「思いもよらぬ世界観」ボーダー 二つの世界 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
思いもよらぬ世界観
僕はこの原作を読んでいて、初めてフライヤーを見て、ティーナの異形さに衝撃を受け、そして作品を観て、原作とはかなり異なる展開だが、ジョーカーの根底にも流れている、僕達の世界の危うさとか醜い部分を感じざるをえないような衝撃を受けた。
僕達のエゴは、既に多くのものを破壊し、多くの種を滅ぼしてきた。
自分たちと異なる人種を受け付けず、排除しようとする者たちは一向に減る気配はない。
トロルは北欧の独特な民族的な世界観の産物だと思うが、もし、ネアンデルタール人やデニソワ人が発見されたら、僕達ホモサピエンスの末裔は、これを観察のために閉じ込めたり、実験に使ったりするのだろうか。
いろいろ考えさせられる作品だ。
そして、この作品のティーナもヴォーレも、容赦がないほど可愛らしさなど排除され、ロード・オブ ・ザ ・リングのトロルとは全く違って、僕達の人間社会とは相容れない異形さを呈している。
因みに、小説のヴォーレは、生きるために人間の赤子をさらうのだが、映画は人間に対する復讐心として、その動機付けが語られ、幼児ポルノは人間の醜い部分として付け足されて比較対照的に描かれている。
他にもいくつか異なる場面はあるが、分かりにくかったという印象を持つ人のために、少し説明すると、ティーナには自分のヴァギナが裏返って男根のようなものが出来て生殖します。また、ヴォーレの人間に似た無精卵は、更に人間の赤子にそっくりになる性質があって、それをヴォーレは、本当の赤子と取り替えるのです。
小説では児童ポルノマニアに売るのではなく、子供を欲しがっている人に売ってお金をかせぐという設定だったように覚えています。反社会的に描く方が、鑑賞者にうったえるものが大きいと考えたのかもしれませんが、こうした片隅で生きるものが怒りを抱いて、復讐心を持つという設定より、オリジナルの切なさの方が僕は好きだったので、ちょっとだけマイナスにしました。
でも、興味深いの作品だった。