「出て行け、二度と戻ってくるな」ハウス・ジャック・ビルト KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
出て行け、二度と戻ってくるな
とある殺人中毒者「ミスター洗練」が語る、数編のエピソード。
一つ一つのエピソード映像は短編スラッシャー映画のように、挟まれるジャックとヴァージの対話はサイケなコラージュのように、現実と幻が混ざったような大団円は宗教画のように、それぞれ映し方が全く違うつくりが面白い。
スマホのムービーか?というほど粗い映像になったり。
人が殺されていくまで意外と焦らされる。
いや、まどろっこしい会話や愛すら感じられる交流と駆け引きの段階から、彼の殺人は始まっていたのかも。
「彼は殺す」と分かっているからこその尋常じゃない緊張感。
しかしその間にどこか抜け感もあって、終始奇妙な空気が流れていた。
「焦らし」の段階も含め、人間の命を強制的に終わらせて回る彼にときめいてしまった。
計算高く、しかし場当たり的に、大胆に。
強迫性障害を顕著に表した一連の流れに一番ゾッとしたかもしれない。まだやるか、そこまでやるか、この窮地でもやるのかー!と言わずにいられない。
殺人の告白と彼の物語の先、ぐるりと回って繋がった先の唐突に抽象的な世界観には流石に翻弄された。
人の脚が敷き詰められたような壁や、ドロドロとした半液体がゆっくり蠢く壁、とにかく気持ち悪い要素がいくつもあってドキドキする。
聞こえてた水音の正体が結構汚くて笑った。
付かず離れずのヴァージと共にあの世の狭間を巡り巡っている過程かな。
メタファーや深い意味を読み解くのが苦手なのでそのまま受け取ってしまうけど…。
苦悶の表情の裸の人たちが船を支えるあの図はもうルーブル美術館に飾って欲しい。原画の隣にでも。
ジャックが今まで殺してきた人間に支えられているようだった。人を殺すからこそ生きて来られた。
最後に造った家が銃弾から彼を守ったように。
誰にも理解されない特別なジャック、人とは違うジャック、選ばれしジャック。
その語り口に恍惚と洗脳されそうになるけど、そのたびにヴァージのたしなめに引き戻される。
アルコール中毒や麻薬中毒と同じ、ただのサイコパスだ、と切り捨てられる。
建てては壊し建てては壊しを繰り返してきた、ジャックの家。
結局造り上げることが出来たのはただ一軒。
ジャックにしか造れないその一軒の、悲しいほどに簡易的なことよ。
設計も建築の知識もあったもんじゃない。
そのビジュアルと唯一無二の材料には大喝采だけど。最高です本当にありがとうこれが観たかった。
それでも結局はやっぱり、ただの殺人中毒者、ただのサイコパス、ただの人間。
運や天をも味方に付けてきた彼ならば、と思わせておいた先の呆気ない転落。
飄々としているように見えてプライドが高く、思い上がりも強かった彼への最後の裁きに思える。
ラストカット、彼がこだわってきた「写真のネガ」になるのがもう巧すぎてため息が出た。
強い光は強い闇となる。
一番暗い部分が焼き付いて離れない。
光に惹かれるように闇にも惹かれるじゃない、正直なところ。
泥臭く地道で鮮やかな殺人シーンの一つ一つに高揚した。
監督がどうとか作風がこうとか話のああだこうだは抜きにして、やっぱり一番分かりやすくて入り込めるのがそこなので。
ジャッキー修理の女性、どうしてああも高飛車な態度になれるのか。初っ端から「早く殺されておくれ〜!」と思ってしまった。薄情でごめんね。
ぱっくり割れたおでこが痛々しい。
太った奥様、人並みの警戒心は持ちつつお金にがめつい一面が命取り。
首を絞められてグェッグェッという音と口からコポコポ出てくる唾液が苦しい。
もはや人の形もしていないすりおろされた姿に合掌。あんなにいっぱいあったお肉が…痩せたね!
金髪の娼婦らしき若い女性、死の直前まで強い目で抵抗するも虚しく、流れ落ちる涙と共に命尽きるのが地味に恐怖だった。
謎の夜道散歩おばさんとペアにされちゃって可哀想に。
写真を新聞に送ったとのことだけど、時代が今だったらSNSに投稿したりするのかしら。
母と子供たちとの悲劇のピクニック、このシークエンスが一番好き。
急にジャックの見た目が変わるもんだから最初は戸惑った。関係性が謎。シングルマザーと恋仲になっていたのかな。
楽しいピクニックが完全に一転する様や、響く銃声が本当に恐怖だった。狩猟犬に倣った探し方も。
そしてやばすぎるお食事タイム。からの怒りん坊君の剥製風。いや悪趣味が過ぎる。好き。
シンプルことジャクリーンのシーンもとても良かった。
唯一ジャックが愛したらしい人。
二人のすれ違いから見せられるので前に何があったのか細かい機微は分からないけれども。
変人な恋人からじっくりと恐ろしく変貌していくさま、切られた電話線に戦慄。
まさかのおっぱい財布!まじか!
脂肪質の多い乳房はヌルついてベトついて切るのが難しいらしいので、欲を言えばそこに手間取る描写も欲しかった。
シンプルのカリカリとした咀嚼音が気に障った。
最後の一発連殺、観たかった…。
ジィジはひとまず置いといて一回引き金引くだけで良かったのに。
銃弾が違ってブチ切れるの分かる。
自分の計画通りにならないと急にパニックになるでしょう。
妙な映画だった。
カメラワークに酔い、劇場内の食物の匂いに酔い、目の前で繰り広げられるエゲツない心理戦と殺人に酔い、常に吐き気を催しながら命を削る感覚で観ていたけど、終わって外に出た瞬間に体調が回復した。
鑑賞中ジャックに何かされていたのかも?みたいな変なことを考えてしまった。
殺しの快楽もその恐怖も、人間のちっぽけな尊厳も、淡々としながら色々感じられた。
草原の呼吸が好き。
10人から2人!すごい退席率ですね…一人っきりにならなくてまだ良かったですね(* '-')
この映画の意図するもの、私も理解できていないです笑
映画を観ているうちに倫理観がバカになっていくのを楽しみ、人が人を殺す様とその行く末を楽しめたからもうそれで満足してます!
私はかなり軽率にときめいてますよ!笑
特に映画の中では!
よーやく、9月下旬、福岡県の地方都市で上映されたので観てきましたー☆
なんなぁーん!
この殺人狂映画はぁっ!
ただただガマンガマンを強いられ耐え続けた2時間余りでしたワ(*_*)
上映開始当初、10人ほどいた観客も、最後は2人だけになっちゃいましたヨ♪
KinAさん、ときめいたりもするんだぁー!素敵(素晴らし過ぎて適わない)ですっ☆
全く映画の意図するところは解りませんでしたが、“最後まで観賞した!”って、威張りたい気分でぇ~す☆
ふふふ、kinAさんと同じく、わたしもスクリーン退出したら、清々しい気分になりましたー(^^♪
いや本当そうなりますよね笑
なんなんだこれは!という感じでした。
まあ殺人中毒なんて「ただの」と切り捨てられるもんじゃないんですけど、描かれ方がそんな感じだったので、ああこの人も別に普通に生きてんだよなーと思ったので。(死んだけど)