ハウス・ジャック・ビルトのレビュー・感想・評価
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面白かった!
誰でも心に闇を持ち、悪しき感情や妄想、傲慢、卑屈、自己嫌悪は一旦そこに押し込める。そしてその闇の中から「正しく生きたい!」という原初の欲求(光)が生まれ、激烈に発動するのだ。
何でもかんでもSNSに発信し、つまびらかに自分の感情にスポットライトを当てる現代人。心の闇が問題なのではなく、きちんと闇を持たないことが問題だと思う。
閑話休題
ドラクロワもブレイクも、自分の闇や悪魔と葛藤しながら様式を破壊し、欲望を昇華させた芸術家だ。
ところが欲望の彼岸には「享楽」がある。享楽は闇を必要としない。光と闇の境界線がないから、葛藤がまるで無い。だから享楽者は決して芸術家にはなれない。
マット・ディロンにいつも寄り添うブルーノ・ガンツは葛藤を生じさせない。従者のようだった。
いくら生涯をかけて「理想の家」を構築しようとしても芸術が生まれるはずがない。
フイルム写真は、薬品を使って光の中から陰影を浮かび上がらせる、どこか魔術的なイメージを持つ。光と闇の境界線を感じさせる象徴のようだと思った。
ラスト。葛藤も感動も持ち得ない主人公は有機的なマグマではなく、モノクロの最も濃い黒点に同化した。
サイコものでありながらコメディ要素も含む、一筋縄でいかない作品!
"ミスター洗練"
Mother Gooseの詩
2019年に入りユマ・サーマンの映画を観るのは3本目でどれもこれも"a box office bomb"になりそうな映画ばかりで、鼻をつんとあげてしゃべるオーストラリアの女優ニコール・キッドマンのように出演作品は決して当たらないということになりそうだ。
本作は、ジャックというシリアルキラーの物語をまるでモキュメンタリー映画のような撮影の仕方で、わざと画面を揺らして手振れ感を出したり、ズームにしたと思えば引きで撮ったりと観ていると段々ウザいものとなる。
アメリカのアマゾンではすでに公開されていて、いいか悪いか両極端な評価となり、☆1と☆5が均等に40%と別れている。
最初、ジャックともう一人の男との会話から始まる。それから物語が始まるのだが、最初のほうはシリアルキラーとしての凄惨な殺し方を見せたりするのだが、途中で始まる二人の押し問答のような会話を聞いていると訳が分からなくなる。ラストにはコーキュートスのような世界観に誘うブルーノ・ガンツ演じるヴァージという人物が登場すると意味不明となってしまう。しかし一見の価値があるのは、この俳優のすごいところが何気なく見ることが出来る。なぜそこまでしたのかこんな映画のために聞きたいくらいだ。
アメリカの新聞紙Chicago Tribuneの記者がこのように述べている。「この映画は連続殺人鬼のつまらない映画の歴史の中で最も退屈な連続殺人の映画かもしれない。」
グレン・グールドの映像がたびたび出てきたが彼の言う「芸術の目的は、瞬間的なアドレナリンの解放ではなく、むしろ、驚嘆と静寂の精神状態を生涯かけて構築することにある」というところからきているのか?デビッド・ボーイのフェイムがいちいち流れるし。
3人ほどマンハンティングするところが出てくるが、惜しいのは人の皮をはぐシーンが出てくるのではないかと期待したが、期待を裏切られた。つまり、中途半端な映画だと個人的に受け止めている。しかも2時間半もある。
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