「宇宙を舞台にした人間再生ドラマとしては・・・」アド・アストラ コウジとマニさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙を舞台にした人間再生ドラマとしては・・・
「残念!!」というのが率直な感想です。
ネット情報では「2001年宇宙の旅」「インターステラー」「ゼログラビティ」「惑星ソラリス」などを引き合いに出して論評されていたので、期待半分不安半分で見ましたけど。
結果、それらの作品の足下にも及ばない浅さと軽さが印象に残るだけでした。
良かったと思うところは、
ブラッド・ピットの演技自体は、前半から終盤にかけての変化を抑え気味ながらじわっとしっかり表現していて、拍手を送りたいと思いました!
トミー・リー・ジョーンズの、短いながらもインパクトのある演技も、あざとくない狂気の表現で、人間味を感じました。(一部、怪しい印象のアップが異常に長く映されていましたが、これは監督の判断ミスだと思いました)
宇宙まで届く超高層な塔や、垂直に着陸するロケットなど、現実に今実現化されつつある最先端の設定がふんだんに描かれていて、面白く見られました。
残念に思うところは、
哲学的(?)ムードを高める意図なのか、主人公のモノローグが最後まで時々入るので、ストーリーの流れに集中できずに終わりました。モノローグの内容自体が段々深くなっていくとか、主人公の心境の変化を巧妙に表現しているとか、それ自体に魅力があればまだ良かったかも知れませんけど。
宇宙空間にいるというムードを高めるためなのか、とにかくセリフのない時間が長くて、正直飽きてきました。これも、映像だけで緊張感が高まったり感情移入ができるようなレベルだったらプラスに働いた演出になったんでしょうけど。
物語の主軸が「父の人格の影響に縛られて自己否定感の固まりになり、厭世的にもなっていた主人公が、父と対面したことによってその呪縛から解き放たれ、自分や周囲を愛する気持ちを得る」というものだとすると、設定とのサイズ感がアンバランスだと思いました。「ゼログラビティ」よりちょっと長いぐらいの映画にした方がよかったのでは?
総じて感じたのは、脚本作りから制作に至るまで、作品の方向性を客観的に判断する冷静さが足りなかったんじゃないかと思います。「これだけの情熱と予算と出演者が揃えば、良い映画になるはずだ」という、希望的観測に流されてしまった感じ。
監督に絶大な知的力量があれば結果は違ったんでしょうけど。
SF映画で人間の奥底を考察するというジャンルは大好きなので、これからも見続けたいです。
今回は、好きなだけにガッカリ感も強く、批判じみたことを延々と書いてしまいました。