劇場公開日 2019年9月27日

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「泣けるリーマンのダサカッコいいハードボイルド」宮本から君へ ロンロンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0泣けるリーマンのダサカッコいいハードボイルド

2019年10月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

私は原作は未読だがテレビドラマで宮本のファンになった還暦男だ。宮本の世間体にこだわらない、一見無茶苦茶な思考がとても好きになったのは、彼が常識的で世間の慣習に縛られた、いわゆる大人の男が、やりたくても出来ない事を社会通念を超越して、なんとか実現してしまう実行力に胸を打たれるからだ。良くあるハードボイルドは不良学生やヤクザ、警察の中で生じる対抗する相手が明確にある構図が普通だが「宮本から君へ」の面白さには彼が敵対するのは自分以外の社会的な枠組みや、取り巻く相手、それも友人や恋人も含めたすべてに向けられている事にある。普段は愛されキャラである宮本が理不尽だと感じてしまえば全ての対象が外敵となるから、何処でどうなるかが予想出来ない不確定要素が見る側を予測不能なスリルとサスペンスに導いてくれる豹変する性格の面白さ。守るべき相手の感情さえ無視し宮本流を貫く一方でノンキな面もありながら、その極端で無神経な性格で正義を貫く姿にとても常人には真似出来ない覚悟が見え、敵となる対象を乗り越えた時の爽快感に心を揺さぶられ共感してしまう。そうなったら、やっぱり宮本は大した男だと納得するしかない。こんな正義の味方が現実に居てもおかしくないと思わせるリアリティも半端ではない。これほど熱量の高い映画は滅多に見られるものではない。的確なキャスティングに脚本と演出の冴え。映像の細部までこだわった作り込みから音楽と、とても良く仕上げられた納得の逸品だ。
だが、これはあくまでオトナの男の見方。現実に宮本のような男と女性が恋愛しようものなら途中で逃げられるのが普通で彼の極端な性格にはついて行けないはずだ。

本作は私のようなジジイが感動するのだから若者ならなおさらだと思います。もちろん宮本の極端さに好き嫌いはあるはずですが主演の二人の壮絶な演技に圧倒され、魅了されます。もちろん最後の決闘シーンの迫力は見ものです。甘い恋愛映画とは一線を画す、意気地の無いオトナ未満の男が元気になりそうな愛すべき映画の誕生です。

ロンロン