「父=神の孤独と人の孤独」アド・アストラ Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
父=神の孤独と人の孤独
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レビューで評判が悪いのもわかります。
これはキリスト教の感覚を知っていないと理解できない話です。「自分探し」の小さな話と誤読してしまうのもその辺が理由でしょう。
しかし、これは神と人類についての映画です。
「父は死亡した」「いや、姿を隠しているだけだ」
神は死んだのか、どこかに存在するのか。
宇宙の彼方に消えた主人公の父が「サージ」の源とされているのも、神がしばしば雷として表現されることを想起させます。
それに、主人公の妻の名がイヴ。その夫である主人公は神の直接の息子であるアダムとして暗示されています。
宇宙の探査が進み、人類がどんどん宇宙に進出したら、宇宙は神秘性を失い、通俗化していきます。
主人公がテーマパークのようになった月に苛立ちを覚えるのは、そのまま神殿に巣食う商人に怒りを表したキリストです。
このように宇宙が神秘性を失っても、人類は「神」の存在を感じ続けることができるのか、というテーマが伏在しています。
一方で、非常に現代的なのが、神なんかがいるということになると逆に困ったことも起こる(宗教対立など)。もはや神は人類の敵ではないかという転倒も描かれています。
それでは、「神なんかいない、いらない」ということになればよいのか。でも人は今でも神に祈るし、人が死んだら神のもとへと送り出します。(そういうシーンがわざとらしい感じもするくらいに出てきます)
しかし、神と人、実は共通するところもあり、恐ろしく孤独な存在だということです。後半はそこにテーマが絞られていくように感じました。
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