「難解だが刺さる」魂のゆくえ andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)
難解だが刺さる
原題は”First Reformed”、教会の名である。この教会(びっくりするほど人が来ない)の牧師であるイーサン・ホーク演じるトラー牧師の語りが物語の終盤までを支配する。
私はキリスト教に詳しくはないので、彼の語りは難解ではあるが、物語自体は現代の欺瞞的な部分を的確に表している作品ではないだろうか。「2050年には地球は壊滅するのに、そんな未来に生きる子を誕生させてよいのか」という葛藤を語る若い父親に、反論しつつも心を寄せるトラー牧師。彼も大義なき戦争で息子を失い、病の兆候を抱え、おまけに完全なるアルコール依存である。常に陰鬱な表情を示すイーサン・ホーク。彼の孤独は、暗さで表される。彼の周囲は暗く、色がない。そしてPCで検索するシーンは常に真っ暗な中で検索。深い闇だ。
彼の葛藤は、現代の環境問題、そして宗教とはどうあるべきなのか、現実と折り合いをつけるとはどういうことなのか、を考えさせられる。何もかもを抱えてしまったトラー牧師だが、最後のあのシーンは予測できなかった。あれは救いなのだろうか。救いであってほしいように思う。そして彼は日記に最後に何を書いたのだろうか。ずっと考えているうちに不意に物語は終わった。
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