「めんどくさいファンになってしまった」ハウス・ジャック・ビルト toukyoutonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
めんどくさいファンになってしまった
またこういうオチ!?みたいな感想を抱いた。トリアー監督といえば胸糞なのでいつも通り平常運転の作品なんだけど、この監督の作る、鬱屈とした自己に閉じ籠もる登場人物たちが、どういった変化を見せるのかという期待をずっと個人的に抱いている。
今作はそういう意味では変化や新しい活路など無かった。
冒頭の主人公を凄まじく侮辱する女性なんてそうそういるもんか、虐殺のスイッチとして都合よく登場させてんじゃないや。途中の「なぜ他人は自分に冷たくする?」って感じの主人公の台詞がこの映画で初めて感じた生の声だった。言いたいことは、テーマはこれじゃないの。
そんなめんどくさい感想を持ってしまった。
深遠な自己の世界の描写として扱うには唐突で一貫したテーマもなく、断片的であり、その断片が表面的にしか繋がっていないのでどちらかというと自己陶酔に近いものをジャックから感じた。
ジャックが「いいな」って思ったり崇高だと思ったテーマを露骨に精神世界に反映しているように思えてしまい、幼く感じてしまった。演出される精神世界の劇場・煉獄もジャックの単なる雰囲気の取り入れとしか思わない。
なので現実で建てた木材を使った家はお粗末で、ずっと続けてきた殺人の死体でだけ家を建てれたわけだ。彼の家は彼のいいなって思った教材を使った内面世界でしか存在しない、外界との接触は不器用を突き抜けた殺人だけ。
恋人ごっこもできる器用な一面もあるから普通に生きれたと思うけど、本人が無理だって思うなら仕方ない。
彼の好んだ芸術家や作品や建築は、芸術家たちが過ごした時代、世相、人々との関わりを営んできた上で生み出されたもので、それが積み重なって生きるということなのだけれど、ジャックはこれを死んでも好まないし理解もできないだろう。というか自分の欲望に負けてしまうというか。現に自己に閉じこもったまま死んでしまった。