「観ているこちらも狂いだすサイコパス劇薬映画」ハウス・ジャック・ビルト 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
観ているこちらも狂いだすサイコパス劇薬映画
ある建築家を目指す男の殺人の告白が対話形式で進んでいく、劇薬映画。
主人公ジャックは所謂サイコパスの殺人鬼。
最初から最後まで、彼なりの家を造ろうとする中で、殺人を繰り返していきます。
被害者たちは皆、少々不用心な気がしますが、ジャックは出会った人を容赦なく殺し、巨大冷凍庫に保存。
彼の殺人人生を5つの出来事に分けて、話が進みます。
とにかく不思議な映画体験をしたという感じですね。
ジャックがただただサイコパスなので、死体を並べて写真を撮ったり、乳房を切り取って財布にしたり、家族を撃ち殺したり、全く共感できませんでしたが、受け付けない感じではなく、どんどん観ているこちら側が深みにはまっていきました。
途中途中で、ヴァージとの雑談に合わせて組み込まれる映像も強く印象に残ります。
中でも、何度も使用されていたカナダ人ピアニスト、グレン・グールドの演奏はなんとも不思議な感じでした。
ジャックの夢は自分なりの家を造ること。
何度考えても思い通りにいかず、結論(?)としてあの死体の家になったというのは、ここまで期待させといて流石だなといった感じです。
全体的に建築のことや哲学的要素、それから最後のエピローグなど、かなり映画としては難解な感じでしたが、ストーリー自体は5つに分かれているということもあり、すんなり入ってきました。
個人的に特に良かったと思ったのは、2つ目の出来事の際に、血痕が気になって何度も何度も家に戻ってしまう(彼の障害の症状なのでしょうか?)けれど、5つ目の出来事ではパトカーのサイレンもそのままで行ってしまうようになったという所(殺人によって障害が軽くなった?)と、楽しいピクニックでの家族狩りですかね。
子供を撃つシーンだけでも辛いですが、母親を最後に殺すというように、動物の狩猟のようにしているところが、何とも衝撃的でした。
エログロ上等、目を背けたくなる映像もありますが、ナイフを先に写してくれたり、殺すまで溜めがあったり、殺すシーン自体はなかったりと、それなりに配慮があるので、そこそこの耐性がついていれば難無く観れると思います。
かなりヤバい映画ですが、僕は気に入りました。
ゾッとするほど、魅力的
まさにそんな感じです。