「ジュブナイルと感動要素が加わった正統続編」ゴーストバスターズ アフターライフ mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュブナイルと感動要素が加わった正統続編
子供の頃何十回と見倒したシリーズが32年の間をあけて帰ってきた。
それだけで嬉しいが、本作は“長期間あけた続編もの”中でも最高峰の
OPで完璧に心を掴まれた。コロンビア映画を象徴する女神シーンでは
一作目をリスペクトされた曲が流れ、暗雲渦巻く山頂でプロトンパック
独特の発射音を伴った光線が天に向け伸びるスペクタクル画面、大急ぎ
で山から離れる一台の車の運転手は影ながら特徴ある高い鼻にイゴン
だと察していると、見覚えある怪物が彼を襲いそして・・・映画タイトル
といった具合で、えっ死んだ?どうして一人?これからどうなる?などなど
往年ファンの見たいものを出し惜しみせず描写しつつ、これからの
展開が気になる幕開けに続編を望んだ身としてたまらない気持ちになる。
数十年の歳月が流れ、主役陣は1世代ぶん飛ばしイゴンの孫達がメインを
張る。中でも孫娘の人物デザインが素晴らしい、才能・見た目・性格が
まさに祖父の血を色濃く受け継いでおり『あぁー…孫っ!』感にあふれ
見た目通り理性的だが意外と結構喧嘩っ早い所や、未知の体験に興奮し
喜ぶ様など1、2作時の彼にそっくり。演じたのはマッケナ・グレイス
という子で調べると『ギフテッド』でも才女役として出演していた。
同作は見たのだが、髪型と眼鏡で印象が違ったので気付かなかった。
さらに彼女は今作のED曲も歌っている、吹き替えを見た後に字幕も
鑑賞してからわかったが、なんとも多才な少女だ。物語は序盤から
終盤手前まで孫世代の生活を軸にそこへバスターズの道具が登場し話が
展開していく、正直地味な話と面白さが伝わらない科学ジョークが
飛び交ったシーンばかりだが、懐かしい道具が登場する事で飽きる
のを回避している、特に幽霊探知機が重要なファクターになるのが熱い。
この道具が初めてオバケを見つけ、バスターズ結成の切っ掛けとなった
のが一作目、それから時を経て今作でも物語が動き出す起因となる。
しかもお化け退治の道具としてではなく、イゴンが娘や孫とコンタクト
を図るのに利用するのがアレンジが効いて良い。またオリジナルキャスト
の扱いと見せ場の作りが最高、最初に出るのは受付係のジャニーン。
イゴンとの友好関係が続いているのが見れて嬉しく思い、続いて
レイモンドが2作目で登場した彼の本屋と共に登場、旧作は全部好き
だから、僅かでも2の要素が出ただけで興奮する。そして終盤での
バスターズが揃い踏みで現れるのがまぁカッコイイ。ベンクマンの
軽口も淡々としてる様も変わらず、ウィンストンも変わらず真面目だ。
ED途中にディナが出たときは本気でビックリした。クレジット表記後に
出てると後で分かったが、初観賞時は強烈なサプライズだった。彼女は
ベンクマンが一作目冒頭で行った理不尽な実験を彼自身に行うだけの
短いやり取りだが、演者のシガニーの嬉しそうな顔と今だったら炎上
待ったなしの実験内容を茶化しているのが、例え演技だとしても出演者
自身がすごく楽しんでる様に見えてほっこりさせられた。
そして今は亡きイゴンことハロルド・ライミスへの敬意あふれる演出。
物語での彼の行動理由、終盤の登場と去り際の娘とのシーンの美しさ…
まさかこのシリーズで涙腺が緩む程感動させられるとは思わなかった。
調べると監督はアイヴァン・ライトマンの実の息子だとわかったが
シリーズへの理解と思い入れ、愛情深さからくる出来だと納得した。
親子の愛情が映画に含まれてると思うのだが、制作者側にもその要素は
十二分に込められて作られたことだと思う。アイヴァン監督は今年の
2月12日にこの世を去ってしまったが、再びこのシリーズの続編が
出ても彼の息子ジェイソン氏が作るなら喜んで劇場に足を運びたい。
地味なシーン以外文句のつけようのない完璧な続編ぶりと私事ながら
この映画の前に見た『大怪獣のあとしまつ』で受けた心傷回復の一助
となった感謝を込め、この評価をもってファンには大いに勧めたい。
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余談と核心のネタバレだが、本作のオバケのボスは一作目で登場した
ゴーザなんだが、この神が現世にやって来る為の建築物を手掛けた
イヴォ・シャンドアも登場する。名前だけだった1からようやくお目見え
だが、降臨直後のゴーザによって真っ二つに裂かれてあっけなく退場する。
一見するとゴーザの凶悪さを表現するだけの哀れな存在ーーーと思ったが
後日、PS3で発売したゲームを見返したのだが、こちらのを見た後だと
何故シャンドアが殺されたのか合点がいた、詳細は省くがアフターライフで
崇拝対象が復活して喜んでいるより引き攣ったように見えたのも彼の風貌が
件のゲームのキャラデザインと似てたのも、監督はあえて意識したのかも。
一応続編として作られたゲームではあるが、もしそうならジェイソン監督の
シリーズの網羅ぶりと要素の取捨選択のうまさに驚くばかり。