「映像や空気感はよい。ストーリーには新鮮味なし。」アド・アストラ しばもんたさんの映画レビュー(感想・評価)
映像や空気感はよい。ストーリーには新鮮味なし。
CM等の前情報が一切ない状態で、鑑賞しました。
近未来の宇宙旅行を描くロードムービーとしては、非常に面白かったです。
ロケット内の過ごし方や、経由地で巻き込まれるトラブルや…。
しかし、問題のストーリー本体には、特に奥行きを感じなかったです。
全部見終わっての印象は、
スケールと美術を凄くした「幸せの青い鳥」を見た、って感じ。
非常に寓話的に覚えました。
私が寓話に対して抱く印象は、「鑑賞者にありがたい教訓を与えようとしてくれるが、
ストーリー自体は面白くはないもの」。
この作品には、何が足りなかったのでしょうか。
①ブラッド・ピットが常に冷静沈着という設定で、とにかくパニック感が足りない。
(このスーパーマンは、きっと無難に解決しちゃうんだろうなーという冷めた感覚)
②宇宙での孤独が人を狂わせることを強調するあまり、とにかく全編が暗い。
③ブラピとトミー・リー・ジョーンズの間の、幼少期における心の交流の描写が少なく、
ブラピが父を追いかける個人的な理由が非常に希薄すぎる。単に命令だから?
ブラピになかなか感情移入できない。
④「地球外生命体はいなかった」と言わせてしまうほど、世界観の広がりのなさ。
特に④ですが、気になった描写は、以下の通り。
・月にむかうロケット内で、枕とブランケットを有料で提供してもらう
・月面の旅客ターミナルに、SUBWAYがテナントとして入っている
・火星の休憩室の描写(プロジェクタ―から投影される映像と、スピーカーからの音楽)
・火星で音声の収録をするのが、よくある無音室
・「地球外生命体はいなかった」
成層圏?にまで伸びるアンテナを冒頭で描き、惑星感ロケットの映像を作りこんで観客をワクワクさせておきながら、自分で世界観をスケールダウンさせている印象です。
リアリティといえば聞こえはいいですが、果たしてSF物を見にくる観客の望んでいたものでしょうか?違うと思います。
最後に、ブラピの演技については、色気と暴力性を匂わせる「ファイトクラブ」のほうが、断然好きです。
恰好をつけているブラピは好きですが、達観・諦観しているイケメンおじさんの役は、どうも…。