「信仰とは」魂のゆくえ Rewind Thatさんの映画レビュー(感想・評価)
信仰とは
彼の行動に狂気が無かったかというと、それは明確に否定されるでしょう。 しかし私がもし彼と同じ運命を辿ったとしたら、熟慮の上で彼と同じ選択をしたかも知れません。
それくらい彼の行動には説得力がありました。
信仰の中で、自然に生まれ膨らんでゆく狂気がとても重要な要素だと思います。その描き方も素晴らしく気持ち悪かったです。
彼がそこまで歪んだ原因を、信仰のみに求めるのは苦がありましょう。同じ信仰で救われる人も確かにいるはずです。周りの環境といえばそれまでで、彼の牧師という立場も不運だったと思います。
「牧師にも牧師が必要だ」という発言がありました。それは彼の忌むべき強欲な(視点を変えれば現実的な)牧師からの発言で、彼は鼻で笑ったかもしれません。しかし、その後の展開から考えたら彼にとって、とても重要な言葉だったと思います。
気になったのは登場人物たちがみんな神の言葉を知ろうと、神の言葉を語ろうとしていることです。キリスト教(特にプロテスタントにおいて)は、聖書が究極の答えだと思っていました。(少し福音主義に寄りすぎ?) 彼らが悩み壁に当たった時、一向に聖書を開いたり引用しようとする素振りがなかったので、少し疑問に思いました。まあ監督は非常にキリスト教に精通された方らしいので、それが今の現実のプロテスタントの在り方を描いているのだと思います。
キリスト教の過激派に、自傷行為を推奨する一派がいることは知識として知っていましたが、現実としてみると本当に恐怖そのものです。
ラストシーンは当然 物語としては不完全ですが、そこで監督の描きたいことはもう十分描けたという解釈を私はしました。個人的にはあのあと計画は実行されたと思っています。しかし監督の描きたかったのは惨劇ではなく、そこに至る過程で、事件そのものを写さないことでそれを強調していると感じました。
と同時に、観客に与えるインパクトも大変大きいものでした。この作品は陰鬱でテンポの悪いようですが、意外と随所随所に描写や台詞で、インパクトを与えてくれるので退屈しません。
本当に面白かったです。