「「エロさ」がキーワード」第三夫人と髪飾り La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
「エロさ」がキーワード
19世紀のベトナムの村を舞台に、14歳にして富豪のオヤジの第三夫人となった少女が見つめる毎日を描いた物語です。全く何の予備知識もなく、このポスターと予告編だけに惹かれて足を運んだのですが、始まって暫くして、
「この作品の監督って女性でないかな」
と感じました。僅かにハイキーな階調と、被写界深度を浅く取って背景を綺麗にぼかす映像が女性的に映ったのです。更に、エロい場面が非常に繊細で柔らかな点も特徴的でした。観終えてから調べると、やはりベトナムの女性監督でした。
そう、本作は「エロさ」がキーワードです。実際の性愛場面は殆どないにもかかわらず、ふとした女性の表情や指先の動き、更には森の深い緑や川面に映る山々まですべてが穏やかなエロさを湛えています。そして、その裏側には、「女は後継ぎの男を産む道具」程度にしか考えられていなかった当時の女性の涙が滲んでいるのです。それだけに、森や川は一層哀しく映り、東南アジアの温度や湿度までもが感じられました。人の心を抱き込んで輝く自然の美しさです。いやぁ、参った。
我々の知らない所にこんなに若くて凄い才能の監督がおられた事にまず驚きます。そして、この監督もやはりニューヨークに出て映画を学び、スパイク・リーに見出されて、本作でも彼の基金から助成を受けているのだとか。ベトナムに居たままだったら、この映画を撮る機会も得られなかったでしょう。日本の若い監督さん、冒険をしようとしない日本の映画界なんかに見切りを付けて世界に飛び出しましょう。
2019/12/5 鑑賞
コメントする