劇場公開日 2019年6月14日

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「【芸術家シリアルキラーが理想の家を建てるまで。そして、地獄に落ちる・・。】」ハウス・ジャック・ビルト NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【芸術家シリアルキラーが理想の家を建てるまで。そして、地獄に落ちる・・。】

2020年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

知的

難しい

ーつくづく、ラース・フォン・トリアー監督は面倒な奴だと思いながら、鑑賞。多分、極端な躁状態で撮影したのだろうと、勝手に邪推。-

 物語はシンプルで、孤独な技師ジャック(マット・デイロン)が山道を運転中、車が故障して困っていた女性(ユマ・サーマン)を一度は助けるが結局は紅いレンチで殴り殺すところから、彼の奥に秘められていた残虐性が発露し、章立てで殺人を繰り返す様が描かれる。

 彼の脳内には、ブルーノ・ガンツ演じるヴァージの声が常に響き、彼にイロイロと囁きかける。
ーヴァージはジャックにとっての、善性と悪性を兼ねた堕天使の様な存在だろうと思いながら、鑑賞続行。-

 ■ラース・フォン・トリアー監督は、精神的に問題を抱えている事は巷間では有名だが、その根底には人間とは悪なるモノであるという、性悪説に準拠した考えがあるのは、明白であろう。
 ー彼の愛読書は、古くは”悪徳の栄え”や近年で言えば、コーマック・マッカーシーの作品群ではないだろうか?ー
  彼がこの作品で何を訴えたいのかは、様々な解釈が出来るであろうが、”人生とは不条理なモノであり、抗えない”悪”に直面するのは仕方がない事である。そして、その”悪”自体も自らが”悪”である自覚が薄いのである、という事を”戦時中の出来事をカリカチュア的に描いたシーンを挿入している所”から、勝手に推測する。

 主人公、ジャックが躊躇なく殺人を繰り返すシーンも快楽殺人的には描かれてはいない。まるで、作業を淡々とこなすように、人を殺めていく様が却って怖い。

ーさて、精神を浄化するために、パゾリーニ監督の「ソドムの市」を鑑賞しよう・・。-

NOBU