「ラテン語タイトルの意味と、人間の物語」アド・アストラ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
ラテン語タイトルの意味と、人間の物語
このAd Astraは、「ad astra per aspera 」というラテン語の格言の一部から取られたタイトルで、「困難な道(=aspera)を通って(=per)星座(=astra)を目指す(=ad)」という意味で、一般的には「困難を乗り越えて栄光を掴もう」という標語として使われているらしい。
この物語はSFではあるが、父と息子の物語であり、人間の物語でもある。
人間にとってアイデンティティとは、なんだろうか。
遠く離れた愛も憎しみもない、生命などいない宇宙で人間が唯一無二であることを確認することだろうか。
常に自分を律し、何か目標に向かって突き進むことなのだろうか。
愛情を振り払い、感情を無にして、繰り返される怒りを克服し、苦悩を封じ込め、葛藤を乗り越えた先にあるのは、たとえ栄光であったとしても、それは、宇宙空間の愛も憎しみもない世界と同じなのではないか。
カウンセリングの質疑応答の相手がAIであまりにも無機質に思えたり、ロイの父親に向けたシナリオ通りのメッセージより、アドリブの気持ちをこめたロイのメッセージの方が心に響くように感じるのも、現代社会に対する警鐘のようだ。
困難を乗り越えて海王星にたどり着いたロイが、更にその先に見つけた答えも僕達に語りかける。
先のことはわからない。ただ、身近な人々と寄り添って、愛を分かち合って生きたい。
昔見た、タルコフスキーの「惑星ソラリス」やキューブリックの「2001年宇宙の旅」のような、クリアとは言えない映像も、ノスタルジックであると同時に、ストーリーや言葉に集中できるように感じられた。
テッド・チャンの「あなたの人生の物語」が原作の「メッセージ(Arrival)」は、文庫本でたった100ページ程度の原作が、あれほど哲学的なメッセージを含んでいるのに、映画は過度にSF色を強めて、逆に興醒めしてしまったように覚えているが、こうしたSFの物語は多くは作られないだろうが歓迎したいと思った。
どんな映画でも、そこで何を発見するか、読み取るか、が観る側の力量だと常に思ってます。
そういう意味では、この映画に対して私は力量不足。
ワンコさんは見事な力量を示されました。
勉強になりました。
お気遣い頂いてしまったようで、すみません。
iPhoneだとコメントが送れなかったり消えたりすることがありますよね!自分は懲りずに連打しますが(^^)。
ご返信はお気になさらず。