「イカリエから50年分の進化」ハイ・ライフ bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
イカリエから50年分の進化
どっと疲れたぁ。監督さん、フランス人ですやん。前日はクリス・マルケルの哲学詩100分マラソンで、俺、脳死。今日は今日で宇宙漂流無言劇。連日の精神的拷問で盆連休を終えることになるなんて…
1963年のチェコスロバキア映画「イカリエXB-1」を思い出してしまうのは不可避。地球出発のミッションに狂いが生じ事実上の漂流。別動隊の船発見も壊滅後。違うのはオチ。
こちらはブラックホールに捕まってしまいます。
ラストは事象の地平面を超えた後を描写していると思われ。だって、すでに小型宇宙船の姿も無ければ宇宙服も着ていない。
光さえも脱出出来ないブラックホールの、その中心に近づくと、そこに閉じ込められた光に包まれると仮定しているみたいです。ただし、超高密度であるだけに温度も凄まじく高温化。重力に押し潰される前に、全ては燃焼し尽くすと思われますが、そこは「事象の地平面(シュヴァルツシルト面)」。ブラックホールの特異点は、無限に時空が捻られた場所。密度・重力が無限大に発散しているとされていて、物理法則やあらゆるものが当てはまらない、未知の世界。未知の世界に、さあ行こう。が、ラストカットかなぁ。
地球化学の物質は瞬時に焼き尽くされるが、事象の地平面を超えた量子物理学のヒト(だったもの)は未知の世界に足を踏み入れて終わる。
イカリエから50年経過。量子物理学と宇宙物理学の進歩の分だけ、ラストのシナリオも進歩してるんじゃないかと思う次第。
しかし、やっぱりミア・ゴスはエグいなぁ、可愛いけど。ウィロー役のジェシー・ロスとの再会が楽しみです。
8/30 ちょっとだけ追記
超絶なハッピーエンドって解釈。"High Life" は「高度生命体」と読みました。ありがちなオチですが、終わり方のビジュアルが70年代のB級カルト的だった点は、俺的にはマイナスでした。
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9/19 面白い本を見つけたので追記
「とんでもない死に方の科学」なる不謹慎極まりない本に、「ブラックホールに身を投げたら」どんな死に方をするかがありました。
「小型のブラックホール(以下BHと略)の場合。BHの周囲は、ほぼ純粋な真空。重力源からの距離が近い場所と遠い場所の間には、作用する重力加速度の相違により、『潮汐力』が働く。人の身体は、この潮汐力により、最終的にはバラバラに引きちぎられる。特異点を過ぎれば、重力は物質を押し潰す。その力は、人の身体を構成する物質の化学結合よりも大きくなる。つまり人の身体は、特異点に向かって一列に進む原子の行列となる」 要約終わり
まぁ、おっそろしいこと。