「レモン農家はトンネルの入口ではない」ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
レモン農家はトンネルの入口ではない
一部の人、一部の考え方として一番上はウォール街で、一番下はレモン農家だ。
トンネルの先というのは出口のことであり、出口とはゴール、ゴールは、一部の人にとっては金銭的に豊かに暮らすことだ。
つまり、競争相手に先んじ金銭的に豊かになることを目指す者たちのドラマなのだが、作品の中ではアメリカに暮らす様々な人を捉えながら、トンネルの先にあるゴールとは人それぞれ違うのだということを描く。
余命が僅かと知った主人公は、落胆しながらもプロジェクトの進行を止めない。もはや彼が金銭的に豊かになることはないわけで、ではなんのためにプロジェクトを進めるのかという話になる。
トンネルの先を目指すことこそが彼の望んだゴールであり、ゴールにたどり着いた結果が競争相手より劣っていたとしても、そんなことは関係ないんだ。
当然金銭的に豊かとはいえないアーミッシュの村の人々はゴールを目指さず無気力で不幸なのか?もちろんそうではない。
人が目指すものはそれぞれ違う。豊かだと感じる基準も違う。
作中には一度も登場しなかったレモン農家が不幸で可哀想な人々なのかは、当人たちに聞いてみないとわからないのである。
妻がジェシー・アイゼンバーグが好きなので観たけれど、そこまで面白いわけではなかった。
演出のテンションが重めで、やってることのテンションとイマイチ噛み合ってない感じがした。
病気が発覚する前から余命僅かのテンションで進んでるような感じ。
つまり、なんかすごいことをしてるんだけど、その「スゴさ」がイマイチ伝わってこないんだよね。
作品のテーマ的には問題ないのだろうけれど、観る側が観るための推進力にする娯楽性はもう少し担保してほしかった。