「建てられなかった家」ハウス・ジャック・ビルト Kさんの映画レビュー(感想・評価)
建てられなかった家
正月からアマゾンプライムでトリアーを発見。なんとなく覚えていた邦題からはイメージできていなかったが、直訳すれば「ジャックが建てた家」だ。結論としてジャックは建築家としてまともな家は建てられなかった。それはあまりにも場当たり的な連続殺人をそのまま投影しているようだった。12年の間にあれこれ工夫を凝らし求め続けるが統一感がない。シリアルキラーの物語にありがちな一つのこだわりがない。乳房の財布は面白いと思ってしまったが、苦笑するしかないひたすらに無茶苦茶な着想。でもこれが心弱っている今の自分の身に染みた。まるで私だと。
そのただの無茶苦茶な物語がただそれだけでなくなるのは冒頭から時折挟まれる「対話」だ。最終章で冷凍庫の奥の扉を開け、その声の主に「材料」を気づかされてからのクライマックスは宗教画の荘厳さで、まるで別の映画だった。ニンフォマニアックも同様だったが、クラシックで荘厳な額縁に現代風の下卑た風刺絵を飾るが如くの構成がトリアーなのだろうと思った。
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