡まった良い映画であるが、脚本は少し意地悪が過ぎる。最後の遠吠えが辛く痛い。
役者陣はいずれも好演だが、全てを背負った筒井真理子が何より素晴らしい。
浅い。
ストーリーの浅さは美容院の安週刊誌レベル。
つまり
《ヘルパーの市子を同性として愛してしまった基子が、恐らく辰雄を何らかの方法でそそのかして妹を誘拐させ、妹を傷物にして葬り去り、愛する市子を独占しようとした。しかし薬が効き過ぎて市子は去っていった》
というお話ですよね。
殆ど冒頭で筋書きが見えてしまった。
ありきたりです。
監督は「どうだ、暗い気分になったろう?」と言いたいのだろうか
最後にどんでん返しがあるのかと思って終わりまで頑張って堪えていたがエンドタイトルが流れて、終わっていた。
作り的にも“伏線”かな?と期待するエピソードにもまったく回収がなく放置。これなら「カメラを止めるな」のほうが真摯です。
意味のない登場人物は男たち3人。すなわちぼそぼそ喋るKY の美容師、黙秘ではなく喋れないだけの甥の辰雄、なんも動かない弱い初老の医者。
男は弱いか亡くなっていて不在かのどっちかだ。男たちを見ているとイライラする。
せっかくあれだけ窓のシーンを多用したのだから、大どんでん返しで一等最後に「医者と妹の窓辺の姿」で我々を愕然とさせてもらいたかったな。
つまり
初老の訪問医と妹サキは実は肉体関係。若い体に溺れた医者は次第に婚約者市子を疎ましく思い始め、辰雄を使って市子をはめたのだ・・
― これくらいでなくちゃ観客はびっくりしませんよ。
つまらなくてびっくりはしたけれど。
シナリオがバラバラなのです。どの人間関係にも深みがない。
湖の意味のないカットは不要。どうせなら幻影で基子と市子の押入れの全裸シーンを挿れ、基子を主人公にした映画にすればずっと良くなったろう。
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星1/2はBGM のぶんです、
楽器はスタインウェイではなくベーゼンドルファーを使ってのバッハのインベンション。
突然奪われる幸せ
介護の仕事をし真面目に働く女性の主人公に(筒井真理子)
突然 襲い掛かる不幸。
自分は何もしていないのに巻き込まれ
仕事を辞め 恋人とも別れ
「私たちは被害者の方の支援をしているのです」と
頼みの綱にも見捨てられる
それもある人物がいたせいで このような
泥沼な人生に落ちていくのだ
どんなに自分が真面目に生きていても
他者によって人生が奪われることもあるのだなと
恐ろしさを感じた作品だ
しかし彼女は逞しかった
渦中の中でもしっかりと生きていく様は
観ていて心を打たれた
特にある人を迎えに行くシーンには
懐の深さに彼女をぎゅっと抱きしめたくなった
復讐のシーンの顛末もアッハッハッハと笑うシーンは
仕返しなのに滑稽でかわいくもみえてしまった
池松くんは毎度おばさんキラー?役で登場ですね
いつもいい味出していて私は大好きです
ストーカーのようなよいこちゃんのような
市川実日子が怖かった
そしてラスト
うわあ!ぎゃあ!どうする?
私だったらどうするか・・・
ラストまで目が離せません
見えぬから信じたい“よこがお”
深田晃司監督は日本のミヒャエル・ハネケになれるような存在かもしれない。
『淵に立つ』に続き、筒井真理子を主演に迎えて放つ、不条理サスペンス・ドラマ。
深田監督は『淵に立つ』でもそうだが、サスペンスチックな事件そのものより、事件の後の理不尽さや悲劇性に視点を向けている。
正直、序盤はタルかった。
訪問看護師の市子は、訪問先で福祉介護士を目指す基子の勉強を見るなど周囲の信頼厚かった。特に基子はただ慕うだけではない特別な感情を…。
ある日、基子の妹サキが失踪。その衝撃の犯人。その時を境に、市子の平穏な日常が崩壊していく…。
衝撃の犯人は、市子の甥。
ある時たった一度顔を合わせただけ。
動機も何もかも分からない。
何故、甥が…? どうして…?
被害者は程なく無事発見され、事件は解決するも、市子の心は…。
被害者はお世話になっている訪問先の娘。
言うべきか、否か。
唯一、基子だけは事情を知る。決して市子を責めたりせず、今まで通り交流を保つ。
が、ずっと隠し通せる事ではなく…。
訪問先からクビ、勤務先を辞職、近々縁あって結婚する予定だったが破棄、クソに集るハエの如く執拗に付きまとうマスコミ、過去の些細な悪戯の過剰報道、さらには事件への関与の疑い…。
残酷なまでに転落、破滅。
でも何よりショックだったのは、あんなに慕われ、心を許していた人物の裏切りだろう。
自分たちの家族がこんなに苦しんだのに、幸せになろうとしている。許せない気持ちは分かる。
無論、一番悪いのは犯人。加害者家族に罪は無い。
それは分かっているけど、それとは反する言動を取ってしまうのが、人。
自分がもしそういう立場に置かれたらどうなるか、分からない。
被害者側だったら…?
加害者側だったら…?
世の理不尽さに虐げられて、市子は…。
筒井真理子が難役を見事に名演で体現。
存在感、複雑さ、弱さ脆さ、何処となく感じさせる狂気やエロス…どれを取っても文句ナシ! 彼女の演技を無視した日本バカデミーこそ袋叩きに遭え!
市川実日子も印象的な助演。事件前と後での市子へ向ける感情の変化や精神のバランスを見事に表している。彼女の演技を無視した日本バカデミーは…以下、同文。
深田監督の演出と脚本は先読み出来ず、ミステリーとは違った意味で展開から目が離せない。
『淵に立つ』に続く上質作。
…しかし、全体的にちと分かり難く、人によっては物足りなさを感じるかもしれない。
解説では“リサ”と名乗り復讐を企てる…とあるが、この復讐が些細と言うか、基子の恋人と寝てその淫らな写メを送るくらいで、それほど強烈な復讐劇ではなく、ハードなリベンジ・サスペンスを期待すると肩透かし。
全体的に解釈も人それぞれ。
かく言う自分は、加害者側の第2の人生の歩みと見た。
市子は出所してきた甥の身柄を引き受ける。(母親は自ら命を絶ったかすでに亡く…)
これからも世の理不尽なバッシングを浴び続けるだろう。
が、この甥を更正させ、真っ当な人生を歩ませる事こそ、これからの自分の人生。
甥が被害者側に謝罪したいと言う。訪ねるが、空き家に…。
その帰り道…。
市子は基子を目撃する。
ハンドルに手が掛かり、衝動に駆られるが、思い留まる。
基子は介護士の卵となっていた。
かつての交流や関係は決して無駄ではなかった。
タイトルの“よこがお”とは、見えない人のもう一つの半身の事を意味するという。
確かに人の“よこがお”は見えない。
相手が自分の事をどう思っているか。
フレンドリーな“よこがお”の反面はそれとは真逆の…。
人の卑しい“よこがお”ばかりではなく、善良な“よこがお”こそ信じたい…。
そう思わせてくれるラストであった。
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