「映像は素晴らしいが物語のクォリティが惜しい」ルパン三世 THE FIRST アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
映像は素晴らしいが物語のクォリティが惜しい
ルパン三世はこれまで 10 作も劇場版の映画が作られてきたが、今作では遂に全編 CG アニメとなった。まずは映像が素晴らしいリアリティを誇っていたことに驚嘆した。水の表現やマジックアワーのオレンジ色の世界などが見事に表現されていて、これまでのアニメーションのクォリティを凌駕していた。舞台がパリということもあって、パリの街並みが出てくるが、どの場面もため息が出るほど美しかった。
物語は第二次大戦末期に厖大なエネルギーを作り出した科学者が記した日記の争奪戦から始まり、やがてそのエネルギーの正体へと話が進むわけだが、いくら何でも重力がコントロールできたり、地上でブラックホールを作り出すなどという話はあまりに荒唐無稽過ぎて、リアリティを欠く結果になってしまったのが残念であった。いっそ入っていたのは、アインシュタインが亡くなる直前に密かに完成させていた統一場理論の論文だったとかいう方が面白かったのではないだろうか。難解な数式の羅列に面食らう一行を尻目に、数学の才能を受け継いだレティシアが読み解いて行って謎の装置の仕掛けを理解すると言った話なら数倍面白くなったのではないかと思う。
キャラクターデザインは、ルパンと次元はほぼ問題なしだったが、五右衛門はやや鋭さと神秘性に欠けてしまった感じがした。最も問題があったのは峰不二子で、顔の造形から体のプロポーションまで違和感が抜けなかった。新キャラのレティシアは、もっと可愛くした方が良かったのではないかと思った。声優は、次元を演じた小林清志が 86 歳で頑張っておられたことに感激し、また銭形警部を演じた山寺宏一が初代の納谷五郎の雰囲気を見事に再現していたのが非常に嬉しかった。
音楽は、シリーズ全作を手掛けている大野雄二が衰えることなく雰囲気を盛り上げる曲を書いていたのが素晴らしかった。演出は前半はミステリアスで良かったが、謎の装置が出てからは、その操作法が簡単に習得できてしまうところがご都合主義的だと思った。カリオストロの城の完成度に比べると、やや物足りない感じがした。3D CG という道具立ては次回以降もツールとして使えると思うので、続編に期待したい。
(映像5+脚本4+役者5+音楽4+演出4)×4= 88 点。