「イーサンはそろそろ主演男優賞かな」魂のゆくえ shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
イーサンはそろそろ主演男優賞かな
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イーサンの演技は全くもって素晴らしい。抑制の効いた静かな表現の中の内面で蠢く狂気と絶望感を見事に演じていた。立派な牧師の顔と狂気に呑み込まれていく自我。人々の救済のために導く言葉を与えているが、自らにはその言葉が帰することなく素通りする。言葉が言葉でしかない虚しさをウィスキーを使った演技で演じ切る。素晴らしい。
しかし、監督のポール・シュレイダーはもう過去の人のようだ。前半の淡々とした物語の進み方はとても良かったが、後半のトリップからイーサンの狂気に拍車がかかる辺りから、緻密さが崩れ、それに伴ったシナリオの行き着いたところが男女の愛に落ち着く陳腐さ。とても残念なフィナーレだ。老いを感じる悲しさの内にエンディングを迎えてしまった。
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