老ナルキソス(2017)のレビュー・感想・評価
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題材と奥深さは視聴者への挑戦?
ショート作品は限られたシーンの表現を取捨選択する難しさがある。
つまり視聴者はどれだけ汲み取ることができるかということになる。
そしてこの作品
物語そのものを汲み取ることは簡単だったが、主人公ヤマザキの心理を推し量るのはなかなか難しい。
昔の彼は「それ」で良かったようだ。
老いたことで痛みが快楽としてでなくなり、痛みのままになってしまっていることが彼にとっては堪えられないことなのだろう。
若く美しい若者とプレイしても得られなくなってしまった快楽を、通りすがりのホームレスに依頼した。
寒い時期のビルの屋上
腕を縛られて殴られ蹴られ、「変態」と罵られて財布を奪われた。
彼自身が求め続けたものから受け取ることになった代償
絵本作家の性的マイノリティであり、マゾヒズム
絵本にあるのは自身を象ったミノムシ 孤独
そんな彼は、自身をナルシソスに例えている。
ここがこの作品の謎であり面白さなのだろう。
ナルキソスはギリシャ神話に登場する美青年で、自分の姿に恋をしてしまい、最終的には水面に映る自分に見惚れて命を落としす。
ヤマザキもまた、かつては自らの美しさに誇りを持ち、他者との関係よりも自己の美と創造性に執着して生きてきた人物
ただし、その絵本で表現しているように、実際には孤独と寂しさがあったと思われる。
自分自身を表現したいと思うのが人間だ。
そのためにあらゆるジャンルが存在する。
ヤマザキは、そんな自分自身が好きだった。
しかし今、同じ気持ちになれなくなってしまった。
レオのおかげで少し希望を取り戻したのだろうか。
最後にレオのお尻を見て武器で叩くしぐさをしたのは、自分の中に感じたサディズムだった。
この新しい自分の発見こそ、この作品が伝えたかったことなのかもしれない。
古希
老い、ゲイ、マゾヒズム、そしてナルシシズムと天丼になってしまっている男のショートストーリーである。これだけ乗っかれば何か展開が転がるのかと期待はしていたのだが、鑑賞してみると内省的な話しに始終する。そうなると主人公への共感性みたいなものを欲したいのだが、いかんせん通常の人とはあまりにもかけ離れている人物像なので理解するのに困難だ。話しのフック自体も凝ってる訳ではなく、良く言えば素直だが、しかしこの手の偏った作品なのでもう少し工夫が欲しかったのは我儘だろうか。このストーリーの世界の人達に向けての作品ではないことは当然である。なにせリアルではもっとドラステックなのだろうから手緩いことは想像に難くない。ではターゲット層は誰なのかというと、単純に映画ファン、しかもB級以下の作品が面白いと思う斜め目線の人達だろう。ま、それこそ“偏愛”なのだがwそのニッチの市場を愉しませるには余りにも軽い作りだと思う。もしかしたら、この作品はパイロット版で、興味ある制作会社や配給会社への売り込みのお試しなのでは? 正直完成度は低いと言わざるを得ない。
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